ラストナイト・イン・ソーホー(4K UHD/iTunes Movies)/Apple TVで観た映画のレビュー

ラストナイト・イン・ソーホー(4K UHD/iTunes Movies)

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原題 LAST NIGHT IN SOHO
レーベル UNIVERSAL PICTURES HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2021年
上映時間 117分
監督 エドガー・ライト
出演 トーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイ、マット・スミス
画面 2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

イギリスの田舎町に祖母と共に暮らすエロイーズは、ロンドンのファッション学校に合格する。ファッションデザイナー志望のエロイーズは、ロンドンでの新生活に胸を膨らませていた。しかし、エロイーズは実は霊感を持っており、エロイーズが幼い頃に自殺した母の亡霊をしばしば見ていた。エロイーズはロンドンに出てきて、デザイン学校の女子寮に入寮するが、他のクラスメートと馴染めず、一人孤立する。そのため、デザイン学校の掲示板で見かけた貸し部屋の案内を見て、その貸し部屋があるソーホーに向かって、貸主であるアレクサンドラ・コリンズというおばさんと契約を結び、ソーホーで一人暮らしを始める。貸し部屋の賃貸料を払うため、バーでバイトも始めたエロイーズだったが、寝ている時に1960年代のソーホーで歌手志望のサンディという女性の夢を見て、次第に彼女とシンクロする体験をしていく。デザイン学校の研修もサンディの衣装を参考に1960年代の衣装を作り始めるが、次第にサンディが辿った苦難の道をシンクロして体験することになり、恐怖を覚えるようになる。そして、サンディがバーのヒモであるジャックに殺される夢を見たことから、ジャックは今も生きていて、サンディが殺された夢は本当にあった出来事だと信じ込んで、その調査に精力を傾ける。そして、エロイーズが調査の結果知った真実は意外な展開を辿っていった。

レビュー

「ベイビー・ドライバー」や「アントマン」等で、スタイリッシュな映画を制作しているエドガー・ライトがイギリスのソーホー地区を舞台に若い女性が襲われるスリラーを作ったのが、この「ラストナイト・イン・ソーホー」です。2021年というコロナ禍の中、劇場公開はされましたが、全世界での興行収入は製作費を下回り、作品の出来とは別に失敗作とはみなされています。その作品の出来ですが、Rotten Tomatoesによる評価は、批評家評価は76%、観客評価が90%と、割と高い評価を得ています。なので、コロナ禍ではない状況で劇場公開されたならば、もう少しヒットしたのではないかと思います。

エドガー・ライト自身は意外とイギリスを舞台にした映画を作り続けている監督でありますが、この「ラストナイト・イン・ソーホー」も、ロンドンの繁華街ソーホーを舞台にして、ソーホーを魔都として描くことでもう一つの主役であるかのように描写しているのが特徴です。実際、映画のメイン舞台がソーホーですし、事件もソーホーから離れることはしないので、まさに主役としての描き方をしていると思います。

物語の真の主役であるエロイーズ自身も、単なる主役というわけではなく、霊感を持った若い女性であるという設定が生かされていき、霊感を持っているがためにエロイーズ自身がソーホーの魔力に囚われていき、精神を病んでいく物語になっているとも言えます。

しかも、エロイーズ自身の持つ霊感がエロイーズの思い込みだけでなく、クライマックスで実際に現実のものとなっていくことから、クライマックスの謎解きが結構恐怖感を呼び起こし、リアルな現実を描写していきます。それは、エロイーズが体験していく夢の中の若い歌手志望の女性、サンディの体験とシンクロするところから、夢の話のはずが実は現実の世界と繋がっていくという恐怖感が強く押し出していると思います。

そして、夢の中のキャラであるはずのサンディが、男たちの暗い欲望のネタとして引き摺り出されていく様は、男性に対する恐怖感を煽るものであり、それをエロイーズが追体験することで、より怖い内容に仕上がっているとも言えます。多くの男たちがサンディに性的好奇心をむき出しにして襲いかかる様は、女性の立場からしたら気持ち悪いものになっていると思います。さらに、サンディを歌手にするために彼女を振り回すジャックというヒモは、さらに怖い存在として描かれ、そのジャックが現代でも生きているのでは? とエロイーズが想像する様は、サスペンスの展開として面白いと思います。

ただ、救いがあるのはエロイーズが孤独に戦うのではなく、デザイン学校の同級生で黒人のジョンがいたり、田舎に住む祖母がいたりと、彼女を救うべく奮戦するキャラがいるところは、救いがあるのかなと思います。実際には彼らはクライマックスでは何の役にも立たないところはあるのですが。

物語はミスリーディングを起こすキャラが二人います。一人は男性老人でエロイーズに付き纏いますが、彼はエロイーズからサンディが受けた虐待を引き起こした人物であると思われています。もう一人は、ソーホーの貸し部屋の貸主であるアレクサンドラ・コリンズというおばさんで、単なる部屋の貸主かと思ったら、クライマックスで想定外の行動を起こし、恐怖を呼び起こします。

1960年代のソーホーを舞台にした映画ということもあり、物語で流れる音楽が1960年代のポップソングであるところも、センスを感じさせるものになっています。ただ、1960年代のオリジナルソングではなく、カバーした現代風のポップソングに変わっていますが。

映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。マスターデータが2Kですので、アップスケール4Kでの収録になっています。マスターデータが2Kなので、解像度は2Kに限定されています。そのため、4Kならではの高精細な画質は臨むべくもありません。しかし、ソーホーの街並みは見事な描写をしています。DOLBY VISIONによるHDR効果は素晴らしく、夜のソーホーのネオンが煌めくさまは、HDR効果を最大限活用したものになっています。昼のシーンはあまり多くはないのですが、昼のシーンでも現実を見ているかのような映像には仕上がっていますし、夜のシーンの魔力は吸い込まれるようです。

音響はDOLBY ATMOSで収録されています。音楽がメインのサラウンドですが、DOLBY ATMOSでMIXされた音楽は視聴者を三次元の空間に閉じ込めるかのような鳴り方をしていて、効果を感じさせます。また、環境音も三次元に音が広がり、意外なところから音が出てくるので、映画の中に没入したかのような効果を発揮しています。

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