フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(HD/Disney+)

No Image	原題	THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY,CANSAS EVENING SUN
	レーベル	SEARCHLIGHT PICTURES
	制作年度	2021年
	上映時間	108分
	監督	ウェス・アンダーソン
	出演	ベニチオ・デル・トロ、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントン
	画面	1.33:1&1.66:1&1.85:1&2.39:1/SDR
	音声	DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語
	字幕	日本語

あらすじ

　アメリカのカンザス出身のアーサーは、成長してからフランスに渡り、雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の編集長として活躍していた。アーサーは、雑誌の記事の執筆者には態度が甘くなっていたが、その他の雑誌の制作に関わる人物には厳しい姿勢で挑んでいた。そのアーサーが突然この世を去った。アーサーの遺言により、「フレンチ・ディスパッチ」は廃刊になり、定期購読していた読者には、返金を行うことになった。「フレンチ・ディスパッチ」に関わった人物は、アーサーとの最後のやり取りを思い返していた。そして、最後の「フレンチ・ディスパッチ」は、4つのエピソードで構成されていた。それは、観光記事、刑務所に殺人犯として収監されている美術家のエピソード、大学と学生の紛争に関わる話、そして、料理がとてもうまい警察署長とその息子の話、というユーモアに溢れた記事だった。

レビュー

　ユニークな作品を作り続けるウェス・アンダーソンが監督を務め、映画内で存在する雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の最後の号の内容を映像化したのが、この「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」です。こういう小品には厳しい興行収入となっており、全世界での興行収入が製作費を上回るものの、アメリカ・カナダでの興行収入は製作費を下回っている状況です。ただ、評価は水準を維持していて、Rotten Tomatoesの批評家評価は75%、観客評価も76％と一定の評価を得ています。
　「フレンチ・ディスパッチ」の生みの親は、アーサーというアメリカはカンザス出身の男であり、若い頃から大西洋を渡り、フランスで雑誌を創刊して、そのユニークな内容で世界的に人気のある雑誌を作り続けています。そのアーサーが突然急死し、アーサーの遺言に従って、発刊された号が最後の号になってしまいます。その最後の号の記事内容を映像で表現するというのが、この映画の特徴です。

　その記事は、映画のユーモラスな部分と呼応するかのように、奇妙な話が満載されている展開になっています。雑誌は4つのセクションに分かれていて、フランスの観光ガイド、刑務所に収監されている美術家の話、大学と学生の対立の話、料理の上手な警察署長とその息子の話で構成されています。どれも不思議な展開が繰り広げられ、観ていて奇妙な気分になってきます。

　映画を見ていて驚いたのが、画面のアスペクト比が今時使うことのない1.33:1のスタンダードサイズでの上映が主になっているところではないでしょうか。ワイドスクリーンが映画の主流になっていますが、この映画はまるでIMAXフィルムをテレシネでビデオ収録したかのようなアスペクト比になっていて、不思議な気分になります。時折、1.66:1と1.85:1のビスタサイズで描写したり、挙句に2.39:1のシネマスコープサイズで描写したりするシーンもあり、アスペクト比の違いが映像の面白さを醸し出していると言ってもいいでしょう。

　また、映像は4つの記事の内容を主にモノクロ映像で表現していて、これもまた、インパクトを与えることに成功していると言えるでしょう。これが現実の世界だとカラー化されたりしますが、モノクロのシーンが多いため、カラー化されたシーンを見ると、その色彩の豊かさに驚かされるところがあります。また、警察署長とその息子の話では、クライマックスがなんとアニメで表現され、その予想外の描写に驚かされるところでもあります。

　映像はHD/SDRで収録されています。4K UHD Blu-rayのリリースはないようなので、家庭で見られる映像はiTunes Moviesの4K/SDRを除けば、HDが最高画質になります。HDでのリリースになっていますが、マスターデータは4Kですので、2Kダウンコンバートでの収録になり、映像の精彩感はHDとして十分なものを提供しています。色彩もモノクロシーンが多いので、カラーシーンが現れた時には、その色彩の豊かさに目の覚める思いです。音響はDOLBY DIGITAL 5.1chでの収録でありますが、dts Neural:Xでの再生により、イマーシヴなサラウンド感に溢れた効果を発揮しています。