佐野元春「月夜を往け」ビデオクリップ撮影
2004年5月9日
僕は佐野元春のファンである。高校生のときからだからもう 20 年近くになるだろうか。いつも彼の歌に励まされてきたし、彼の生き方や考え方にものすごく影響を受けてきた。いってみれば僕にとっての人生の先生だった。そんな彼が今年久々に動き出した。ライブ CD のリリース、TV-CM への出演。この 5 月には待望の新曲がリリースされる。「月夜を往け」という曲だ。決してキャッチーではないがじわじわと心に染み込んでいく佳曲だと思う。夏には 5 年ぶりニューアルバムの発売も予定されている。
この新曲の発売を控えたゴールデンウィークの最中、ファンクラブから新曲のビデオクリップの撮影に参加しませんか、という案内が来た。抽選とのことだったので駄目元で応募したところ、運良く当選し、撮影現場に赴くこととなった。
撮影場所は東京・浜松町にある「ロックスタジオ」だった。集合時間の 10 時少し前に現地に到着。ビルの外観は倉庫といった感じなので間違った場所に来てしまったような感覚を覚えるが地図で見る限り間違いはないようだ。ビルに入りエレベーターで 4 階へ。エレベーターも倉庫にふさわしく大型のサイズで年期が入っている。荷物の運搬にも十分使える。
エレベーターを降りた目の前がスタジオの入り口だった。係りの人の案内に従って中に入る。入ってすぐの部屋が控室になっていてすでに何名かの方々が来られていた。部屋のサイズは 12 畳程度だろうか。この隣がスタジオのようだ。
控室で出欠の確認のために身分証明を求められファンクラブ会員証を提示。めったに使うことのない会員証だが珍しく役にたった。続いて、承諾書にサインを求められる。内容は、いわゆる肖像権についてのことで、自分の姿が映像と使われることに同意する、ということ、また、撮影はされても使われないこともある、ということについてだった。サインをしなければ先へは進めないのでサインを済ませる。
控え室では、前日オンエアされた彼のラジオプログラム「RadioFish」が流れていた。この時間に集まった方々はどうも男性一人で応募された方々の集まりのようだ。案内には、いろいろ時間帯があり、ご夫婦で参加される場合や、友人たちで参加される場合の募集もあった。全部で 55 組の募集ということだから、それなりの人数である。沈黙の中しばらく待機をしていると、次第に男女二名(あるいはご夫婦か)のグループが集合し始めた。
そのうちに係りの方からスタジオのほうに案内された。スタジオは 1 辺が 15 m – 20 mぐらいの広いスペースで、その一部に照明だとか、仕切りなどが置かれていた。どうもそこが撮影場所らしい。その反対側に簡易型のイスが置かれていて、そちらに座るように指示される。そしてまたしばらく待機した。
15 分ぐらい待機しただろうか。係りの方から再び控え室に戻るように案内された。ここで今回の撮影についての説明があった。今回の撮影は写真撮影であること、元春のこの曲に対するイメージは、「僕等の世代に対する応援歌である」ということ、彼が歌っているシーンのバックに撮影された写真が流れるということ、彼の撮影は前日に行っていたこと、といったことが説明された。その後写真撮影はグループになって撮影するということで集合したメンバー 8 人が 3 人、3 人、2 人と分けられ、撮影の順番も割り振られた。僕は 2 人グループの中に入り、8 番目の撮影と指定された。本来既に撮影を開始していなければないないはずだが、どうもスタッフの準備などのせいかかなり押しているらしい。11 時過ぎまで一旦フリー時間となってしまった。
40 分近くフリー時間が出来てしまったため、外に出ようかとも思ったが、僕のいるグループの方々がぽつぽつと元春の話題をし始めたので、一緒に参加させてもらった。ぎこちない会話だったが、同じ元春のファンということで安心して会話させていただいた。
