SECRET WINDOW/シークレット ウインドウ/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

SECRET WINDOW

SECRET WINDOW DVDジャケット 邦題 シークレット ウインドウ
レーベル COLUMBIA TRISTAR HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2004年
上演時間 96分
監督 デヴィッド・コープ
出演 ジョニー・デップ、ジョン・タトゥーロ
画面 2.40:1/アナモルフィック
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語、フランス語
字幕 英語、フランス語

あらすじ

 小説家のレイニーはあるとき、シューターと名乗る男から「あなたの作品は私の作品の盗作である。」と突然問い詰められる。しかし彼にはそんな事実もなくシューターを追い返してしまうのだが、シューターはその後も度々レイニーの前に現れるようになり、「自分の作品が私の作品の盗作でないというのならそれを証明してみろ。」とまで言われるようになる。レイニーは探偵をやとってシューターが何者か探ろうとすると同時に自分の作品がオリジナルである証拠を集めようとするのだが、次々と怪事件が起こりその証拠資料が消され、更に探偵をも含む数名が殺される事態になってくる。またレイニーは半年前に妻と離婚をしたのだが、この事件をきっかけに元妻とその新しいパートナーとの間の関係が更におかしくなっていく。次第にレイニーは精神的に追い詰められるようになっていく…。

レビュー

 多分今でもそうだと思いますが「モダンホラー小説」の鬼才、スティーヴン・キングの中編小説集 “Four Past Midnight” の中の一編 “SECRET WINDOW, SECRET GARDEN” を映画化したのが今作です。元々スティーヴン・キングという作家は長編が得意な作家ですので、この “SECRET WINDOW, SECRET GARDEN” も中篇とはいえ、日本的感覚で言ったら長編に入る部類の分量です。それが今回の映像化に幸いしているような印象を受けました。

 長編小説を映像化する場合、どこかでエピソードを切ったり、登場人物をまとめたりする必要が出てきますが、キングの場合は登場人物の生活背景をものすごく書き込むため、大抵の映画はそこをまとめきれずに失敗します。今作では原作が中篇ということもあってか、うまくまとまっていたかな、という気がします。10 年以上前に原作を読んだきりですのですっかり内容を忘れておりましたが、印象としてはそんな感じを受けます。

 今作はキング作品として度々言及される作家というものが大きなテーマになっています。ホラー作品なのになんで作家がテーマかというと、作家というものの創造性が時に一般人の想像をはるかに超えるものになるからです。

 冒頭の場面はレイニーが妻とその不倫相手のいるモーテルに殴り込みをかけるシーンで始まりその結末は描かれません。何が起きたのか分からないまま、「半年後」という字幕とともに一人暮らしをしながら創作活動を行なっているレイニーが映し出されます。但し創作は行き詰っています。

 そんなところに表れたのが「シューター」と名乗る男です。カタカナで書くと理解しづらいですが、原語では “SHOOTER” です。「射殺」というような意味合いもある名前です。映画後半ではむしろその意味合いが真実になってきているようです。その彼が「お前の作品は私の書いた小説の盗作だ。」と言いがかりをつける所から話は次第に不気味な様相を呈してきます。

 最初は警告だけだったのに次第にレイニーの飼い犬は殺され、盗作でないことを証明しようとするとことごとく邪魔が入りレイニーのオリジナルを証明するものがどんどん失われていきます。更にはシューターの存在を調査しようと依頼した探偵やシューターを見たはずの老人まで殺されるに至り、いったい何が本当のことなのか、主人公と同じ立場に観客は立たされます。

 しかし感のいい観客なら物語の最初の方でシューターが吸っていたタバコの銘柄がレイニーのものと同じことに気付くかもしれません。そして「ネタバレか」と思ってしまった人もいるのではないかと思います。

 クライマックスは予想通り、シューターはレイニーの生み出した創造上の人物でしかないことが明らかになります。そして、シューターと同一になったレイニーは元妻と不倫相手だった彼を殺して物語を終えます。

 ここで作家の創造性の事に言及いたしますと、まず冒頭のモーテル殴りこみのシーンが大きな意味を持っています。映画後半で正常さを失ったレイニーが見るのはモーテルに殴りこんだ後拳銃を構えているシーンです。多分本心では妻と不倫相手を殺そうと思っていたのだと思います。しかし、銃弾が込められていなかったという理由から殺すことが出来ませんでした。結果妻と離婚することになるのですが、レイニーはその辺りから作家であるがために二人に対して復讐を果たそうという創造を段々膨らませていたのではないかと思われます。人間誰でも復讐の感情はありますが、作家であるがために大きく膨らませてしまったのがシューターという架空の人物を生み出す結果となってしまったのだと思います。そしてその辺りからレイニーは二重人格化して行っていたのではないかと思われます。普段の作家としてのレイニーとシューターという不気味な存在をまとった存在として。ですから飼い犬を始めにした一連の殺人はレイニーなのですが、本人はその意識がないのです。そしてそれは元妻と不倫相手に対する復讐を果たそうとする彼の想像の産物です。だからかつて二人が暮らした家をも燃やしてしまうという暴挙にも出てしまうわけです。

 前述した “SHOOTER” という意味もつまりは二人に対する復讐心、そしてその方法論は殺人です。そういう意味合いがレイニーのもう一つの側面として表れています。

 もう一つの創造性について言及しますと、ラストシーンで映し出される映像です。タイトルにある「秘密の窓」をカメラが通り抜けていきますとトウモロコシ畑が見えてその地下を映し出したところでレイニーがトウモロコシを食べるシーンになり、そこで物語が終わります。当然観客は創造します。その地下に何が埋まっているのかを。DVD の映像特典でははっきり映ってしまっているので不気味さが半減してしまっていますが、これもレイニーの作家としての物語を完結させるための作業だと考えたら、不気味です。ただ人殺しをしただけでは気がすまないのですから。

 タイトルの「シークレット ウインドウ」、つまり「秘密の窓」という言葉も意味深です。人は誰でも秘密の窓を持っている、それがこの作品の場合レイニーの創造性とそれに伴う一連の行為につながっているというようにも取れます。秘密の窓いうと分かりづらいですが、心の闇といったら分かりやすいかもしれません。もちろんこの作品に関係ないことでしたら人に隠しておきたい心のあり方ととってもいいと思います。

 画質は最初薄暗い場面が多いので「ホラー映画お得意のパターンかな。」と思っておりましたら、後半は割とカラフルなシーンが多くなったりして少し定席を外してきた感があります。それにより映画としてのワンパターン化を逃れている感はあるかと思います。音響は自然なサウンドフィールドを形成しておりますが、特筆したいのが、時計の「カチカチ」という音や電話のベルの音、水滴の落ちる音など一定のリズムを持った音を効果的に使っている点です。これはステレオだとか、5.1ch だとかは関係ないです。この単調なリズムの音が要所要所で使われることにより作品を観ている観客の不安感を高めているように思います。

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