STAR TREK:STRANGE NEW WORLDS SEASON 1(Blu-ray)/スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド シーズン1/輸入盤DVDで見た映画のレビュー

STAR TREK:STRANGE NEW WORLDS SEASON 1(Blu-ray)/スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド シーズン1/輸入盤DVDで見た映画のレビュー

ディスク仕様

STAR TREK:STRANGE NEW WORLDS Blu-rayジャケット 邦題 スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド
レーベル CBS HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2022年
上映時間 524分
監督 アキヴァ・ゴールズマン他
出演 アンソン・マウント、イーサン・ペック、レベッカ・ローミン
画面 2.39:1/SDR
音声 dts-HD MA 5.1ch 英語/DOLBY DIGITAL 5.1ch フランス語
字幕 英語、フランス語

あらすじ

STRANGE NEW WORLDS

まだ、惑星連邦がファースト・コンタクトを果たしていないケリー279惑星を密かに調査中だったエンタープライズの副長であったウナは、ケリー279惑星上で突如連絡を絶ってしまう。惑星連邦は事態を重く見て、地球で休養中だったクリストファー・パイクに調査に出かけるよう指示する。パイクはエンタープライズがメンテナンス中であることを理由に断ろうとするが、命令には逆らえなかった。パイクは同じくヴァルカンで婚約者と交流していたスポックにも連絡をとり、エンタープライズで事件の真相を調べるべく、ケリー279惑星に進路を向ける。ケリー279惑星にたどり着いたエンタープライズは、ケリー279惑星がワープドライブを応用した攻撃兵器を開発製造している事実を知る。そして、そのために社会情勢も不安定になっていた。パイクは、以前見た幻覚で将来自分が負傷し、動けなくなるという恐怖と闘いながら、ケリー279惑星にケリー人の変装をしてスポックや新しい副長と共に潜り込み、ウナの救出と、ケリー279惑星の社会情勢安定に向けて動き出す。

CHILDREN OF THE COMET

エンタープライズは、ワープドライブ開発前のデレブ人の惑星付近を通過する彗星の調査に当たっていた。調査中、彗星のコースが惑星と衝突をし、惑星自体が破壊されるという予測を見出す。そのため、パイク艦長たちは彗星の進路を変えて惑星衝突を回避しようと、光子魚雷を惑星に打ち込むが、彗星にはなぜかフォースフィールドが張られていた。そのため、進路を変えることができなかった。彗星を調査するために、スポックやウフーラたちが彗星に上陸することになる。士官候補生のウフーラにとっては、初の上陸調査になった。彗星の内部には卵のような構造物があり、何か規則性のある記号が書かれていた。それに近づいたカークは攻撃を喰らい、意識を失ってしまう。そして、また彗星がフォースフィールドを張り、上陸班の回収ができなくなる。更にシェパードという異星人が現れエンタープライズを攻撃する。シェパードは彗星であるマハニートの守護神であり、マハニートに触れることは罷りならん、とパイクたちに警告する。彗星の内部に閉じ込められたウフーラは、歌を歌いながら調査していたが、その歌にマハニートが反応して、マハニートからのメッセージとして周囲に発信をしていた。スポックはウフーラの歌にマハニートが反応することから、脱出の手段を思いつき、ウフーラと共に歌を歌い出す。そして、歌に反応してフォースフィールドを解除したマハニートからスポックたちは脱出する。シェパードからの攻撃に耐えるエンタープライズは、マハニートに触れずにマハニートの進路を変える手段を思いつき、実行に移す。

