SAW/ソウ/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

SAW

SAW DVDジャケット 邦題 ソウ
レーベル LIONS GATE HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2004年
上演時間 103分
監督 ジェームズ・ワン
出演 ケイリー・エルウェス、ダニー・クローバー、モニカ・ポッター
画面 1.85:1/アナモルフィック
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch-EX 英語 / DTS-ES 6.1ch 英語
DOLBY DIGITAL 2.0ch 英語
字幕 英語、スペイン語

あらすじ

 どこもと知れない地下室で目を覚ましたアダム。自分の足には足輪が掛けられていて身動きが取れない。部屋の隅にはもう一人、同じような状態でいる男がいた。彼はドクター・ゴードン。互いの間には頭から大量の血を流して死んでいる男がいた。いったいこの2人の間に何が起こったのか。しばらく身の回りをチェックしているうちに彼らはミニカセットテープを見つける。アダム向けに当てられたテープには「お前は日の光を見ることもなく死ぬ。」と、ドクター・ゴードンには「アダムを6時までに殺せ、そして自分も死んだ男が持っている銃で死ね、さもないと大切な家族を殺す。」と。全くの密室状態の中、2人は互いに疑心暗鬼になったり協力したりしながら打開策を見つけ出そうとするのだが、彼らを監禁した人物のほうが一枚上手だった…。

レビュー

 低予算で制作されながらも予想外の大ヒットを記録し、そのまま続編が作り続けられているサイコサスペンス作がこの「ソウ」です。

 「ソウ」の魅力はというと実は物語後半の意外などんでん返しにあるかと思います。そのどんでん返し振りがかなり凝っているので結果的にいい意味で「騙された。」と楽しめる作品にはなっています。しかし、残念なことにそのどんでん返しに至る過程の描き方が実はあまり十分ではないといえるかと思います。また、カメラの視点もあちらこちらに飛んでしまっているところも後半へのつなぎが今ひとつだな、と言う所に落ち着いてしまうかと思います。

 例えば映画の冒頭で登場人物が液体に顔を沈められて気を失い、意識が目覚めたら閉鎖的な地下室に閉じ込められていたというシーンがあります。この登場人物はアダムですので、アダムを中心に話が進むのかと思いきや、実は始まってすぐに彼より先に目覚めていたゴードンを中心に話を進めてしまいます。ある種のミスディレクションを狙ったとも思えなくもないですが、ちょっと雑すぎるかなと思います。

 こういうミスディレクションや狙ったようで何か外しているようなシーンはその他にも色々あります。密室空間での話に終始したほうが緊迫感とか高まると思うのですが、ちゃんとゴードンの過去の話を丁寧に、でも大して感情移入できるレベルではないところで描いてしまっているので、外の開放感とあいまってどことなく緊迫感が低く感じられるのです。また、主人公たちを監禁した「ジグソー・キラー」の犯した犯罪のシーンを MTV 以上に凝ったカット割りで表現してしまっているのも生理的なリズムを狂わせてしまいます。さらにダニー・グローバー演じるタップ捜査官の存在も意外と中途半端です。むしろ彼がホラー映画の何度殺されてもよみがえる殺人鬼かと思ってしまったぐらいです。

 ただし、中盤から少しずつ、その外していたり狂わせていたリズムを強引にですがちゃんと整合性を合わせ始めるようにしていきます。カメラの視点が密室の世界、ゴードンの家庭、そして主人公たちを監禁・観察しているものに視点が集約されてくるのと、「ジグソー・キラー」の予定通りに物事が進まなかった後からがものすごい展開で観客を引き込んでいきます。二転、三転する真犯人の存在、追い詰められた主人公たちの取った究極の行動とその結末など、前半のテンポの悪さをすべて吹き飛ばしてしまっています。

 そういう意味では前半のテンポの悪さや、演出の雑さを消化できれば、もっといい出来になりえたのではないかな、とすら思えます。きらっと光る部分があるためにこの状態でも十分に楽しめる作品かと思いますけれど。

 後、この作品はサイコサスペンスということもあってかなりえげつないシーンが多いです。それでもクライマックスの主人公の取ったえぐいシーンを写さなかったのは観客に想像力でその不気味感を感じさせようとしていて、それは大成功しているといえるかと思います。

 画質は大変クリアです。地下の密室のシーンは冷たい青白い色、「ジグソー・キラー」の過去に犯した犯罪の再現シーンは極端な緑、密室以外の緊迫したシーンでは多少意図して暗い緑のトーンと、ゴードンが警察の取調べを受けるシーンでは普通の色、となかなか面白い使い分けをしているなと感じます。音響は劇場用の音響よりグレードアップしているようで6.1chとなっています。これもかなり意図した音作りをしていまして、他の作品と比較してもかなりの場面で、観客の頭上や後方から音が鳴るように仕掛けてあります。一種のホラー映画的サウンドデザインなのではないかな、と思います。

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