バニシング・ポイント(Blu-ray)/日本盤Blu-rayで観た映画のレビュー
ディスク仕様
No Image | 原題 | VANISHING POINT |
レーベル | 20世紀 フォックス ホーム エンターテインメント ジャパン株式会社 | |
制作年度 | 1971年 | |
上映時間 | 99分 | |
監督 | リチャード・C・サラフィアン | |
出演 | バリー・ニューマン、クリーボン・リトル、ディーン・ジャガー | |
画面 | 1.85:1/SDR | |
音声 | dts HD-MA 5.1ch 英語/dts 5.1ch 日本語(一部欠損) | |
字幕 | 日本語、英語 |
あらすじ
運び屋のコワルスキーは、車を届け終わった後、休息も入れずにデンバーからサンフランシスコまで車のチャレンジャーを送り届ける仕事に就く。デンバーからサンフランシスコまで15時間でチャレンジャーを送り届けると賭けをしたコワルスキーは、交通ルールを無視してチャレンジャーを爆走させていた。各州の警察は交通ルールを無視して爆走するコワルスキーを見つけて逮捕しようとするが、ことごとく失敗する。そして、ネバダ州に入ったコワルスキーを捕まえようと警察が動く中、黒人ラジオDJのスーパー・ソウルは警察無線からコワルスキーの暴走を知り、ラジオで彼を応援する発言を繰り返すようになる。スーパー・ソウルはコワルスキーを逮捕しようとする警察の動きをラジオで伝え、市民たちもコワルスキーの暴走を応援するようになっていく。一方でコワルスキーは途中途中で市民と出会い、彼らの協力を得ながらサンフランシスコを目指す。警察はコワルスキーの過去を突き止めるが、コワルスキーはベトナム戦争の英雄であり、一時は警察官でもある人物だったので、現在の彼の行動には不可解な点が残っていた。そして最終目的地であるカリフォルニアの警察は、ブルトーザーで道路を封鎖してコワルスキーの暴走を止めようと画策する。
レビュー
1971年にアメリカン・ニューシネマのスタイルをとったカーアクション映画として公開されたのが、この「バニシング・ポイント」です。2023年3月3日から日本では4Kデジタルリマスター版として50年ぶりの劇場公開がされていますが、今回、日本で2017年に発売された廉価版Blu-rayを入手しましたので、それで鑑賞しています。映画の興行収入としては製作費を大きく上回り成功を収め、映画としての評価もRotten Tomatoesの批評家評価は79%、観客評価は81%と高評価を得ています。
物語は、主人公コワルスキーが運び屋として車のチャレンジャーをデンバーからサンフランシスコまで15時間で運ぶという賭けをして、チャレンジャーを暴走させるが、警察の妨害に遭うという話的には単純な展開の内容になっています。賭けがコワルスキーの行動の動機ではありますが、それがチャレンジャー暴走の動機としてはかなり弱く、コワルスキーが何を求めてチャレンジャーを走らせていたのかが今ひとつ見えづらい作品になっています。コワルスキーの過去も物語の途中でフラッシュバックや警察の捜査で調べた経緯で明らかにしていますが、それもコワルスキーの暴走の動機として見るにはきついものがあります。結局コワルスキーは体制からの自由を求めて暴走していた、としか見えないような作風になっています。
それを象徴しているのが、ネバダでラジオDJをしている黒人のスーパー・ソウルの存在だと思います。彼とラジオ局のスタッフは警察無線を無断で傍受していてコワルスキーの暴走事件のことを知り、コワルスキーを応援するための発言やアドバイスをラジオで流してしまいます。スーパー・ソウルが黒人であることもあってか、やはり体制側の警察に対する反発心が描写として存在していて、コワルスキーに対するフォローをしてしまっているように見受けられます。また、ラジオを聞いた市民たちもコワルスキーを応援するような心境になっていき、反警察の立ち位置になっていくところは、この映画の骨格ではないかと思います。
コワルスキーは暴走の途中で様々な市民と出会いますが、彼を助ける者がいたり、助けない者もいたりと様々です。ただ、1971年当時のカウンターカルチャーを象徴するかのような市民が数多く出てくるのは、時代背景的にうなづけるものがあります。宗教にハマる市民や、ゲイの市民、覚醒剤をキメる市民など、多彩なカウンターカルチャーを描くことで、時代の雰囲気を表していると思います。
コワルスキーが州を跨いで運び屋を続けるため、警察も州の管轄が変わるごとに違う州の警察が威信をかけてコワルスキーの暴走を止めようとしますが、警察ではコワルスキーの暴走を止めることができません。コワルスキーの過去ではレーサーだったこともあるのでドライブテクニックはかなり上手く、並の警察では手に負えない存在になってしまいます。そして、カリフォルニア州の警察では、サンフランシスコでブルトーザーによるバリケードを張り、コワルスキーの暴走を止めようと画策します。それがラストのアメリカン・ニューシネマっぽい唐突な終わり方につながっていて、テンションがブツっと切れたかのような終わり方をします。
ラストの余韻も何もない終わり方を含め、やはりアメリカン・ニューシネマのスタイルに則って作られたカーアクション映画だな、と改めて実感するところであります。コワルスキーが体制に負けるという展開は、まさに様式美であり、その身も蓋も無い終わり方はこの時代でなければできない力技だと思います。
映像は2K/SDRで収録されています。日本では4Kデジタルリマスターのデータを作ったようですが、このBlu-rayは4Kデジタルリマスターのデータを作る前にBlu-ray用にHDスキャンを行ったマスターであり、HD画質としてはシーンによってばらつきはあるものの、総じて良好な画質を提供しています。フィルム自体の粒子が画面に現れていますが、HD画質としての解像度は良好だと思います。色彩管理はBlu-rayの標準管理であるSDRであるので、飛び抜けてカラフルではないですが、乾いた色彩は映画の雰囲気を表すのに適切であると思います。
音響はオリジナルはモノラル音声でしたが、DVDリリース時に5.1chのマスターを作ったのか、このBlu-rayではdts HD-MA 5.1chのサラウンド音声にアップグレードしています。環境音がサラウンドすることはないのですが、車やバイクがチェイスするシーンでの移動感は効果を上げていて、迫力ある音響を提供しています。テレビ放映時の日本語吹き替え音声も収録しているのが特徴で、一部シーンは未収録ですが、82分間分はdts 5.1chの日本語吹き替え音声が収録されています。
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