GHOSTS OF ILLYRIA

エンタープライズは、イリリア人のいた惑星の調査をしていた。イリリア人は惑星連邦に加入したがっていたが、惑星連邦の規則で禁止されている遺伝子操作による人種改良を行なっていたため、加入を断られていて、彼らの存在そのものが消えてしまっていた。惑星の地表でイリリア人の遺伝子操作の資料を収集していたパイク艦長を含めた上陸班は、エンタープライズに転送で帰還しようとするが、イオン嵐の影響で転送バッファが足りず、パイクとスポック以外の上陸班が帰還できたのみだった。上陸版のクルーたちは、エンタープライズに戻ってから、奇妙な行動を起こすようになり、医務室で検査を受けるが、ビタミンDの存在がない以外は健康そのものだった。帰還できた副長も体に異変は起こるようになる。そして、上陸班だけだった奇妙な行動行為は、いつの間にかエンタープライズの全クルーに広がり、艦内はパニックになる。ドクターとチャペル、副長の調査により、奇妙な行動を起こすクルーには、光を当てると落ち着くことから、イリリア人の調査の時に光によってウイルスが伝染していることが明らかになる。その頃、地表に取り残されたパイクとスポックは、イオン嵐が収まるのを待ちつつ、調査を継続していたが、光の状態になったイリリア人が彼らに襲いかかってきた。

MEMENTO MORI

エンタープライズは、フィニバス3号星に補給物資を届けに行った。しかし、フィニバス3号星には生体反応はなく、惑星の周回軌道上にシャトルがいて、そこにフィニバス3号星の生き残りがわずかにいるだけだった。シャトルから生き残りを転送できなかったため、ドッキング・ベイで生き残りを救助したエンタープライズは、生き残りから事情を聞くと、炎の雨が降り注いで、住人たちを抹殺していった、と話していた。それを聞いたセキュリティオフィサーのラアンは、過去の記憶から異星人であるゴーンの仕業だと判断し、エンタープライズに危機が迫っていることをパイクに通告する。しかし、時既に遅しでゴーンの乗船している宇宙艦はエンタープライズに攻撃を仕掛け、エンタープライズはまともな航行もできない状態になり、反撃も無理になってしまった。フィニバスの恒星の重力の中に隠れて、センサー類を誤魔化したエンタープライズは、ゴーンの追撃をかわす方法と、重力の中で押しつぶされそうになる中、どう体勢を立て直すかが議論になっていた。一発だけ残った光子魚雷をゴーンの宇宙艦に落として撃退したエンタープライズだが、さらに追加のゴーンの宇宙艦が近辺を探索し始め、エンタープライズは危機から脱出できなくなる。ゴーンの手口を知っているラアンは、スポックと共にゴーンについて調査し、エンタープライズの危機を脱する方法を考える。

SPOCK AMOK

ゴーンの攻撃を受けて破損したエンタープライズは、スペースドックに入港し、修理を受けていた。その修理の間、クリンゴンとの戦争から引き続き任務についていて疲労の溜まっていたクルーたちは、休暇をとっていた。スポックは婚約者のトゥプリングと再会し、バルカンの儀式を執り行うが、その過程で魂が入れ替わり、スポックの体の中にはトゥプリングの魂が、トゥプリングの体の中にはスポックの魂が入ってしまう。その頃、連邦と同盟の交渉をしにきていたクリンゴンとロミュランの間に母星のあるロンゴヴィア人が、なぜかパイク艦長とだけ交渉に応じる、と宣言をしたため、パイク艦長自らが交渉に応じていたが、途中からロンゴヴィア人はスポックとだけ交渉に応じる、と態度を変えてしまったため、魂がトゥプリングである姿格好がスポックが交渉をせざるを得なくなり、一波乱が起きる。その頃、エンタープライズに残っていた副長とラアンは、下士官が「エンタープライズ・ビンゴ」と呼ばれるゲームに興じていて、エンタープライズの警報を鳴らしていたために、下士官を注意し、「エンタープライズ・ビンゴ」で何が起きるのか、実験していた。

LIFT US WHERE SUFFERING CANNOT REACH

エンタープライズは、マジャラン星系に接近していた。マジャラン星系は連邦の領域のはずれにあり、パイク艦長は昔ここを訪れていた。星系に接近したエンタープライズは、シャトルが謎の船に攻撃を受けているのを発見し、謎の船の攻撃を止めようとするが、その船は破壊されてしまい、惑星に墜落する。攻撃を受けていたシャトルから搭乗者を転送で救助したパイク艦長は驚く。昔マジャラン星系を訪れた時に親しくなったアローラという大臣とガマールという男、そして彼の息子でありながらマジャラン星系の僕になるべく選ばれた子供がいたのである。墜落した船を調査していたラアンとウフーラたちは、ラアンの指示するセキュリティ・レッスンに従い、ウフーラは船の交信記録を手に入れる。謎の船の目的はまだ謎だったが、アローラ大臣とパイクの親密度は増し、パイクは子供の行く末について、疑問を呈することになる。それは、ガマールも同じで、彼は単に息子を救いたい、という信念に駆られていた。しかし、子供に対する僕になるべき儀式は着々と進み、謎の船の正体の判明や、儀式が進行することにより、子供が僕になるとはどういうことか、パイク艦長にもわかり始め、その行為を咎めるようになる。それでもアローラ大臣たちにとっては、その行為はマジャラン星系の安定のためには必要なことだった。

