The Virgin Suicides(4K UHD Blu-ray/CRITERION)/ヴァージン・スーサイズ/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

The Virgin Suicides(4K UHD Blu-ray/CRITERION)/ヴァージン・スーサイズ

The Virgin Suicides 4K UHD Blu-rayジャケット

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邦題 ヴァージン・スーサイズ
レーベル CRITERION COLLECTION
制作年度 1999年
上映時間 97分
監督 ソフィア・コッポラ
出演 ジェームズ・ウッズ、キャスリーン・ターナー、キルステン・ダンスト
画面 1.66:1/HDR10
音声 dts-HD MA 5.1ch 英語
字幕 英語

あらすじ

リスボン一家は、両親と5名の娘がいた。両親は厳格な宗教の信者であり、娘にもそれに従うよう躾をしていた。父親は学校の教師をしていた。5名の娘の中の一人、シシリアがある日、自殺未遂を起こす。幸い、シシリアは命を取り止めるのだが、シシリアの回復パーティを両親が開いている途中でシシリアはパーティを退席し、再度自殺を試みてしまい、今度は本当に死んでしまう。残された4人の娘、ラックス、メリー、セリーズ、ボニーは、シシリアの死によって心に傷を負う。しかし、4人の娘たちは美人であったため、学校で注目の的であり、フットボール選手であるトリップがラックスに接触をし、ラックスが笑うようになる。トリップとラックスは親交を深めていき、トリップのフットボール仲間である若者たちと、リスボン家の両親に「ホームカミング」というダンスパーティに4人の娘を誘いたい、と申し出る。両親もそれを承諾し、4人の娘は「ホームカミング」に参加する。その「ホームカミング」でトリップとラックスはキングとクイーンに選ばれて、二人は一夜を過ごし、一線を超えてしまう。そのために、リスボン家の母から4人の娘に対して外出禁止を言い渡し、学校にも行けなくなってしまう。それでも、トリップの仲間たちは、光によるモールス信号や、手紙によって、4人の娘と交流を図ろうとしていた。

レビュー

「ゴッドファーザー」シリーズ等の監督で知られるフランシス・フォード・コッポラの娘であるソフィア・コッポラの初監督作品であり、脚本も担当しているのが、この「ヴァージン・スーサイズ」です。ジェフリー・ユージェニデスの原作小説を映画化したものであり、2001年の「MTVムービー・アワード」で新人監督賞を受賞している作品です。興行収入は全世界での興行収入でようやく制作費とトントンになるぐらいでありますが、批評は比較的高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は79%、観客評価は81%と意外と高い評価を得ています。

物語は、リスボン家の5人の娘の生と死を微妙なニュアンスで描いた作品になっています。物語冒頭で、娘の一人であるシシリアが自殺未遂を起こした挙句、再度自殺を試み、今度は本当に死んでしまうところから、残された4人の娘の生き様と死について、実に静かな展開で描き切っています。5名の娘の生と死に対する明確な答えは、この映画では描かれていません。それは、観客の想像に委ねているのだと思います。

それでも、物語途中でリスボン家の娘の一人であるラックスが、学校の生徒であり、フットボールの選手として部活しているトリップと交流を続け、最後には一線を超えてSEXをしてしまうところに、彼女たちの生と死に対するある種の観念のようなものは見えると思います。何か、生と死は等価であると言いたげな演出がなされているようにも感じます。精神科医の樺沢紫苑によれば、「死にたい」という感情は脳のエラーによるもので、ある一定時間をやり過ごせば、死を選ぶことはなくなる、という話でありますので、5人の娘たちは、その脳のエラーを修正できなかったと言ってもいいのではないかと思います。

5名の娘たちの死生観を体現しているのが、両親の厳格な躾にあるのではないかという気もします。両親は熱心な宗教の信者であり、食事の前には必ず祈りを捧げるほどです。また、父親が学校の教師であるというところも、厳格さを体現しているように思います。ラックスがトリップと一線を超えた後、娘たちは家から出ることを禁じられますが、その時に母親はラックスのコレクションであったロックレコードを処分するよう命じ、ラックスは反発するものの母に逆らえずレコードを処分せざるを得なかったことから、両親に対する反発心が、5名の娘の死生観に大きな影響を与えていると思います。特に、ラックスは両親からの自由を強く求めていたと思います。それがトリップとの関係であり、最後の結末に繋がる展開になっていると思います。

5人の娘たちの仲の良さは、この映画の中でも印象深く描かれています。リスボン家の家の前に植っている木が枯れたために伐採しようと市の職員が動いている時に、4人の娘たちは「これはシシリアが好きだった木だから切らせない」と、意思表示をするシーンがあります。それだけ、姉妹の関係の深さが描写されているシーンであり、印象的なシーンでもあります。

物語自体は1970年代を舞台にしていますが、ストーリーテラーは1999年の今のナレーターが過去を振り返るという形式で物語を進行させていきます。そのため、物語に一定の緊迫感を与え、ストーリーがどう転んでいくのか、興味を引くような作りになっています。

映像は4K/HDR10で収録されています。マスターは35mmフィルムであり、高画質で定評のあるCRITERIONが4Kスキャンをしていますので、ネイティヴ4Kでの映像描写になります。映像はフィルムのグレインをも見事に捉えるほど高精細であり、満足のいく画質ではありますが、色調は監督の意図によりあえて赤みがかったり、青みが買ったりと、色合いをいじっていますので、自然なトーンではないということは言えます。HDR10による暗部階調の表現は見事なもので、作品のトーンを決める大きな要素になっています。

音響はdts-HD MA 5.1chで収録されています。CRITERIONのトランスファーによれば、オリジナルのDOLBY SRからリマスターされた5.1chサラウンドで収録したとあります。視聴にはdts Neural:Xでの試聴になりましたが、ドラマの映画とは思えないほど環境音がサラウンドしていて、物語に没入できるぐらいの効果を発揮しています。5.1chなのですが、7.1.4chでサラウンドを鳴らしているかのような効果を出しています。

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