11 時近くになり、再びスタジオのほうに案内された。スタジオに入るとようやく最初の方の撮影が始まったところだった。1 グループの撮影に 7 – 10 分ぐらいを見込んでいる、とのことだったので、まだ 1 時間近く待つことになる。どうも最初の組は男女二人組(あるいは夫婦)のグループのようだ。待っている間、僕と一緒に撮影することになる方と会話をした。彼は、僕よりもファン暦が長く、元春の誕生日にスペインのバルセロナに行ったという経歴を持っていた。これは元春の初期の曲である「バルセロナの夜」にちなんだ行為である。僕も 2 年前にニューヨークに行ったとき、「COME SHINING」という曲に触発されてサリバン・ストリートを歩いてみたことがある。やはりファンというものは似たようなことをするものらしい。
写真撮影を見ていると結構時間がかかっているようだ。相当数、シャッターの切れる音とフラッシュの瞬きを感じた。やはりベストショットを取るために何枚も撮っているのだろうか。カメラマンの方はとてもラフな印象で陽気に撮影をこなしていた。
僕らと撮影場所の間には、テーブルが置かれていて、そこにはノート PC が鎮座していた。スタッフの方(今回の撮影の責任者らしい)がその PC を操作しているのが見える。どうも撮影した写真をチェックしているらしい。ということは写真撮影はフィルムではなくデジタルカメラということなのだろうか。
スタジオ内では、元春の新曲「月夜を往け」とそのカップリング曲「99ブルース」が繰り返し流れていた。放送局向けのサンプル版の CD をかけているらしい。やはり聞けば聞くほどいい曲だな、と思ってしまう。
40 分近く経ち、ようやく僕らのグループの最初の 3 人組の撮影が始まった。ちょっとだけ撮影現場をのぞかせてもらう。白い壁を背景にし、衝立が両サイドに置かれている。その衝立の後ろ側にいくつもの照明が置かれ、衝立側に向かって光を照らしている。つまり衝立である程度の光を吸収し、柔らかなイメージを作り出しているようである。現場を覗いたあとは、また自分の出番が来るのを待った。
ようやく僕らの出番がやってきた。撮影場所に向かう。カメラマンから立ち位置を指定され、撮影が始まった。そして何で一回の撮影に 10 分近くかかるかがようやく理解できた。とにかくカメラマンからいい顔を作るよういろいろ指示が来るのである。指示といっても自然な笑顔がほしいらしく、カメラマンはくだらないギャグなどを飛ばし、こちらを笑わせたり、逆に作った笑顔をそのまま維持したり…。写真撮影というと旅行とかでの写真撮影を除いては免許証などの証明書作成のためぐらいしかこういう撮影はしたことないので、予想以上に苦労してしまった。しかしそれでも非常に楽しみながらいい顔を作ろうとした。 10 分近くの時間をかけて、撮影は終了。ベストショットをカメラマンから見せてもらった。撮影に使用していたのはやはりデジタルカメラだったので、すぐにモニターで確認することが出来た。なかなかいい具合に写っていた。
撮影が終了しスタジオを出ると、先に撮影が終了したメンバーがエレベーター前にいた。どうもファンクラブスタッフのインタビューを受けていたらしい。そのメンバーとスタジオをあとにした。
スタジオを出ると「せっかくなのでメールアドレスぐらい交換しましょうよ」という話がどこからともなく出てきた。僕もせっかくの機会だし、と思い都合の悪い方を除いた 5 名の方々とそのまま喫茶店になだれ込み、コーヒーを飲みながらいろいろ歓談をした。撮影を経たことで顔合わせのときより打ち解けた雰囲気だった。みんなでいろいろ元春についての話を交わす。普段自分の周囲に元春のファンがいなくてさびしい思いをしていたので、大変楽しいひとときを過ごさせてもらった。
彼らと別れ際、お互いこのビデオクリップを確認しよう、ということになった。僕はスカイパーフェク TV に加入しているので、しばらく音楽チャンネルをチェックすることになりそうである。
追記 – 2004年6月20日
結局撮影から1ヶ月以上も経った 6 月 19 日にようやくスカイパーフェク TV にてこのビデオクリップを見ることができた。(どうもシングルの発売には全く間に合わなかったらしい。) 僕も映っていたが、元春の頭の影になっていて、ほとんどまともに顔が見えていなかった…。それでも一瞬だけでも自分の顔が画面に映ったとき、何だかとても嬉しかった。
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