THE SERENE SQUALL

以前に魂の入れ替わったスポックとトゥプリングは、トゥプリングがスポックの持つ人間性について学ぶことになった。その頃、エンタープライズにはアスペン医師がやってきていた。エンタープライズは連邦の領域外で移民の乗った船の救援に向かうことになったが、そこには海賊がいて、エンタープライズが連邦の他の船に救援を求めても、時間がかかる場所だった。それでも、救難信号を受けた以上、救助に向かうのがエンタープライズの使命だった。連邦の領域外にきたエンタープライズは、隕石群の中に突入するが、そこにはレーザーで作られた網が仕掛けられていた。罠にハマったエンタープライズだが、パイク艦長とスポックの判断により、レーザーの網は掻い潜る。そして、移民を乗せた船を見つけたので、パイク艦長たちは移民船に転送で乗り込むが、移民たちはおらず、海賊たちがパイクを待ち受けていた。それと同時に、エンタープライズにも海賊は乗り込んできて、副長たちの防戦も空しく、エンタープライズは海賊たちに制圧されてしまう。海賊たちの目を掻い潜ったスポックとアスペン医師、チャペルは、副長が発したセキュリティロックを解除し、救助を待とうとするが、実はアスペン医師自身が海賊のリーダーであり、エンタープライズは完全に掌握されてしまう。その頃、移民船で海賊に囚われの身になったパイク艦長たちは、反乱を起こそうとしていた。

THE ELYSIAN KINGDOM

エンタープライズのドクター、ムベンガは、娘のルキヤに物語を話ししていた。ルキヤは難病にかかっていて、現実の世界では長く生きられないので、ムベンガは医療室のバッファーにルキヤを転送し、命を長らえさせていた。エンタープライズは星雲の調査をしていて、その調査も終わり宇宙基地に帰ろうとしていたが、ワープドライブは作動せず、インパルスエンジンを動作させようとした時に衝撃が走り、オルテガが負傷する。パイク艦長の命令により、負傷したオルテガの手当てのためにムベンガはブリッジに向かうが、彼が見た物はエンタープライズのクルーそのものではなく、彼がルキヤに語っていた物語の登場人物たちに扮しているのだった。何が起こったのかわからず混乱するムベンガだったが、次第にルキヤに語った物語の展開に沿ってクルーたちが意識を乗っ取られ、行動をしていることに気づく。そして、ムベンガが扮しているリドリー国王の配下の魔法使いがエンジニアリングのハマーであり、彼もまた、意識を乗っ取られずに正気でいた。ムベンガは、彼の国を乗っ取ろうとするナーヴという女王率いる王国と対峙し、ナーヴはムベンガが所有するマーキュリー・ストーンという魔法の石を手に入れようとする。ムベンガは、事態を収束させようと、ハマーと共にマーキュリーストーンとは何かを探し始めるが、それは意外な人物にあった。

