THE MATRIX REVOLUTIONS
No Image | 邦題 | マトリックス レボリューションズ |
レーベル | WARNER HOME VIDEO | |
制作年度 | 2003年 | |
上演時間 | 129分 | |
監督 | ウォシャウスキー兄弟 | |
出演 | キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス | |
画面 | 2.40:1/アナモルフィック | |
音声 | DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語、フランス語 | |
字幕 | 英語、フランス語、スペイン語 |
あらすじ
ついにマシーンによる人類の砦「ザイオン」への侵攻が開始される。必死の防戦を続ける人類だが、圧倒的な物量の前になすすべもなかった。一方ネオはマトリックスでもなく、現実世界でもない「駅」に閉じ込められる。彼の救出のために、セラフ、モーフィアス、トリニティが立ち上がり、無事ネオは現実世界へと復帰を遂げた後、この事態に終結をもたらすために、マシーンシティに向けて出発をすることになる。事態解決のためには、マトリックスから離れ暴走を続けるエージェント・スミスを食い止めるしかないからである。かくして、ネオと、エージェント・スミスの最後の戦いが始まった。
レビュー
「マトリックス リローデッド」の続編であると同時に一応シリーズの完結編となる作品ではあります。
何故こんな書き方をしたかといえば、改めて鑑賞をしてみると、第一作目である「マトリックス」とその続編二本は明らかにストーリーテリングが異なるからです。前作「マトリックス リローデッド」のレビューのときに「話を詰め込みすぎ」だとか、「マトリックスの概念が分かりづらくなっている」と書いておりますが、今作を観て分かったことがあります。基本的に「マトリックス」シリーズは第一作目で自己完結してしまっているのであって、続編二作は無理やりに話を作っているという点です。
多分第一作目が予想外にヒットしてしまったために続編を作ることになったのだろうと思いますが(プロデューサーのジョエル・シルバーは「当初から三部作の予定をしていた。」と言っていたようですが)、その為にストーリーのバランスが大きく崩れているというのが実感です。
「マトリックス リローデッド」のレビューでは「様々な新キャラクターが登場するが伏線を張っていない。」と書きましたが、実のところそのレベルではなかったのではないかという気がします。今作の最大の問題点は、第一作からの主人公であるネオ、モーフィアス、トリニティの印象がとても弱く、主人公とは呼べないところにあるかと思います。むしろ脇役キャラだったジェイダ・ピンケット・エージェント・スミス演じるナイオビですとか、マシーンと戦うナサニエル・リーズ扮するミフネ船長の印象が強くなってしまっているのが問題なのだと思います。主人公より脇役が目立っている作品というのも大作映画にしては珍しいのではないかと思います。
今考えると「マトリックス リローデッド」でもその傾向があったように思います。但し、前作の場合は一応マトリックスの世界でそれぞれが見せ場を設けていたので「何か違和感があるな。」ぐらいで済んだのですが、今回はそれすらなかったと言わざるを得ません。クライマックスのネオとエージェント・スミスのバトルシーンだけは主人公の面目躍如と言えなくもないですが、それも物語中盤のマシーンと人類のバトルシーンから比べるとインパクトに欠けています。
更に今作はマトリックスの世界があまり描かれていないところも、ストーリーバランスを崩していると感じる理由のひとつです。観ていて思ったのは、第二作目と今作を再編集しなおして、2 時間半程度の作品にしたらバランスがよかったのではないかと思います。
もう一つ今作が持っている欠点といえば前作のラストから見せ始めたネオの現実世界でのマトリックス世界と同様の力を発揮するというところでしょう。これは明らかに物語の設定を狂わしています。逆の見方をすれば、現実世界にいるネオは実は現実には存在していなくてマトリックスが作り出した幻想なのでは ? とうがった見方も出来ます。途中から目が見えなくなっているのに現実世界をマトリックス世界のようにコンピュータ画面のように見るようになってしまったところなど、そう考えられなくもありません。
もう一つこの説を思いついた理由としては、エージェント・スミスの暴走をネオが止める、という点です。元々マトリックスというプログラムの一つに過ぎなかったエージェント・スミスがマトリックスから分離して暴走を始め、それをネオが食い止める、というストーリーは何だが、現実の PC に対するウイルスやスパイウェアの感染と、それを駆除するウイルス対策ソフト、スパイウェア対策ソフトを想起させるところがあります。そう考えると何か分かりやすくなってきます。
作品としては破綻している気はしますが、「マトリックス リローデッド」に比べたら十分に楽しめる作品と思います。特にマシーンと人類の戦いで人類が使うパワードスーツを見ていると、まるでロバート・A.ハインラインの「宇宙の戦士」の戦闘シーンを彷彿させるところがあり、それらのオマージュになっている「エイリアン 2 」や「スターシップ・トゥルーパーズ」のパワーアップ版と言えなくもありません。「マトリックス」の完結編として観たら欠点は色々ありますが、SF 映画としてみたら十分に楽しめる作品だと思います。
また、クライマックスのネオとエージェント・スミスのバトルも、前作に比べると漫画チック度が少し弱まったのでむしろよかったのかな、と思います。結論としては、「マトリックス リローデッド」が余計なストーリーテリングであり、その作品での特殊効果の変な多用がむしろ作品の質を下げたというのが今の感想です。前作のレビューでは「サマーシーズンムービーとしては楽しめる」と書きましたが、こちらを見てしまうと、前作はあまり楽しめません。
画質は三作共通でマトリックスの世界は緑かがっています。何故マトリックスの世界が緑がかっているのかということについては僕の推測ですが、昔の PC ( Windows や Mac なんてなかった頃)のディスプレイはカラーが出せなくて白黒モニターかグリーンディスプレイ(文字が緑色で表示される)というのが一般的だったので、プログラムの世界であるマトリックスを緑がかった色調にしたのではないかと思います。物語冒頭のシーンでも文字が緑なのは誰でもお気づきでしょう。ちょっと面白いのが物語の最初でネオが閉じ込められた「駅」のシーンの色調です。微妙に緑かがっているのですが、どちらかというと白が支配的です。前述のように「駅」はマトリックスでもなければ現実世界でもない場所ですからその辺のニュアンスを微妙な色彩で表現しようとしたようです。多分これは劇場では分からないかと思います。サウンドは今作は 5.1ch がバリバリ鳴っています。マシーンとの戦闘シーンはそれだけでも十分お腹一杯と言ったところです。
ちなみにこの作品も IMAX 版で鑑賞していますが、既に 2 年近くたっているので、あまりIMAX の印象は残っていなくて、DVD 版でも十二分に楽しむことは出来ました。IMAX 版は、画面が大きい上に、プリントの製造工程上、高画質で見ることができますので、チャンスがあるようでしたら、普通の劇場ではなくて IMAX シアターでの映画鑑賞をお薦めします。東京ですと品川プリンスホテル内にありますし、大阪ですと天保山に IMAX シアターはあります。
邦題について
2005年10月02日追記
邦題では「マトリックス レボリューションズ」となっていますが、原題を日本語で正確に近い書き方で書くと「マトリックス レヴォリューションズ」になります。原題の「MATRIX REVOLUTIONS」の「VO」は「ヴォ」と書くほうが発音に近い表記です。「ボ」と書くと「BO」になってしまいますので、発音的には変になってしまうのですが、映画会社がそう決めたタイトルですので、タイトルも映画会社に合わせています。ただ、こういう英語の間違った使い方をしているのはあまりいいことではないなと思います。日本人が英語を出来ない理由のひとつに挙げてもいいくらいではないかと感じる点の一つかと思います。
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