佐野元春 & THE HOBO KING BAND TOUR 2006「星の下 路の上」
江戸川区総合文化センター
2006年1月14日
デビュー 25 周年を記念する 2005 年は大きなイベントもなく、唯一行われたクラブハウスライブ「THE LAZY DOG LIVE」もチケットを取れなかった身としては、実質今回のツアーが 25 周年記念のイベントであると同時にサポートバンドである THE HOBO KING BAND の結成 10 周年記念のイベントでもある。イベントとは書いたもののツアータイトルが 2005 年末に発表された 3 曲入り EP 「星の下 路の上」から取られているために単なるイベントにはならないだろうという期待もあった。だから今回の公演は非常に楽しみにしていた。インターネットが普及するにつれ情報もどんどん入ってきてしまいセットリストを事前に知ってしまうということも多々あったが、今回はそうした情報を一切シャットアウトしていた。ツアー 2 日目ということもあってそうした情報を目にすることもなく会場に足を運んだ。
今回の会場である江戸川区総合文化センターはやはり僕にとっては初めての場所である。自宅からはかなり遠い。ただ近年東京都内の地下鉄網が非常に充実してきているために乗り換え等の手間は最小限で済んだ。残念なのはしっかりとした雨が降っていたことだろう。特に会場に近づくにつれ風雨が強くなり、会場に一番近い新小岩駅からのバスは大混雑という有様だった。区民の為の文化施設ということでただホールがあるだけでなく、周囲には公園等も配置されている作りになっているようである。天気が良かったら周囲の散策も出来たのではないだろうか。
文化センター内に入るとスクリーンにスライドが映し出されていて、今回のライブの告知のようなものを流していた。なんだか暖かい雰囲気である。またセンターの職員の方々もとても親切である。東京都内と言っても下町の人情味みたいなものを感じてしまう。
普段だと席を確認してからコンサートパンフレットなどのグッズを買うのだが、今回はあえて 2005 年末に発売された旧譜のリマスター盤 CD を買ってしまった。1 週間前にたまたまミュージックギフトカードを持っていたのを思い出し当初買うつもりのなかった「Cafe Bohemia」と「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」を入手したら、そのアナログレコードの肌触りに驚いてしまったので追加で「BACK TO THE STREET」と「HEART BEAT」を購入したのである。パンフは後 1 – 2 回ライブに参加する予定なのでそのときでもいいと考えていた。
今回も席は良いとはいえなかった。3 階席のほぼ最後方である。但し 3 階席はかなりの斜面がついているためにステージ全体が見落とせるし、後で気付いたことだが心地のいいトーンの音が聴くことが聴けたので結果オーライかなという気はしている。
約 1,500 人収納のホールということもあってかほぼ満席に近い状態だったように思う。近くには幼い子供を連れたお父さんもいれば、元春とほぼ同年齢のようなご婦人も見受けられる。本当に不思議な感じである。
開演前の注意が入る。その中で「本日の公演は 1 部公演です。途中休憩はございませんのでご注意ください。」というアナウンスが入るので何だ ? と思った。(それはあとで分かるのだが。)
開演時間辺りから会場内の BGM が変り始める。最初に「夏のピースハウスにて」が流れ、続いて元春が担当していたラジオ番組「Radiofish」のオープニングナンバーが流れてくる。そして THE HOBO KING BAND のメンバーたちが定位置につき、古田たかしの激しいドラムの音から驚きの一曲目が始まった。
本編
- See Far Milesのテーマ
- まさかのオープニングナンバーがこの曲だった。ライブ CD 及びビデオにしか収録されていないインストゥルメンタルナンバーを持ってくるとは。アレンジはやはり THE HOBO KING ヴァージョンといった感じでかなりワイルド感が漂う雰囲気を漂わせていた。この曲の途中で元春がステージに上がってくる。
- アンジェリーナ
- 続いて最近のライブではすっかりアンコール曲になってしまった元春のデビュー曲を演奏。会場内も全照明点灯状態なのでいきなりアンコール状態に陥った感触を覚える。
- 僕は大人になった
- イントロが最近のアレンジと違うので何の曲だろうと思ったらこの曲だった。「See Far Miles Tour」のアレンジをベースにしているところがまたまた驚きである。確かこのあたりで若い女性二人のコーラス隊が入ってきたと思う。彼女たちの存在がかなりステージの印象を変えているようだ。(後で「TTシスターズ」という名称で紹介される)
- COMPLICATION SHAKEDOWN
- 続くこの曲も「See Far Miles Tour」のアレンジをベースにしたリアレンジ版で演奏された。なんだかとても不思議な感覚を覚えてくる。
- STRANGE DAYS
- 多分 THE HOBO KING BAND になってから始めてではないかと思われるこの曲を「Cafe Bohemia Meeting」のアレンジをよりポップにした感じでプレイする。歌詞の内容はかなりシリアスなのでそのギャップにタイトル通りの「奇妙な日々」を感じてしまう。
- HEART BEAT
- この曲も久しぶりに演奏されるが元のバラードから大幅にアレンジされて完全に陽気なレゲエになって歌われる。サビの部分のサウンドに心を奪われる。
- 99 BLUES
- この曲は前回の「THE SUN TOUR」のときとほぼ同じアレンジでの演奏。
- INDIVISUALISTS