ALL THOSE WHO WANDER

エンタープライズに士官候補生として派遣されていたウフーラは、訓練が終了し、めでたく士官になった。エンタープライズはパワーセルを届けに行くために、宇宙基地K-7に向かっていたが、USSペレグリンからの救難信号を受け、USSペレグリンのクルーを救いにシャトルを飛ばして、連邦未開の地へと赴く。USSペレグリンが墜落したのは環境の厳しい惑星であり、生存者のライフサインは見つからなかった。USSペレグリンのそばにはクルーの死体と大量の血が残されていた。調査を続けるパイク艦長たちだったが、2つのライフサインを見つける。一つは人間の少女のものであり、もう一つはユニバーサル・トランスレーターを使っても会話の不可能な異星人だった。その二人を手当てしていたチャペルは、異星人の身に異変が起こるのに気づく。異星人の体から血が出血し、体内からエイリアンの幼体が飛び出してきたのである。同じ頃、クルーの一人も同じくエイリアンの手にかかって死亡してしまう。そして、エンジニアリングのハマーはエイリアンの体液を浴びて、体の中にエイリアンの卵を抱えてしまう。そのエイリアンのことをラアンはゴーンと呼び、彼らにかつて家族を殺されたために復讐に燃えていた。ゴーンを退治するためには、USSペレグリンの艦内を冷却化させる必要があり、パイクたちはゴーンを始末するための行動を起こす。

A QUALITY OF MERCY

エンタープライズは、ロミュランとの中立地帯近辺にある前哨基地に赴いていた。その前哨基地には連邦の他の船もやってきていたが、艦長の息子であるマットという少年を見かけたパイクは衝撃を受ける。パイクがディスカバリーとの共同任務をしていた時に見た、パイクの将来の事故の時に居合わせた士官の一人がマットの成長した姿だったからである。運命から逃れられないと感じたパイクは自室に戻るが、そこには未来のパイクがいて、彼にもし、事故に遭わなかったらどうなるか、という別の時間軸の未来を見せることになる。その時間軸ではパイクは事故には合わなかったが、副長のウナはおらず、セキュリティチーフのラアンも別の艦の艦長になっていた。そして、その時間軸ではロミュランによる前哨基地への攻撃がなされており、そこに居合わせた連邦の船はロミュランのバード・オブ・プレイに撃沈される。そして、エンタープライズもバード・オブ・プレイの攻撃を受け、フェイザーが沈黙する。ただ、エンタープライズは連邦に救援を求めていて、USSファラガットが救援に訪れる。艦長は、ジェームズ・T・カークだった。パイクとカークは検討の上、ロミュランのバード・オブ・プレイがロミュラスに帰るのを阻止しようと作戦を練るが、ロミュランの作戦の方が上手で、USSファラガットは撃沈してしまう。パイクはバード・オブ・プレイに手傷を負わせ、その上で交渉を図るが、ロミュランとの駆け引きの中でパイクは事態をどう打開するか、追い詰められていく。

レビュー

STRANGE NEW WORLDS

「スター・トレック:ディスカバリー:シーズン2」でゲスト出演していたアンソン・マウントやイーサン・ペックといった俳優たちを起用して、「スター・トレック:宇宙大作戦」で描かれたカーク船長率いるエンタープライズの宇宙の冒険のその前の時代で、クリストファー・パイクがエンタープライズの艦長を務め、宇宙での新たなる冒険を描いたシリーズが、この「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」です。「スター・トレック:ディスカバリー:シーズン2」で描かれた出来事がベースになっていますので、パイク艦長が将来自分の身に起こるであろう事故の幻覚に怯えたり、スポックが将来トラブルの元になるヴァルカン人女性との婚約や、エンタープライズには「スター・トレック:宇宙大作戦」でもレギュラー出演していたウフーラやチャペルといったキャラたちが登場して、カーク船長の前の時代のエンタープライズの世界観を作り出すことに成功しています。物語は、惑星連邦にとってまだファースト・コンタクトをしていないケリー279惑星で連邦の宇宙艦が連絡を断ち、その真相究明のためにパイク艦長率いるエンタープライズがケリー279惑星に密かに赴き、ケリー279惑星で起きている危険な問題を解決していく、というスター・トレックらしい展開が繰り広げられていきます。シリーズ物ではありますが、基本的に1話完結で進むようですので、話的には見やすいと思います。2022年の映像テクノロジーで、1966年当時の「スター・トレック:宇宙大作戦」の世界観を生み出しているので、かなり面白い映像表現になっています。日本では2023年4月22日現在、配信される見込みがないので、この輸入盤Blu-rayで視聴するのが妥当かなと思います。

