戦場のメリークリスマス(HD/Amazon Prime Video)/Apple TVで観た映画のレビュー

戦場のメリークリスマス(HD/Amazon Prime Video)

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原題 Merry Christmas, Mr. Lawrence
レーベル 松竹=富士
制作年度 1983年
上映時間 123分
監督 大島渚
出演 デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、北野武
画面 1.78:1/SDR
音声 DOLBY DIGITAL 2.0ch 日本語、英語
字幕 日本語

あらすじ

1942年のジャワ島で、日本軍のハラ軍曹は部下であるカネモトに切腹をさせようとしていた。カネモトは捕虜であるオランダ人軍人のデ・ヨンを犯そうとして失敗したために、ハラから処分を受けさせられようとしていたのである。捕虜の中でハラの通訳を務めていたロレンスもカネモトの切腹に付き合わされ、異議を申し立てていた。その場に到着したヨノイ大尉の采配により、カネモトの切腹は延期になり、ヨノイ大尉はバタビアに移動して、英軍軍人のジャック・セリアズの戦争裁判に同席する。セリアズは日本軍に反抗的で、銃殺刑に処せられるが、ヨノイ大尉の手によって、ジャワ島の捕虜収容所に移動させられる。セリアズは衰弱していたが、次第に気力を回復していく。しかし、捕虜が無線機を持っていたことからロレンスも銃殺刑に処せられることになり、セリアズとロレンスは過去の後悔について会話を交わす。クリスマスの日にハラが自分の一存でセリアズとロレンスを釈放してしまうが、その後、ヨノイが捕虜に対して理不尽な命令を出し、セリアズがヨノイを止めようとする。

レビュー

大島渚が監督した中で、一番有名な作品にあたるのが、この「戦場のメリークリスマス」です。サー・ローレンス・ヴァン・デル・ポストが書いた「影の獄にて」を原作にしています。この原作本は、現在「戦場のメリークリスマス」のタイトルでもリリースされています。映画の評価も高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は83%、観客評価は79%と高評価を得ています。

この映画の特徴はといえば、出演者が豪華であるところにあると思います。ジャック・セリアズ役にデヴィッド・ボウイ、ヨノイ大尉役に坂本龍一、ハラ軍曹役に北野武が当てられ、いわゆる俳優ではない人たちの隠された魅力を引き出すことに成功した作品になっていると思います。そのほかにも内田裕也やジョニー大倉といった有名日本人俳優たちが多数登場し、物語に魅力を与えています。

もう一つの映画の特徴はといえば、1942年の太平洋戦争中のジャワ島での日本軍とその捕虜になっている欧米軍人との対立と愛情、相互理解を描いているところにあり、戦争映画ながら、戦闘シーンが全くないのが、大きな特徴であるといえます。

特にセリアズとヨノイ大尉との間に横たわる同性愛を思わせる愛情関係は、1983年当時の時代背景を考えると、インモラルな展開だろうし、認められるものでもなかったと思いますが、こういう愛情の形があってもいいのでは、という意見提起になっているのではないかと思います。2022年の今、改めて鑑賞するとありふれており、時代の先見性があったのではないかと思います。

また、ハラ軍曹と捕虜で通訳を務めるロレンスの関係も、興味深いところがあります。ハラ軍曹が優位に立っているようで、実はロレンスが上手くハラ軍曹をコントロールしているような感があり、この二人の関係性を見ていると面白いと思われます。処刑されそうになったロレンスとセリアズをハラがクリスマスだからという理由で釈放してしまうシーンは、この映画の名場面の一つだと思います。

映画のタイトル通り、この映画はクリスマスについて考えさせられる映画になっていると思います。処刑されそうになったセリアズとロレンスを釈放してしまうハラは、二人に対してのクリスマスプレゼントであろうと思いますし、セリアズがヨノイに対して愛情を示すシーンもクリスマスプレゼントであると思います。そして、ラストのハラの処刑前夜のロレンスの訪問もクリスマスプレゼントだと思います。クリスマスについて改めて考えさせられる映画になっていると思います。

この映画は一方で過去に対する贖罪を描いた映画になっているともいえます。セリアズが自分の弟がいじめられるのを黙って見ていたシーンは、彼の弟に対する仕打ちに対する後悔について描いていて、それがセリアズの行動原理に基づいていると思います。そして、ヨノイも過去に生きている軍人であります。

映像はHD/SDRで収録されていると思いますが、マスターになっているフィルムの状態がよろしくないので、画質は悪いです。フィルムにゴミや傷がついているために、終始画面にノイズが載っていて、見苦しいです。また、レーザーディスク時代とは異なり、夜のシーンは見やすくはなりましたが、全体的に黒が浮いていて、明るいシーンが飛んでいる色調になっていて、違和感を感じます。CRITERION COLLECTIONからリリースされたBlu-rayは、マスターの状態もよく、画面が鮮明で、フィルムのグレインすら見えるぐらいだったので、その差がありすぎで驚くばかりです。

音響はDOLBY DIGITAL 2.0chで収録されています。マスターはDOLBY STEREOですが、環境音の広がり感はないです。しかし、坂本龍一の作曲したBGMは空間的広がりを見せ、大きな効果を発揮しています。音声マスターも問題があるのか、時々ノイズが載ったりするのが残念です。

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