MYSTIC RIVER
邦題 | ミスティック・リバー | |
レーベル | WARNER HOME VIDEO | |
制作年度 | 2003年 | |
上演時間 | 138分 | |
監督 | クリント・イーストウッド | |
出演 | ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコン | |
画面 | 2.40:1/アナモルフィック | |
音声 | DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語、フランス語 | |
字幕 | 英語、フランス語、スペイン語 |
あらすじ
ジミー、ショーン、デイヴの 3 人は子供時代は友人だったが、ある事件をきっかけに疎遠になっていた。それぞれが家庭を持ち、日常の生活を送るある日、デイヴが血まみれで自宅に帰宅し妻のセレステを驚かせてしまう。それと前後してジミーの大切な娘が殺害されたことが発覚し、ジミーは半狂乱に陥っていく。刑事になっていたショーンは図らずもかつての友人と殺人事件の被害者、容疑者として調査を進めていくことになるが、彼らがそれぞれに心闇を抱えていることが明らかになっていく…。
レビュー
2003 年度のアカデミー章でショーン・ペンが最優秀主演男優賞を、ティム・ロビンスが最優秀助演男優賞を受賞したミステリーであると同時に人の心の闇を描いた秀作です。
物語の冒頭は主人公 3 人の少年時代が描かれます。しかし冒頭の画面の雰囲気から決して楽しい思い出にならないことが印象付けられます。その予想通り、デイヴは警察を名乗る男たちに連れられて性的暴行を受けてしまいます。これをきっかけに 3 人の友情関係は事実上終わりを告げている印象を与えます。
何年かの時を経てジミーの娘が殺害されたことをきっかけにして再び彼らの人生は交錯し始めます。デイヴは少年自体に受けた心の傷を克服できず、それを必死で隠そうとしながら一般の生活を送ろうとしています。彼の表情からそのことを印象付けられます。そして、何があったのかはクライマックスまで明らかになりませんが、彼が血まみれになって深夜帰宅した頃からその表情は更に暗くなっていきます。また、ジミーは娘が殺されたことで正常な判断が出来なくなって行きます。それどころか彼の過去が次第に明らかになって行きます。彼が決して善良な人ではないことに。唯一まともなのは刑事のショーンだけなのですが、彼とて妻とうまく行っていない様子が伺えます。
かつて友人関係にあった 3 人は再び合間見えますが、その関係はもはや以前のそれとは全く違い、表層的な付き合いに終始してしまいます。もし彼らがそこで踏みとどまれれば物語は悲劇へと向かって進むことはなかったのでしょうが、一度壊れた友情関係はもう 2 度と回復することはありませんでした。
最初は善良な市民に見えたジミーですが、彼の家庭環境や過去に犯した殺人を含む犯罪、それに伴って受けた苦しみが実は彼の闇の部分を作り出していて、もはや人間であることを半分忘れていたのかもしれません。それが娘の死によって強く出てきているように思います。そしてある種の偏見がかつての友人であったデイヴを自分の娘を殺した犯人と決め付け、殺害する要因となってしまったようにも思えます。その死刑が誤りだったことに気付き一度は過ちを認めたような雰囲気を漂わせていますが、ラストシーンで光の中に立つ彼の姿を見ていると、サングラスをかけているとはいえどこまで自分の犯した罪を受け入れているのか分からないところがあります。
デイヴは事件の起こる前から過去の虐待が時折フラッシュバックしてきている描写があることからも心の傷が癒されることはなかったのだろうと思います。そしてある晩の血まみれの帰宅の後、更にその心の傷は深くなります。途中妻のセレステがデイヴがジミーの娘の殺害犯なのではないかと疑いを持ちますが、それも更に彼を追い詰める要因となっています。実際は彼は殺人を犯しました。但し彼は自分に虐待を行なった人物を殺害しただけです。復讐心によるものだと言ってもいいと思います。しかし彼の心の傷はそれでも癒えなかったのです。ラストでジミーに殺害されるとき、彼は「まだ死を受け入れる準備が出来ていない…。」という台詞をしゃべりますが、彼が生涯に亘って苦しんだ心の傷から開放されたのだろうか、そういったことを考えさせられてしまいます。デイヴを演じたティム・ロビンスの演技が光ります。
ショーンは刑事として二人を被害者の親、容疑者として対応していくのですが、他二人よりは多少友情関係を持って対応しているように見えます。そして彼はどうもジミーのデイヴ殺害を直感で分かっているような節を見せながらも追求をしていません。彼だけラストで妻との関係を回復して幸せな家庭生活に戻りそうな雰囲気を漂わせています。
タイトルの「ミスティック・リバー」という言葉は映像的にはジミーの犯した殺人の遺体を隠しておく場所というように取れますが、もう一つの意味で言えは人の持つ心の闇の事を指しているように思います。デイヴはその闇ははっきりしていてそれに苦しみます。ジミーはある程度はっきりしているのですが、それを正当化しようとしているようです。ショーンはあまりないように取れます。
映像はなかなか光と影の使い方がうまい作品だと思います。登場人物の少年時代は白が強く一見無垢の象徴のように見えますが雰囲気は無垢が失われている前兆としての白の強さになっているような気がします。現代シーンになりますと、登場人物の心の闇を表現するかのように多くのシーンは人物に影を掛けてストーリーを進行させて行きます。時にそれが強く出るため背景の色が白とびを起こしているくらいです。音響については実に自然なサラウンドを聴かせてくれて広大なフィールドを作り出しています。また、クリント・イーストウッド自身が手がけたサウンドトラックが実に癒しの雰囲気を持ったサウンドですので、重苦しいはずのストーリーが優しさを持っているかのようにも思えます。
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