CHILDREN OF THE COMET

今回のエピソードは、士官候補生であるウフーラが重要な役割を果たすエピソードであり、彼女が主役の話でもあります。物語冒頭でパイク船長の食事会に呼ばれたウフーラが、自身の言語解析能力を披露する場面がありますが、30ヶ国語以上の言語を習得している、という経歴には、その後の展開で生きてきます。物語自体は、発展途上の文明を持つ惑星のそばを通過する彗星が、進路を惑星に向けて進み、惑星と衝突して惑星自体を破壊するという予測をエンタープライズが出したことから、彗星の進路を変えて惑星を助けようとする、という展開ですが、彗星はただの彗星ではなく、未知の文明を持った生命体の生み出したものであり、それを守護するシェパードという異星人も登場してエンタープライズを危機に陥れる、という結構手に汗握る展開になっています。そして、その危機に陥ったエンタープライズを救う鍵が、ウフーラの歌う歌にあった、という予想外の展開で、事件解決に向かうというユニークなストーリーになっています。1話完結物語なので、事件は無事解決し、発展途上の文明が住む惑星の気象状況も変化して進化の過程を辿りそうな展開には、「スター・トレック」らしいストーリーになっています。まだ、新キャラクターに慣れない部分はありますが、シーズンを通じてのストーリーではない分、気軽に視聴できます。

GHOSTS OF ILLYRIA

今回のエピソードは、遺伝子操作によって人種改良を行なっていたために、惑星連邦への加入を断られていたイリリア人の調査をしていたエンタープライスのクルーが、伝染病に感染し、それがエンタープライズのクルー全員に広がり、パニックになる中、副長がキーとなって、病原体根絶のために動く、という副長がメインキャラクターとしてストーリーが展開されるものであります。惑星連邦が遺伝子操作を行っていたイリリア人の惑星連邦への加盟を断っていたのは、「スター・トレック:宇宙大作戦」で描かれた遺伝子操作によって生まれた優生人類であるカーンが、地球を支配しようとしたという過去があることから、遺伝子操作による人種改良を禁じているという設定があるためであり、「宇宙大作戦」以降もしばしばこのテーマは語られていきますが、このエピソードでは、遺伝子操作による人種改良をしていたイリリア人の改良の結果生まれたウイルスによって、エンタープライズが危機に陥る、というある種のパンデミックを描いた緊迫感あふれる展開になっています。そして、副長の出生の秘密もラストで明らかにされ、彼女がパンデミックに陥ったエンタープライズをどう救うのかが、物語のコアを占めています。パイクとスポックは惑星に取り残されて、救助を待つばかりですが、この二人もそれぞれ異常な体験をして、イリリア人の過去を知ることになり、物語は綺麗に終わっていきます。展開的にはかなり面白いものになっていると思います。

MEMENTO MORI

今回の話は、危険な異星人ゴーンの策略にハマったエンタープライズが、どうその危機から逃れるかというテンション上がる話であります。ゴーンといえば、「宇宙大作戦」で、カーク船長が戦った異星人としてお馴染みですが、今回のエピソードでは姿を表しませんので、同一の異星人だと思いますが、その真相はまだ闇の中にあります。今回の話のメインキャラクターは、セキュリティチーフのラアンで、彼女は幼い頃にゴーンによって襲われ、心に深い傷を負っているという設定で、ゴーンの手口を熟知しているため、エンタープライズの危機に対し、パイクに指示を出すような活躍を見せています。また、ゴーンの攻撃によって、副長が負傷し、戦線離脱しているため、ラアンが副長の代わりを務めるという展開にもなっていて、その辺りのキャラクター設定も面白いものになっているかと思います。一方で、負傷したアンドリア人のハマーとウフーラが協力してエンタープライズの不具合を直していく、という展開も、キャラクターの内面掘り下げに貢献しているものであり、親しみが湧くような設定になっているかと思います。最終的にはゴーンの追撃を逃れ、エンタープライズは危機一髪の状態から脱するのですが、そのクライマックスに向けての盛り上がりは、なかなか面白いものがあり、後の「宇宙大作戦」に繋がるエピソードとして、エキサイトする内容になっています。

