ソウルフル・ワールド(HD/Disney+)/Apple TVで観た映画のレビュー

ソウルフル・ワールド(HD/Disney+)

No Image 原題 SOUL
レーベル BUENA VISTA HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2020年
上演時間 101分
監督 ピート・ドクター
出演 ジェイミー・フォックス、ティナ・フェイ、グレアム・ノートン
画面 2.39:1/アナモルフィック
音声 2ch 英語、日本語
字幕 日本語、英語

あらすじ

ジョー・ガードナーは、子供の頃に目覚めたジャズへの愛が捨てられずにいたが、生計を立てるために中学の楽団の教師を臨時でしていた。その教育が認められ、正規の教員として採用されることになった。定職につかず、ジャズへの愛を失わなかったジョーに対して、教員の正式採用は母にとっても嬉しい出来事であった。そのジョーに対してジャズのライブの演奏を求められる。ジャズの大物、ドロシアのバンドのピアノ奏者が行方不明になったためである。ジョーの腕前を信用しないドロシアだったが、実際にジョーがピアノの腕前を見せると、ドロシアはジョーを採用する。その事実に舞い上がったジョーは街中を歩き回り、土管の中に落ちてしまい、魂が人間に乗り移る前の世界に迷い込んでしまう。その世界は、魂が様々な修練を行い、人間に乗り移るための世界であった。ジョーの魂は、その世界で元の自分に戻ろうと悪戦苦闘するが、現実のジョーは死ぬ寸前だった。魂の世界でジョーは22番と呼ばれる魂と出会う。22番はやりたいことが見つからず、人間になることを拒否していて、著名な人の魂が彼を教育しようとしてもうまくいかず、ずっと魂の世界に居続けていた。現実の世界に戻りたいジョーは、22番とともになんとか魂の世界を抜け出し、現実の世界に戻るが、ジョーの魂は猫に乗り移り、22番がジョーの肉体に乗り移ってしまう。ドロシアのライブまで時間のない中、ジョーと22番は現実の世界でトラブルに遭遇し、それを解決していくことで生きる実感を得ていく。

レビュー

名作を作り続けるCGアニメーション会社のPIXARが、新たに製作した人間の魂の世界を描いた秀作が、この「ソウルフル・ワールド」です。新型コロナウイルスの蔓延により北米での劇場公開の目処が立たず、2020年12月25日にDisney+で配信を開始した作品であります。「ムーラン(2020)」の時と違って、特別料金の必要もなく、月額の定期購読で鑑賞できる作品になっています。映画評論家からも、観客からも高い評価を得ていて、作品の内容の出来は素晴らしいものになっています。

作品のキーワードになっているのは、「ジャズ」と「人間の魂」、そして「生きること」になっていると思います。最初のキーワードである「ジャズ」は、映画全編をジャズで彩っていて、独特のノリを発揮しています。映画冒頭のディズニーのトレイラーの音楽からしてジャズ風のアレンジをしていて、作品の意図を明確にしています。「ジャズ」は人間の生きる意味を問うているのだと思います。

次のキーワードである「人間の魂」は、現実ではどうなっているのかわからないですが、この映画では魂の鍛錬場としての世界が登場し、そこで魂が様々な経験を積んで、いくつかのバッジを集めてそのバッジが地球マークになると、人間の世界に降りていき、人間になるという設定になっています。死に直面しているジョーの魂は、死後の世界に行く予定が、踏みとどまって魂の世界にいることになり、そこでやりたいことが見つからず人間になることを拒否している22番という魂と出逢います。やりたいことのあるジョーとやりたいことのない22番が出逢い、次第にお互いを理解し合うというのが、この映画の特徴ではないかと思います。

最後のキーワードは「生きること」ですが、これは映画全編を通じて問うているテーマだと思います。「生きていくってどういうことなのだろう?」という誰もが持つ疑問に対して、この映画はヒントを与えるものになっています。ジョーは母の忠告を聞かずにジャズにのめり込んでいますが、ジョーからジャズを取ったら何も残らない状態になっています。また、22番はやりたいことが見つからないために人間になることを拒否していますが、ジョーと現実の世界にきて、ジョーの肉体に乗り込んでしまったために、ジョーの肉体を通じて次第にやりたいことを学んでいきます。この二人の魂の出会う出来事自体が、「生きること」についての問いかけになっていると思います。

映像は全編CGで作られていますが、そのCGの出来の良さは特筆すべきものがあります。キャラクターはCGアニメではありますが、背景の風景は現実の世界の撮影かと思えるほどのクオリティを持っていて、リアリティがあります。その一方で魂の世界は、異空間であるという特徴を色合いやコントラストで再現していて、その対比が映画を理解するのを助けるものになっています。

映像はHD/SDRのはずなのですが、解像度は全く不満のないレベルになっています。IMDbによればマスターデータは4Kですので、4Kからダウンコンバートで2Kに落としてもその恩恵に預かっているのではないかと思われます。色合いもSDRとは思えないほどカラフルで、また、明暗の差もしっかり出ていて魅力的な映像を提供しています。音響は2chステレオに制限されていますが、VictorのEXOFIELD THEATERでのサラウンドヘッドフォンの鑑賞をすると、意外と音が充満している感覚が味わえます。音の移動感は流石に左右のヘッドフォンの位置から離れる事はありませんが、ジャズの音楽が鳴っているシーンなどは音の充満度が高く、ご機嫌なサウンドを堪能させてくれます。

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