THE MIST
邦題 | ミスト | |
レーベル | genius products,llc | |
制作年度 | 2007年 | |
上演時間 | 126分 | |
監督 | フランク・ダラボン | |
出演 | トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローリー・ホールデン | |
画面 | 1.78:1/アナモルフィック | |
音声 | DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語、フランス語 | |
字幕 | 英語、スペイン語 |
あらすじ
アメリカのある田舎町。嵐の翌日、デヴィッド・ドレイトンは息子のビリーと近所のノートンを連れて町のスーパーマーケットに物資の調達をしに出かける。しかし、買い物をしている最中血だらけの男が店内に駆け込んできて、「霧の中に何かがいる」と叫んでいた。ほどなくスーパーマーケットは霧に覆い隠されるが、その霧の中には化け物が多数うごめいていて、スーパーから出ていく人たちを容赦なく襲っていた。スーパーの中は不穏な空気が流れ、狂信的な女性ミセス・カーモディの発言にシンパを集めるようになっていく。そんな中正気を保っていたデヴィッドは、数々の試練を潜り抜けて、スーパーマーケットからの脱出を図るのだが…。
レビュー
ホラー小説の大家、スティーヴン・キングの傑作中編小説「霧」の実写化作品がこの「ミスト」であります。監督・脚本は同じくスティーヴン・キングの小説の映画化「ショーシャンクの空に」と「グリーン・マイル」を担当したフランク・ダラボンが今回3度目のスティーヴン・キングの作品映像化に挑んでいます。
原作はキングの作品の中でも傑作とされていて、その映像化は困難との話もありましたが、CG技術の進歩により、霧の中の化け物の映像化に成功しているといえます。とはいうものの、CGと明らかに分かる描写もあり、化け物の怖さという面では、今一つではないかなと思います。
しかしながら、フランク・ダラボンの映像化で成功しているのが、人間描写のパートでしょう。主人公デヴィッドの立ち位置がはっきりしているので、感情移入がしやすく、見ていてそこはかとない不安感を共有することができます。
相対するのがミセス・カーモディの説教であるといえましょう。人間の正常な思考判断では、単なるおかしな人で済まされたカーモディですが、危機的な状況に襲われ、それが続いていくことにより、カーモディの審判の日の説教に耳を傾ける人が続々と出てくるのも描写としては納得できるものがあります。ただ、我々日本人としては宗教的信仰が薄いため、多少その感情移入度は薄くなっていることも挙げておかなければならないと思います。
物語としては、最初大したことないと思われていた霧の中の化け物が次第に現実を伴って襲い掛かり、スーパーの中にたまたまいた人たちの心理状態の変化を描いた心理ホラーといってもいいのではないかと思います。化け物がCG臭くて、多少興ざめでも、それをあまりあって人間描写が秀逸であるため、見ていて「この先どうなるのだろう」と物語に引き込む力があります。
物語は昔原作を読んだ記憶があるのですが、ラストを除いては原作に忠実であると思います。スティーヴン・キングの小説はとにかく長くて、登場人物の背景を長々と描写しているため、その映像化は失敗することが多いのですが、今作は元々が中編(といっても他の小説家からすれば十分長編)という事もあってか、映像化に成功していると思います。
そのラストですが、これは結構賛否の分かれるラストではないかと思います。主人公であるデヴィッドに感情移入できるかどうかによってその判断は変わってくると思うのですが、僕個人としては救われないラストであると思います。原作はもっと突き放したというか、読者の想像に任せているような終わり方だったと思うのですが、映画版ではその先を描いてしまっていて、やり切れない感情を持つことになります。
物語のエンドロールでも、途中で音楽が終わり、あとはヘリコプターや戦車などの走行音が流れるだけという結構インパクトのある、変に余韻の残る終わり方をしていて、作品のラストにダメ押しをしているかのようなエンドロールになっていると思います。
映像は、ビスタサイズですが、フィルム調の画質をしており、自然な色調が特徴的です。前述のとおりCGがCGぽいところを除けば、ナチュラルな画質をしていると思います。音響は5.1chサラウンドですが、基本的には前方サウンドの厚み重視という感じで時々サラウンドチャンネルが鳴るといったデザインをしています。あまりこけおどしのサラウンドチャンネルという感じではないです。
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