SOLARIS
邦題 | 惑星ソラリス | |
レーベル | THE CRITERION COLLECTION | |
制作年度 | 1972年 | |
上演時間 | 166分 | |
監督 | アンドレイ・タルコフスキー | |
出演 | ナターリャ・ボンダーチュク、ドナタス・バニオニス | |
画面 | 2.35:1/アナモルフィック | |
音声 | DOLBY DIGITAL 1.0ch ロシア語 | |
字幕 | 英語 |
あらすじ
心理学者のクリス・ケルビンは、惑星ソラリスへの調査に赴いた。そこでは、宇宙飛行士たちが幻覚としか言い様のない現象に襲われていた。惑星ソラリスは海と雲しかない惑星で、クリスは惑星ソラリス上に浮かぶ宇宙ステーションに到着する。そこで彼は、10 年前に死んだはずの妻、ハリを目のあたりにする。何故死んだはずの彼女がいるのか。海と雲しかない惑星ソラリスとは何なのか。クリスは次第に混乱に見舞われていく。
レビュー
哲学系 SF として名高い「惑星ソラリス」を今回ロシア語 + 英語字幕というかなり変則的な状況で鑑賞いたしましたので、ストーリーの把握が少々難しかったのですが、やはり観ていて「久しぶりに本格派 SF を観たな。」というのが第一印象です。特に最近この手のまじめな SF 映画が製作されない状況下では長時間の上映時間にもかかわらず物語に引き込まれるものがあります。
物語最初、映像は水のシーンから始まります。この映画は水がある種のイメージとなっているようで、物語中盤惑星ソラリスに舞台が移るとしばしば惑星ソラリスの海がシーンとして登場してきます。水が何のイメージを現しているのかは、明確には分かりませんが、何か生命を暗示しているのかな、という気がしないでもありません。
主人公のクリスが惑星ソラリスに浮かぶ宇宙ステーションに到着すると、最初は少女の幻覚が現れます。これをきっかけにして、ついにはクリスの妻であり、すでにこの世を去っているはずのハリが彼の前に姿を現します。ハリは最初人間らしくない行動をするのですが、クリスと一緒にいるうちに次第に人間らしくなってきます。
クリスはハリをロケットに乗せて宇宙に放ってしまいますが、再びクリスの前にハリは姿を現します。そして次にはハリは自ら自殺を図ります。このハリというクリスの元妻はまるでクリスの心が生み出した実態を持った幻覚であるように思えます。実際のハリも自殺をしていたのですから。
最初はハリに対してある種の距離を置いていたクリスも次第に彼女なしでは生きていけなくなります。人間は、過去の幻想にすがることで生きていける、とでも言っているかのようです。
また、物語は途中カットバックでクリスの少年時代を描いているようです。そのことから考えても、惑星ソラリスというのは、そこに近づく人間の心の奥底に潜む過去を現象として実体化させている、まるで生命体であるかのような惑星ではないかとも取れます。
特にそう感じたのは、物語ラストで、主人公が地球に帰った、と思ったら実は惑星ソラリス上にできた幻想の土地だったというシーンです。そういった意味で最初に書いた水のイメージが生命をイメージしているというのとつながっている気がします。
人が人を愛するということ、過去を懐かしむということ、生きるということ、そういったことを何となく考えさせられる作品だと思います。
映像のクオリティですが、30 年以上前の作品とは思えないくらい美しい映像を見せてくれます。この「CRITERION COLLECTION」というレーベルはレーザーディスク時代からその映像美には定評のあるレーベルで、特に過去の作品のレストアには定評がありますが、今回も期待を裏切らない出来です。もちろん最近の作品に共通するまるでビデオ映像のような映像ではなく、いかにもフィルムといった映像ですのでより映画を観ている気分にさせてくれます。サウンドはさすがにオリジナルのモノラルサウンドですのでサラウンドで楽しむというわけには行きませんが、効果音中心の音響は印象深いものがあります。あまりサウンドトラックが鳴っていないのも物語を静かに描いている効果を出しています。
映像といえば、最近のシーンがどんどん変わっていくタイプの作品ではなく、ワンシーン、ワンシーン、じっくりと見せてくれますのでゆったりとした感じを受けます。最近ではこういう作品を観る事も出来ないでしょう。ハリウッドの映画では MTV 出身の映画監督によるカット割の早い演出しか流行らなくなっていますから。
余談ですが、物語前半で、未来の地球の年の演出で 1970 年代前半の東京の風景を見ることができます。ただし、シーンによってモノクロにしたり、トンネルのシーンが多いこともあって、あまりレトロなイメージを感じなかったのも事実です。この辺は一見の価値ありかなと思います。
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