- この曲も「THE SUN TOUR」とほぼ同じアレンジで演奏される。とは言ってもその会場の空気にあわせて細かいアレンジは施されているのでじっくり聴くと違いは色々見えてくる。
- ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
- この曲も久しぶりに聴いた気がするが、長めの演奏だったのでオリジナルとは雰囲気は異なっている。割とオリジナルに忠実なアレンジだったと思う。
- Rock & Roll Night
- ここからはしばらくアコースティックコーナーに突入。元春のギター弾き語りから始まるこの曲はオリジナルのロックオーケストラ版よりもむしろ今の時代にマッチしているように感じられる。
- バルセロナの夜
- ライブでははじめて聴いた曲だけれどもアレンジは「THE LAZY DOG LIVE」と似ているのでクラブハウスライブに来られなかった人たちへのサービスかなと思ったりする。
- Do What You Like
- この曲はしばしば演奏されるけれどアレンジはやはり「THE LAZY DOG LIVE」の影響があるのかなと思ったりする。個人的にはあまり好きではない曲だが今回は素直に聞き入っていた。
- 最後の1ピース
- 「THE SUN」からの曲に突入。この曲は大きなアレンジはなかったが、かなりご機嫌。ただこのあたりで会場内が座って聴く人と立って聴く人に二分してしまっていたのは興味深い。
- 観覧車の夜
- 最近「THE SUN TOUR」のライブ音源を聴いてすっかりお気に入りになっている曲。イントロの部分とかにアレンジが目立つ。
- 君の魂 大事な魂
- 曲のクライマックスで元春が腕を大きく振ると観客もそれに合わせる。それが座っている人も立っている人もいるのでそれぞれの楽しみ方があるのだなと実感される曲だった。大きなアレンジはなし。
- Wild Hearts
- この曲も久しぶりでかつ割と「Cafe Bohemia Meeting」アレンジに近い演奏を行っていた。3 番の「ラジオに流れるリズム & ブルース」の後にしっかり THE HOBO KING 版のお遊びが入ってくるところはご機嫌である。
- ブルーの見解
- 最近では「In Motion 2001」でスポークン・ワーズとして歌われていたが、今回は「ナポレオンフィッシュツアー」アレンジをベースにした曲調でとても意外。でも実は密かにお気に入りだったりする。
- 悲しきRADIO
- この曲が来るとそろそろ本編ラストかなと思ってしまうのだが、実はまだまだ続く。この曲の 3 番で観客に「♪ムード盛り上げれば」と歌わせるパートがあるが今回は一発 OK。曲もメドレーに行かずにそのまま終わってしまう。
- So Young
- この曲も普段のライブだとアンコールで演奏されることが多いのだが、本編で演奏してしまうので驚いてしまう。この辺りから頭の中は真っ白けになってくる。音の陶酔に浸っている感じ。
- レインボー・イン・マイ・ソウル
- 曲を歌い始める前に元春が「希望についての歌を歌いたい。」というので「希望」か「SOMEDAY」だと思ったら大外れ。でも改めて曲のよさに感動している自分がいる。
- Youngbloods
- 僕の生涯フェイバリットナンバーまで演奏されてしまうので嬉しくなってしまう。アレンジがまたオリジナルの 7 インチシングル版に近いのが印象的。
- 約束の橋
- イントロが相当変っているので最初何の曲か分からずに元春が歌い始めてようやく分かるという具合。「この曲も演るか ! 」と思った。
- SOMEDAY
- この曲まで本編で演奏してしまうので、思わず「アンコールどうするの ? 」と気になりだした。この曲で本編終了だろうと思ったらまだラストにもう一曲あった。
- NEW AGE
- この曲の演奏回数も多いが、元アレンジが「See Far Miles Tour」版なのでまた驚く。しかも本編ラスト。何というセットリストだと驚いてしまう。ここまででもう 2 時間半近く経過している。ところでツアータイトルの「星の下 路の上」を演奏していないな。アンコールで演奏するのかな、と思っていたが…。
アンコール
- 国のための準備
- この曲がアンコールで来るとは…。「THE SUN」の中でもっとも社会に対して意義申し立てをしている曲で、アレンジは変っていないものの、なんと歌詞の一部を変えてきた。正確には覚えていないが「いつまで国の言いなりになっているのか。」といったような内容だったように思う。
- メドレー
- この曲はツアーによって曲名が変ったり何かの曲の後に続けて演奏されることが多いから今回はメドレーとしておく。この曲がきたら大団円である。でもしっかりとメンバー紹介を行い、かつて THE HEARTLAND 時代に行っていた「そして最後に…」を再現していたのはご愛嬌といったところか。ちなみに最後のメンバー紹介は Dr.Kyon だった。
ものすごいボリュームのあるセットリストで大変楽しめる内容だったと思うが、90 年代の曲がほとんど演奏されていない点と、せっかく EP「星の下 路の上」をリリースしているのにその中の曲を演奏してくれなかったのはちょっと残念。80 年代と「THE SUN」に偏っていたのはリストから想像すると、かつて元春が「社会と個」のあり方を問いていた曲たちの内容が今の時代とマッチングしてしまったからではないかという想像はしているのだが。ツアータイトル曲はファイナルの東京国際フォーラムで特別に演奏するかなという気はしている。ゲストを呼んで。
コンサート終了後に知り合いと顔を合わせる機会があったので軽食を取りつつ談話をしていたが、知り合いも大満足のようだった。でもその知り合いも一言突っ込み。「ツアータイトル曲演っていない。」 やっぱり聴きたいんだよね、というところである。
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