AIR/エア(4K UHD/Amazon Prime Video)/Apple TVで観た映画のレビュー
配信仕様
Amazon Prime Videoで見る | 原題 | AIR |
レーベル | Amazon Studios | |
制作年度 | 2023年 | |
上映時間 | 114分 | |
監督 | ベン・アフレック | |
出演 | マット・デイモン、ベン・アフレック、ジェイソン・ベイトマン | |
画面 | 1.85:1/HDR10 | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
1984年、スポーツシューズのナイキは業績不振に陥っていた。ランニングシューズは売れているのだが、バスケットボールシューズはアディダスやコンバースに遅れをとっており、バスケットボールシューズ部門の縮小も検討していた。将来のバスケットボールスターを見出し、ナイキのシューズを履かせることでナイキのブランド向上を図っていたソニーは、高校生のマイケル・ジョーダンが将来スターとしてNBAで活躍することを見抜いて、ナイキ社内の会議で強引にマイケル・ジョーダンを推す。その熱意に負けた周囲も、マイケル・ジョーダンにナイキのシューズを履いてもらうよう行動を開始する。しかし、マイケル・ジョーダンのスター性を見抜いていたアディダスやコンバースもマイケルに接触を図って自社のバスケットボールシューズを履いてもらうよう交渉を続けていた。ソニーは、エージェントを通さずに直接マイケル・ジョーダンの両親と面会し、ナイキの利点を説得すると同時に、ナイキ内部でもマイケル・ジョーダン専用のシューズを開発するよう動きかける。そして、シューズメーカー各社がマイケル・ジョーダンに自社のシューズのプレゼンテーションを行い、ナイキにもその順番が回ってきた。ソニーたちは作戦を練り、ナイキが有利に働くようなプレゼンテーションを行う。
レビュー
「グッド・ウィル・ハンティング」で鮮烈な印象を残したベン・アフレックとマット・デイモンが再びタッグを組み、バスケットボールの人気選手だけにとどまらず、世界的現象を引き起こしたスター、マイケル・ジョーダンが履いているバスケットボールシューズ、「エア・ジョーダン」の開発秘話と、当時業績不振に陥っていたナイキがどのようにマイケル・ジョーダンと契約して業績を立て直していくかを語った、実話に基づく映画が、この「AIR/エア」です。Amazonが制作を担当し、自社の配信サービス、Amazon Prime Videoで配信するために劇場公開をした作品になっています。配信ありきで劇場公開したためか、興行収入は全世界でも90百万ドルという製作費を上回ることはできませんでしたが、映画自体の評価は高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は92%、観客評価は98%と極めて高い評価を得ています。
物語は、実話を映画化したために、知られざるナイキの人気シューズ、「エア・ジョーダン」の誕生秘話と、1984年当時経営不振に陥っていたナイキがどのように将来スターになるマイケル・ジョーダンにナイキのシューズを履いてもらう契約を交わしたのかを、契約担当の主人公ソニーの活躍と共にナイキの奮戦ぶりを描いたサクセスストーリーになっています。ソニーが目立つ作品になっていますが、最終的にはナイキのブランド向上がどのようなプロセスでなされたのかが克明に描かれているために、ストーリー的に飽きさせることがありません。
ソニーは、まだNBAで活躍していない将来のスターに対して、ナイキのシューズを履いてもらい、ナイキのブランド向上を図るスカウトの役割を果たしていますが、そのソニーがマイケル・ジョーダンの将来性を見抜き、彼にナイキのシューズを履いてもらうために、なりふり構わぬロビー活動を行う様は、一種の爽快感すら感じます。マイケル・ジョーダンにはライバル会社のアディダスやコンバースもアプローチを仕掛けていますが、ソニーはエージェントを通さずに直接マイケル・ジョーダンの両親に面会し、プレゼンテーションを行うという荒技まで使って、マイケル・ジョーダンにナイキのシューズを履いてもらうという交渉を行うので、その行動ぶりに驚きます。
マイケル・ジョーダンにシューズを履いてもらうためには、マイケル・ジョーダン本人の意思の他にも特に母親の意向を無視することもできず、ソニーはマイケル・ジョーダンの母に対して積極的なアプローチを仕掛けるわけですが、そこには黒人家庭では母親が権限を持つ、という慣わしがアメリカでは延々と続いているという伝統もあり、その辺を知ったのは、映画ならではの表現だと思います。
映画の中ではマイケル・ジョーダンの姿をまともに映した場面が全くありません。家族と共に登場はするのですが、ずっと背後の姿のみで、真正面から映した場面が全くないのは、マイケル・ジョーダン自身の肖像権に関わる問題なのかなと感じるところもあります。マイケル・ジョーダン本人の映像はバスケットボールのNBAの試合等ではきちんと映し出されていますので、ドラマ部分での暈し方は、前述のような配慮があったのでは、と思います。
マイケル・ジョーダンにナイキのシューズを履いてもらうために、ナイキ内部でマイケル・ジョーダン専用のシューズ「エア・ジョーダン」を開発する展開もなかなか興味深い内容です。NBAの規定を破ってでも「エア・ジョーダン」を独特の表現にしようと奮戦するナイキ社員たちの活躍は、見ていて面白いところがあります。
物語は1984年の設定なので、流れる映像やBGMが1980年代のヒット作や楽曲というのも、映画の時代性を強調していると思います。ある意味懐メロ的雰囲気を表しているとも言えますが、映像表現と共に栄光の1980年代を描き切っているかと思います。
映像は4K/HDR10で配信されています。マスターデータは4Kですので、ネイティヴ4Kでの配信になります。そのため、解像度は高精細の映像になっており、映像に没頭できる仕掛けになっています。ただ、映画自体はDOLBY VISIONで収録されているようですが、Amazon Prime VideoではDOLBY VISIONではデリバリーされていないようで、HDR10であろうと思われます。そのHDR効果があまり出ていないようで、どことなく色褪せた感じのする色彩になっています。1984年という時代を表現はしているとは思いますが。
音響はDOLBY ATMOSで収録されています。物語はナイキ社内内部で展開されることが多いせいか、思ったほど環境音が鳴っていないのですが、BGMとして流れる1980年代のヒット曲の数々はオブジェクトとしてリスナーの周囲で鳴り響き、ソニーがマイケル・ジョーダンの母と面会するシーンでは屋外の環境音が三次元的に広がる感覚を味わえますので、映画としての効果は発揮されていると言えます。
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