SPOCK AMOK

このエピソードは、メインがスポックになっていて、スポックと彼の婚約者であるトゥプリングの魂が入れ替わってしまったために起きる騒動を描いた、ユニークなストーリーになっています。話も、前エピソードでゴーンとの戦いで破損したエンタープライズがスペースドックに入っているために、どこか別の惑星や星系に行く話ではなく、休暇をもらったクルーたちの楽しげな様子を描いた息抜きエピソードになっていて、気楽に見ることができます。もちろん、前述のように、スポックと婚約者のトゥプリングの魂が入れ替わってしまったために起きる騒動というのもありますし、連邦と同盟を組もうとするクリンゴンとロミュランとの間に位置する惑星に住むロンゴヴィア人との交渉ごとが、最初はパイク艦長とだけだったものが、途中からスポックとだけ交渉をする、と態度を変えてしまったために、魂がトゥプリングであるスポックが交渉せざるを得ないというギャグが織り込まれていて、楽しいです。そして、エンタープライズに残った副長とラアンが、下士官の間で行われている「エンタープライズ・ビンゴ」というゲームの正体を暴くべく、ゲームに興じる、というのも結構笑えます。総じて、ユニークな展開のエピソードであると言えるでしょう。

LIFT US WHERE SUFFERING CANNOT REACH

今回のエピソードは、かつてパイク艦長がまだ下士官だった時に訪問し、親しくなっていたマジャラン星系のアローラという女性大臣との再会と親密度の増加、そしてマジャラン星系を安定させるために必要な僕としての子供に対する儀式の執り行い、そして、その子供に何が起きるのかを描いたテーマ的には重たい話であります。マジャラン星系を安定させるために、生贄としての僕である子供が必要ということで、ガマールという男の実の息子が選ばれし者になるのですが、ガマールを含め、マジャラン星系の人の中には子供が僕になるのに拒絶反応を示しているところもあり、その中でマジャラン星系の人々の一部には対立関係を結ぶ人もいます。そうした中で、パイク艦長は子供が僕になるということはどういうことなのかを知ることになり、その事実に連邦の規約から反論しますが、連邦に加入していないマジャラン星系の人にはその言葉は届かず、重いラストが待っています。スター・トレックのエピソードの中では、考えさせられる内容に仕上がっていると思います。

THE SERENE SQUALL

このエピソードは、エンタープライズの危機と、スポックの持つ人間性について語られた興味深いエピソードになります。連邦の領域外で救難信号を発している移民船を救助するためにエンタープライズは危機を冒して進行するのですが、そこには海賊が待ち受けていて、エンタープライズが危機に陥るという話です。もちろん、話のメインキャラクターはスポックなので、彼の持つ人間性と、それに付け込む海賊のリーダーアスペンとのやりとりが、物語を重厚かつ面白い展開にしています。海賊たちに乗っ取られたエンタープライズをどうスポックやパイク艦長が奪還するかというクリフハンガー物になっていますが、「宇宙大作戦」でも語られていたチャペルのスポックへの想いが、このエピソードでは存分に発揮され、海賊たちの狙いをスポック自らが打ち砕いてしまうところは、想定外の話でもあると同時に、「宇宙大作戦」でのスポックとチャペルの淡い恋がこのエピソードでも描かれるところに、興味を掻き立てられるところがあります。スポックとチャペルの淡い恋の姿をトゥプリングはエンタープライズ奪還のためとはいえ目の前で見せられるわけですが、スポックとトゥプリングの愛情は最終的には元に戻るわけで、その辺の描き方は微妙になっているかと思います。そして、スポックが最後に自分の身内について話をするときに、まさかのあるゲストキャラクターの話に言及するので、これは想定外でした。シリーズをずっと見てきている人にはわかるゲストキャラクターですが、ここでそれに触れるとは思ってもいませんでした。

