ナイル殺人事件(2022)(4K UHD/Disney+)
No Image | 原題 | DEATH ON THE NILE |
レーベル | 20世紀スタジオ | |
制作年度 | 2022年 | |
上映時間 | 127分 | |
監督 | ケネス・ブラナー | |
出演 | ケネス・ブラナー、ガル・ガドット、アーミー・ハマー | |
画面 | 2.39:1/DOLBY VISION | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
1937年のイギリス。ジャッキーは友人の大富豪リネットに婚約者であるサイモンを紹介する。しかし、サイモンはジャッキーとの婚約を解消し、リネットと結婚してしまう。それから数ヶ月後、サイモンとリネットの夫妻は新婚旅行のためにエジプトにやってきていた。名探偵エルキュール・ポアロもリネットに頼まれ、エジプトに夫妻の警護の意味合いでやってきていた。サイモンとリネットの夫妻の前にはしばしばジャッキーが現れて、二人の心に不安感を与えていた。サイモンとリネット夫妻を含む大勢の人々がナイル川周辺にある遺跡を見に客船に乗船し、旅を続けていた。ポアロもエジプトで友であるブークと再会し、彼らと一緒に客船に乗船する。しかし、その客船にはジャッキーも乗船していて、ジャッキーはサイモンを銃で負傷させる。そして、船内でリネットが銃で殺されているのを発見する。殺人事件に直面したポアロは、客船に乗船している客に対して事情聴取を開始するが、犯人がわからないまま、第二、第三の殺人事件が発生する。それを見たポアロは、自身の才能を発揮し、殺人事件の犯人を追い詰める。
レビュー
俳優であるケネス・ブラナーが、アガサ・クリスティーの生み出した名探偵エルキュール・ポアロが活躍する探偵物を「オリエント急行殺人事件」に続き、原作の「ナイルに死す」を映画化した第二弾が、この「ナイル殺人事件」です。ケネス・ブラナーはエルキュール・ポアロを演じるだけでなく、作品の監督をも担当しています。元々は2019年に公開される予定でしたが、撮影の遅れから始まり、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い上映がどんどん遅れ、最終的に2022年に劇場公開された作品になっています。製作費は90百万ドルもかかっていますが、北米の興行収入だけでは赤字になっていて、全世界の興行収入でようやく黒字になっている作品であります。批評は思ったほど高くもなく、Rotten Tomatoesの批評家評価は63%、観客評価が82%と、今ひとつの評価を得ています。
この「ナイル殺人事件」は、冒頭でなぜエルキュール・ポアロが口髭を生やしているのか、その理由について説明がなされています。それは戦争時の負傷で口元に傷を負ってしまったために、それを隠す目的で口髭を生やすようになったという物ですが、そのシーンではエルキュール・ポアロにも恋人がいて、彼女の提案により口髭を生やすという行為を行ったことが描かれています。このシーンだけに限らず、「オリエント急行殺人事件」と違って、エルキュール・ポアロの人格形成の描写に力を入れている感覚があります。エルキュール・ポアロにも恋人がいたが、結局別れてしまい、独身の名探偵として生活しているという設定は、ポアロの人となりを語っていて興味深いものがあります。
物語本編は1937年のエジプトなのですが、エジプトでの展開の前に、ロンドンで事件の中枢に位置するサイモンという男性と大富豪であるリネットという女性、リネットの友人であるジャッキーの関係が詳細に描かれているところに、エジプトでの事件の展開に影響を及ぼしていると言えます。当初ジャッキーと結婚する予定だったサイモンは、結局リネットと結婚し、そのために婚約破棄されたジャッキーは、二人に恨みたっぷりにしばしば二人の前に現れるというところが事件に影響を及ぼしていると言えます。
エルキュール・ポアロはリネットに頼まれ、サイモンとリネットの身辺警護の目的で、一緒にエジプトへの新婚旅行に同行しますが、エジプトで友人であるブークと再会し、ブークが黒人歌手であるロザリーと結婚したいのだが、母が許さない、といった話をしています。この辺も実は殺人事件に関わってくる話なので、外せない展開ではありますが、実際の事件が起きるまでは上映時間の前半1時間を登場人物のキャラクター造形に費やしているところがあり、その辺は少し退屈ではあります。
サイモンとリネットはナイル川を降る客船に乗って、エジプトの遺跡を見学するツアーに出かけるのですが、その客船に乗船しているのはこの二人の関係者だけであり、そこに事件の重大さが隠されていると言えます。実際最初の殺人事件は、リネットが犠牲者であり、犯人は客船に乗っているリネットと関係ある登場人物だけであり、その殺人事件の謎をどうエルキュール・ポアロが解決していくのかが、後半1時間で描かれているところは、後半の楽しみになっています。
エルキュール・ポアロの殺人事件の捜査にもかかわらず、犯人の尻尾が掴めないまま、第二、第三の殺人事件が起きてしまいます。第二、第三の殺人事件が起こった段階で、ようやくエルキュール・ポアロにも事件の真相が掴めるようになり、殺人事件の犯人が誰なのかが分かるようになっていますが、その展開には意外なものがあります。ミステリー物なので、犯人の名は書きませんが、予想外の展開に唖然とするものがあります。
映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。「オリエント急行殺人事件」と同じく、映画は65mmフィルムで撮影され、4Kデジタルマスターを制作していますので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。映像は65mmフィルムがベースになっているため、高精細の映像になっており、エジプトの観光名所をじっくりと堪能することができます。HDRもDOLBY VISIONでの収録のため、エジプトの砂漠の雰囲気がよく現れている色調をしており、照明の明るさや、夜の闇のシーンでの黒の階調性などで効果を発揮しています。音響はDOLBY ATMOSサウンドトラックであり、音場感はオブジェクトが自分の周囲を取り囲むかのようなサラウンドを作り出しています。総じて満足のサラウンドであり、イマーシヴ・オーディオとしての効果は抜群であると言えます。
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