ウエスト・サイド・ストーリー(2021)(4K UHD/Disney+)/Apple TVで観た映画のレビュー

ウエスト・サイド・ストーリー(2021)(4K UHD/Disney+)

No Image 原題 WEST SIDE STORY
レーベル 20世紀スタジオ
製作年度 2021年
上映時間 136分
監督 スティーヴン・スピルバーグ
出演 アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ
画面 2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

 ニューヨークのウエスト・サイド地区は、再開発の波がやってきていて、そこに住む住人たちには厳しい環境になっていた。白人の若者のギャング団ジェッツは、プエルトリコからの移民の若者で構成されるギャング団シャークスと対立していた。ジェッツ団のリーダー格だったトニーは、対立相手を殺しかけた罪で逮捕され、刑務所暮らしを経て今は出所し、穏やかな生活をしていた。しかし、ジェッツ団とシャークス団との抗争の中にトニーも巻き込まれていく。ある日、ダンスパーティに出たトニーは、プエルトリコ人のマリアと出会い、二人は恋に落ちる。しかし、マリアの兄はシャークス団のリーダー格であったベルナルドであり、この恋は許されないものであった。ジェッツ団とシャークス団の対立は深まり、決着をつけるべく、戦いの日時を決めていた。トニーとマリアはデートをするが、マリアから戦いを止めるよう願いを受け、トニーは両者の戦いを止めようと決闘場所に赴く。しかし、事態は悪化し、トニーの弟分であるリフとベルナルドが死んでしまう。警察の捜査の中、ジェッツ団もシャークス団も逃走するが、ベルナルドの知人であるチノはリフの持っていた拳銃を手にし、夜のウエスト・サイドを彷徨っていた。

レビュー

 元々は舞台劇であった作品を映画化して不朽の名作と呼ばれる「ウエスト・サイド物語」を、スティーヴン・スピルバーグがリメイクした作品が、この「ウエスト・サイド・ストーリー」です。2021年のアカデミー賞では、ベルナルドの恋人アニータ役のアリアナ・デボーズが助演女優賞を受賞していて、作品賞、監督賞など7部門にノミネートされています。批評家たちの評価も高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は91%、観客評価は94%と高水準を維持してしますが、興行収入は製作費100万ドルに対し、全世界で75.7百万ドルしか稼げず、失敗作と見做されています。

 映画は1961年の「ウエスト・サイド物語」のリメイクではありますが、この「ウエスト・サイド物語」をそのままアップデートしたような映画になっており、「ウエスト・サイド物語」を観ていない観客にも、オリジナルの映画の雰囲気を伝えるものになっています。ストーリーも「ウエスト・サイド物語」と同じく1950年台のニューヨークを舞台にしていて、過去作に対するリスペクトがよく表れていると思います。

 ストーリーはニューヨークのウエスト・サイド地区での白人ギャング団ジェッツと、プエルトリコからの移民であるギャング団シャークスとの対立を軸に、ジェッツに所属しているトニーと、シャークスのリーダー格であるベルナルドの妹であるマリアとの許されぬ恋を描いたものになっています。元々の「ウエスト・サイド物語」自体が「ロミオとジュリエット」のミュージカル版といった立ち位置にあるので、この「ウエスト・サイド・ストーリー」も同じ立ち位置にあると言えます。

 オリジナル版がミュージカルなので、この映画もミュージカル仕立てになっています。僕が知る限り、スティーヴン・スピルバーグが監督した中でミュージカル映画というのは珍しい作風ではないかと思います。特に1950年台にメジャーではあったものの後に衰退していくことになるミュージカルを今回採用するというのは、一つの冒険であったかと思います。そのミュージカルシーンは、ストーリーの展開上重要な要素でありますので、字幕で歌詞が表示されるのは、重要な意味合いを持っています。

 物語は後半にいくに従って、ジェッツとシャークスの対立が深まっていき、双方に死者が出るという最悪の状況が発生します。警察がこれを見逃すはずもなく、警察がジェッツとシャークスの双方を追跡する中、トニーとマリアの恋の行方がどう展開していくのかが、物語上重要な位置を占めていきます。「ウエスト・サイド・ストーリー」自体が「ロミオとジュリエット」のミュージカル版という立ち位置にあるので、その結末がハッピーエンドであるはずもなく、結構重たいラストを迎えることになります。

 映画はジェッツとシャークスの対立を描いていますが、それは移民者に対する差別を描いているものと思われ、過去のことではなく、現代にも通じる問題でもあるかと思います。アメリカでの有色人種や移民者に対する差別は現代でも無くならず、重たい現実として私たちの世界にのしかかってきますが、それを映画の中で示唆しているところは、映画の本質をついていると思います。

 映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。マスターは35mmフィルムであり、それを4Kスキャンしたものがマスターデータになっていますので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。解像度は素晴らしいものがあります。ただ、色彩で言えばDOLBY VISION採用なのですが、撮影監督がヤヌス・カミンスキーのためか、若干銀残し的色彩をしていて、モノトーンのような雰囲気が表れています。映像的には古い映画を思い起こさせるような色彩をしていて、色が原色をはっきり写すような場面もなく、現代風ではありません。音響はDOLBY ATMOSで収録されていて、ミュージカルシーンでの歌っている人たちの声の出方や、環境音などでオブジェクト満載のサラウンドになっていて、音響効果としては優れていると言えます。音質も低域がよく出ていてクオリティが高く、ミュージカル映画としての楽しさみたいなものは味わえます。

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