THE ELYSIAN KINGDOM

今回のエピソードは、エンタープライズのドクター、ムベンガとその娘、ルキヤの親子愛を描いた物語であると同時に、エンタープライズが立ち往生して、ムベンガがルキヤに語っていた物語を現実の世界に映し出した星雲の中にいる意識だけの生命体とのコンタクトがメインの話になっています。このエピソードよりも前にムベンガと娘であるルキヤの話は少しずつ語られていましたが、ルキヤは病気によって長く生きられないので、ムベンガは医療室のバッファー内にルキヤを転送することで、ルキヤの命を長らえさせています。ムベンガはエンタープライズのドクターであると同時に一人の父親でもあるわけですが、このエピソードではその娘を思う気持ちが、物語の中心を貫いていると思います。星雲を調査していたエンタープライズは星雲から離れようとしますが、なぜかワープドライブは稼働せず、インパルスエンジンを稼働させようとしたところ衝撃が走り、航行士のオルテガが負傷したためにムベンガはブリッジに医療手当に向かいますが、そこで見たものは彼がルキヤに語っていた物語の世界そのものだった、という意外な展開から、物語のラストを終わらせるために、ムベンガはどう行動をとっていくか、試されることになります。ムベンガの他にもエンジニアリングのハマーも正気を保っていまして、二人で事態打開のために動きますが、それが星雲にいる意識だけの生命体とのコンタクトに発展し、ルキヤの命とも関わってくるというファンタジーの話と親子愛に関係する話とが融合した単独エピソードとしては魅力的な話であります。ラストのルキヤの運命については、いい感じに終わったのではないかなと思います。ムベンガのルキヤに対する愛情がよく現れたエピソードだと思います。

ALL THOSE WHO WANDER

今回のエピソードは、実は「MEMENTO MORI」でも描かれた姿を表さないエイリアン、ゴーンとの死闘を描いたスリラー物になっています。このエピソードでは、墜落したUSSペレグリンの数少ない生存者の中に、ゴーンの幼体を宿した者がいて、ゴーンが宿主から飛び出してきてエンタープライズのクルーを襲うというホラー映画的描き方をしています。それは、まるでSFホラー映画の名作「エイリアン」を彷彿とさせるものであり、今まで描かれなかったゴーンの生態を新たに構築することで、パイク艦長たちの危機をより恐怖感を煽るような形で、ストーリーは展開していきます。実際、幼体のゴーンは映画「エイリアン」の幼体と同じようなものであり、スター・トレックの世界観で「エイリアン」を描くとは思いもしなかったので、なかなかスリリングです。サラウンドも視聴者の背後にゴーンの物音等を配置する仕掛けを施しており、恐怖感が増すようになっています。その中で、ゴーンによって命を落とすクルーが何名かいて、このクルーが死ぬの?と驚く場面もあったりします。しかもどちらかというと主役級の人が。スポックが感情を露わにするシーンがあったり、士官候補生だったウフーラが正式に士官に昇格したりと、シーズン1ラストに向けて、見どころは満載のエピソードだと思います。

A QUALITY OF MERCY

シーズン1のラストは、大興奮のエピソードになっています。パイクが見た可能性の未来という設定をうまく使って、本来の時間軸にならば「宇宙大作戦」の「宇宙基地SOS」のエピソードで初登場するロミュランとの初対面を、パイク指揮下のエンタープライズとの初遭遇という展開に変え、言ってみれば「宇宙基地SOS」のリメイク的エピソードを作ってしまったのですから、ロミュランとの対戦が描かれることになり、それも「宇宙大作戦」では制作年度の制限から限られていた特殊効果シーンをふんだんに盛り込んで、ロミュランのバード・オブ・プレイとエンタープライズの駆け引きを存分に描写しています。それも可能性の未来上ではロミュランとの全面戦争に陥る一歩手前まで行くことになり、あくまで可能性の未来だから実際の世界とは違うとは言っても、その展開の激しさに度肝を抜かれます。さらに可能性の未来で後のエンタープライズの艦長になり、「宇宙大作戦」の主人公になるジェームズ・T・カークが登場し、彼がパイクと共に大活躍するので、ファン的にも楽しいエピソードになっています。そして、可能性の未来が終わった後の実時間軸でのラストの意外な展開に、次のシーズンへの布石が置かれていて、期待が持てます。久しぶりに1話完結展開になった「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」ですが、見ていて高い評価を与えられるシリーズだと思います。Paramount+が日本でサービスしないため、日本語字幕版、吹き替え版を見る機会があるのかどうか、現時点で全く未定ですが、日本で視聴できるようになったら、必見のシリーズだと思います。

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