アバター(4K UHD/Disney+)|Apple TVで観た映画のレビュー
配信仕様
No Image | 原題 | AVATAR |
レーベル | 20世紀スタジオ | |
制作年度 | 2009年/2022年 | |
上映時間 | 162分 | |
監督 | ジェームズ・キャメロン | |
出演 | サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーヴァー | |
画面 | 1.78:1/DOLBY VISION | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
近未来、人類は地球の環境を破壊してしまい、他の惑星への進出を図っていた。人類のうちの一団は惑星パンドラに進出し、パンドラに眠る貴重な鉱物を産出しようとしていた。しかし、パンドラにはナヴィという種族が自然と共存して生活していて、鉱物の産出には彼らの存在は邪魔だった。人類はナヴィと同じ姿格好をしたアバターを作り出し、ナヴィたちを自然に排除しようとしていた。海兵隊員のジェイク・サリーは事故で下半身付随になっていたが、アバター・プロジェクトに参加する予定だった彼の兄が事故死したために、代わりにパンドラに来てアバター・プロジェクトに参加し、ナヴィたちの排除を推し進めるべく動くことになる。しかし、アバターになったジェイクはナヴィの一人であるネイティリと出会い、彼女からナヴィの生活や言語を学んでいくうちにナヴィの生活に溶け込んでいき、彼らの排除は正しくないことだと思い始める。ジェイクの行動が役に立たないと悟った軍のリーダー、クオリッチはナヴィたちを強引に排除して鉱物を産出すべく、軍を動かしてナヴィたちを攻撃する。それを知ったジェイクはナヴィたちを守るためにクオリッチたちと戦い始める。
レビュー
2009年に公開され、全世界的に大ヒットを記録し、29億ドル以上という全世界の歴代興行収入第一位を記録し続ける作品が、この「アバター」です。2009年に公開された時にはIMAXデジタルシアターの3Dでの上映に観客が押し寄せ、皆、惑星パンドラの世界観に虜になったものですが、今回、続編の「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」のビデオ化に合わせて、この「アバター」も4Kリマスターでビデオ化されています。映画の評価も比較的高く、Rotten Tomatoesの批評家評価、観客評価とも82%と高水準を得ています。
ストーリー自体はそんなに斬新なものではありません。これまでも未開の種族と出会って、その生活に魅了され、未開の種族の立場に立って行動を起こす主人公という話は数えきれないほど制作、公開されています。しかしながら、この「アバター」の独自性は、舞台となる惑星パンドラとそこに生活するナヴィの生命観を完全なまでに作り込んでいて、その独自性故に描いた世界観に魅了され、取り込まれる観客が続出したところにあると思います。実際、今回4Kリマスター版を見ましたが、パンドラの世界観の美しさには、過去何回も見ているにも関わらず魅了され、取り込まれる感覚を覚えています。
もう一つ、この「アバター」は主人公ジェイク・サリーの新たな人生のやり直しの物語であると言ってもいいかと思います。もと海兵隊員でありながら、事故のために下半身付随になってしまったジェイクは、兄が事故死したために兄の代わりに惑星パンドラにやってきて、アバターを使ってナヴィの生活に溶け込んでいくわけですが、そこには現実の身動き取れない体からの解放と、現実の地球では目にすることのできない広大なパンドラの自然との調和を図るナヴィの生活に馴染んでいく、という一つの人生が終わり、別の人生が始まる展開にもなっています。それは、ジェイクにとっては幸せな選択であったと思います。パンドラの鮮やかな環境と、人類が住む無機質な基地での生活とどちらを取る、と言われたら、どう考えてもパンドラの環境を取る、という選択をするでしょう。
物語ではセリフでしか語られていませんが、地球は環境汚染のために環境破壊されているという設定があるために、惑星パンドラの鉱物を採掘しようとする人類たちは、映画の中では悪役の立ち位置で描かれています。自分たちの利益優先で行動するクオリッチを始めとする人類たちの行動は愚の骨頂ではあるのですが、これが映画の中だけでなく、現実の世界でも人類が同じようなことを繰り返し行なっていて、地球環境自体が狂いだしているのは、映画と現実をリンケージさせる重要な要素であり、現在の人類が行なっていることに対するジェームズ・キャメロンからの警鐘であると言ってもいいでしょう。
映像は4K/DOLBY VISIONで配信されています。2009年の公開時には2Kマスターだったはずですが、2022年の再公開時には4KにリマスターされたDIを作っており、そこからの4K UHDになります。一応アップスケール4Kではありますが、マスターの質を考えるとネイティヴ4Kと言ってもいいのではないかと思います。マスター自体を4Kにしたため、映像は相当高精細な解像度を提供しています。それだけで魅力的なのですが、DOLBY VISIONによるHDR効果は素晴らしく、惑星パンドラの美しい描写を余すことなく描写していて、DOLBY VISION対応の4Kテレビで視聴すると惑星パンドラの世界観に浸ることができます。また、画面のアスペクト比が1.78:1と4Kテレビの画面表示領域一杯に映像が広がるので、映像に対する没入感はすごいものがあります。
音響はDOLBY ATMOSで提供されています。2009年当時は5.1chサラウンドでしたので、2022年リマスターの時にミックスし直しています。そのイマーシヴサラウンド感は素晴らしいものがあり、完全に映像に同期したオブジェクトが視聴者の周囲を動き回ります。木が倒れる時には視聴者の方向に木が倒れる音がしますし、人類の乗るヘリコプターのローター音は頭上に定位して登場キャラの立ち位置を確認したりします。それだけでなく、惑星パンドラの自然の環境音は視聴者を見事に取り巻いていますし、素晴らしいサラウンドだと思います。ただ、ダイナミックレンジ圧縮のせいか、迫力は今一つな部分はあります。
このDisney+での「アバター」や「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の配信は、変なところがあります。使用音声で「DOLBY ATMOSで提供されている」と書いていますが、通常の視聴ではDOLBY DIGITAL 5.1chしか提供されていません。DOLBY ATMOSで視聴したい場合は、Disney+のアプリの「設定」から「プロフィールの変更」に入って、「アプリの使用言語」を「日本語」以外に変更する必要があります。日本語以外の使用言語にすると、当然メニュー画面は日本語ではなくなりますが、映画は日本語字幕、吹き替え音声を選択できますので、映画自体は問題なく視聴できます。これで分かったのは、Disney+は「アバター」の配信で日本語メニューの時と、そうでない時とで別のデータを用意しているという奇妙なことをしているという事実です。なぜ、グローバルなデータを日本語メニューで使わないのかは謎ですが、映画をDOLBY ATMOSで楽しみたい人は要注意です。
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