THE BOURNE SUPREMACY
邦題 | ボーン・スプレマシー | |
レーベル | UNIVERSAL STUDIOS HOME VIDEO | |
制作年度 | 2004年 | |
上演時間 | 109分 | |
監督 | ポール・グリーングラス | |
出演 | マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、ブライアン・コックス | |
画面 | 2.35:1/アナモルフィック | |
音声 | DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語、フランス語、スペイン語 | |
字幕 | 英語、フランス語、スペイン語 |
あらすじ
前作「ボーン・アイデンティティ」その後と言う設定から物語は始まる。カスピ海の油田王がパメラ・ランディ率いる C.I.A.の目を掠め取って何者かに暗殺される。その暗殺現場を調査していたパメラと C.I.A.職員たちはその仕掛けを行っていた配電管にジェイソン・ボーンの指紋を見つけてしまう。彼が何者なのかを調査し始めるが、前作の事件の原因となった大掛かりな C.I.A. の機密情報に阻まれ、パメラには理由をつかむことが出来ない。一方ボーンはマリーをインドで暮らしていたが、2 年経っても自分の正体が何者なのか判別せずに苦悩していた。ある日、油田王を抹殺した暗殺者がジェイソンの前に現れ、彼を抹殺しようとする。必死の逃走を行うボーンとマリーだが、マリーは暗殺者の手に掛かって死んでしまう。ボーンは自分の正体を確かめる為、そして愛するマリーの復讐のためにヨーロッパを舞台に必死の調査と暗殺者との戦いを繰り広げる。
レビュー
大ヒットした前作「ボーン・アイデンティティ」の続編です。一応、ロバート・ラドラムの「殺戮のオデッセイ」をベースにしているようですが、実際はだいぶ違う内容のようですので、小説と見比べないほうがいいと思います。監督がポール・グリーングラスに変更され、前作の監督であったダグ・リーマンが製作総指揮に回っています。そのせいか、多少作品のニュアンスが違うところがあるようです。
物語冒頭でベルリンの C.I.A.のオフィスが出てくるので「また悪巧みをしようとしているのか。」とつい前作の流れで観ていると、ロシアの暗殺者と前作ではあまり表に出てこなかった C.I.A.の影の支配者と言ってもいいアボットが登場する辺りから前作と話が違っていることに気付いてきます。
この作品が前作と違った要素を持っているのが、前作でジェイソン・ボーンを抹殺しようと企み、最終的に殺されてしまったんだコンクリンと影の支配者アボット、そしてボーンの失われた過去の記憶が前作より前の時代に関係しているところでしょうか。
前作で起きた事件はトレッドストーン作戦の一環であり、実際はもっと多くの暗殺が行われていたと言うことが今作でよりはっきりしています。そして殺人マシーンを作り上げたコンクリンがボーンにテストとして行わせたある農家の夫婦暗殺事件が今作の事件と徐々に絡み合ってくることが観ていて分かる仕掛けになっています。その農家の住んでいたところが発見されたばかりの油田であり、それが油田王に最終的には管理されることになるわけですが、当時の C.I.A.がロシア(多分生き残った娘の年を見ると旧ソ連時代)のカスピ海の油田を脅威に感じていたようです。それが農家夫婦殺害の動機であり、今作は油田王と C.I.A.の闇取引として事件の発端になっているようです。作品本編から外れてしまっていますが、「削除されたシーン」の中にアボットとロシアの暗殺者の接触が明確に描かれています。
もう一つの違いはと言えば、前作では事件に巻き込んでしまったマリーの存在がボーンに大きく影響を与え、追われ型のサスペンス作だったといえますが、今作では逆にボーンが事件の真相を知るべく、C.I.A.を追い詰めていくサスペンス作だったといえるかと思います。日本での劇場用予告編でファンに大変な不評を買ったマリーの死亡により、ボーンはたった一人で戦いを挑んでいくことになります。もちろんヨーロッパ中の警察やロシアの暗殺者が彼を追いかけていますので追われ型といえなくもないですが、今作は途中から自分の過去の一部が見えてくるために、積極的にマリーの復讐と、真相解明に走っているように見受けられます。(尚日本のファンに不評を買った予告編とはマリーが死亡するシーンがしっかりと入っていたためにネタバレをしてしまっている点です。クレジットでも 2 番目になっている登場人物がボーンの抹殺のために死んでしまうと言うところは予告編で流してはいけないだろうと思うのですが、日本の映画会社は平気でこういうことをしてしまいます。)
物語途中でトレッドストーン作戦を(おそらく影で)操っていたアボットは C.I.A.職員を証拠隠滅したことにより、自分の立場を失っていき、ついにはボーンに追い詰められてしまい、自害を果たしてしまいます。前作のレビューでも少し書いたのですが、今作で彼ははっきりと「アメリカのためにやったことだ。」ということを自白します。自国の利益のために何でもやってもいい訳ではないことはイラク戦争の例を持ち出すでもないでしょう。その一方で「あと 2 年で定年退職する。」ということを言っている辺りに自己保身に走っている責任を取らない責任者を連想させます。最終的にはボーンに追い詰められて自害と言う形で責任を取ることになってしまいますので、この辺は直接作品とは関係ないですが、ちょっと考えされられるところでもあるかと思います。
物語ラストで農家の夫婦の娘に会いに行ったボーンは、「あなたの両親は僕が殺した。」と真実の話をします。彼にとって精一杯のお詫びの気持ちであり、殺人マシーンに仕立てられたボーンがまた一つ人間性を取り戻す過程であったのではないかと思います。
そして C.I.A.のパメラに連絡を取ったボーンは自分の真の名前を知らされます。しかしウェブと呼ばれた名前は真の名前なのでしょうか。彼はまた真の自分を求めて旅出します。その表情は厳しいものです。3 作目制作の話もあるようですから、さらに謎の過去が明らかになってくるのかもしれません。
画質はシーンによってバラバラなのですが、少々緑が強い気がします。緑と言ってもダークグリーンと言えるもので特に室内のシーンや、夜のシーンで目立ちます。制作者の意図なのか少々判別に苦しむところではありますが、DVD のジャケット自体もそのイメージで行っていますので、多分意図しているのではないかと思います。ただしマリー死亡のシーンの赤の色使いはちょっと逸脱しているなと思わせる部分があります。音響は前作とは違って DTS がありませんのでダイナミックレンジが DOLBY DIGITAL では足りない気がしますが、シーンとして多い車の移動感がリアリティを感じさせます。
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