TOTAL RECALL(1990)(4K UHD Blu-ray)|トータル・リコール|輸入盤DVDで観た映画のレビュー

ディスク仕様

	邦題	トータル・リコール
	レーベル	LIONSGATE ENTERTAINMENT
	制作年度	1990年
	上映時間	113分
	監督	ポール・ヴァーホーヴェン
	出演	アーノルド・シュワルツェネッガー、レイチェル・ティコティン、シャロン・ストーン
	画面	1.85:1/DOLBY VISION
	音声	DOLBY ATMOS 英語/dts 2.0ch 英語/dts-HD MA 5.1ch フランス語/PCM 2.0ch スペイン語
	字幕	英語、フランス語、スペイン語

あらすじ

2084年の地球で肉体労働に勤しむダグ・クエイドは、しばしば火星に女性といる夢を見ていた。ダグには妻であるロリがいて、彼女は「火星のことを忘れなさい」というのであったが、地下鉄の車内広告でリコール社が記憶を売ります、というCMを流しているのを見て、ダグはリコール社に赴き、火星に旅行に行った記憶を植え付けられることにしようとする。その記憶も単に旅行に行っただけではなく、スパイとして冒険を繰り広げる記憶であり、一緒に活動する女性は夢に出てくる女性とそっくりの姿格好をしている記憶を植え付けられることになった。しかし、記憶を植え付けられる前にダグの脳の中に隠されていた記憶が甦り、彼は実は火星に行ったことがあるという事実が明らかになる。リコール社はダグがリコール社に来た記憶を消し去り、事件をもみ消そうとするが、ダグに対して妻であるロリやリクターという男がダグを抹殺しようと襲いかかってくる。ダグは自分の記憶の真相がなんなのかを確かめるために、ダグの記憶を植え付けられる前のハウザーという男の話をビデオで見て信じ、火星に実際に赴き真実を探し始める。火星はコーヘーゲンという男が独裁政権を敷いていて、クアトというミュータントをはじめとする反乱軍がコーヘーゲンと対立していた。その中でダグは自分の真相と火星に隠された秘密を解き明かしていく。

レビュー

映画「ロボコップ」や「スターシップ・トゥルーパーズ」などでグロい描写をふんだんに盛り込みながら、エンターテインメント作品を作り続けるポール・ヴァーホーヴェン監督が、SF小説家であるフィリップ・K・ディックの短編小説「追憶売ります」をベースにしながら、当時人気アクションスターだったアーノルド・シュワルツェネッガーを主役に迎えて映画化したのが、この「トータル・リコール」です。1990年にはヒット作を連発していた映画会社カロルコが制作を担当し、大ヒットを記録しました。作品の評価も比較的高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は82％、観客評価は79%といい評価を得ています。

映画のベースになったフィリップ・K・ディックの短編小説「追憶売ります」では、物語のポイントが何が真実なのかわからないままどんでん返しの連続の展開を繰り広げる、という話になっていますが、この「トータル・リコール」は、監督にポール・ヴァーホーヴェンを迎え、主役をアーノルド・シュワルツェネッガーにしたことで、その何が真実なのかという物語の肝は描かれてはいるもののそんなに重視されず、シュワルツェネッガーがアクションを繰り広げるアクション大作としてのストーリーになってしまっているところであります。なので、アクション映画ファン的には楽しい映画なのですが、フィリップ・K・ディックの何が真実なのかわからないという展開を期待すると、多少期待外れに終わるところではあります。

また、舞台設定は2084年となっていますが、未来チックな描写かというとちょっと違い、レトロ感満載な廃退的近未来描写が印象に残るところではあります。劇場公開された1990年にこの映画を見たときにはその未来感にインパクトを受けたわけですが、2023年の今、4K UHD Blu-rayで改めて鑑賞すると、そのレトロ感が妙に古臭い感じを受けるところがして、それもそれでこの映画の味になっているのかなと感じる次第であります。ロボットが操縦するタクシーとか、ダグの鼻から出てくる追跡発信機とか、火星でダグが化けていた太った女性のボディスーツとか、時代を感じさせるところはありますが、そのインパクト度は今でも高いかなと思うところであります。

ダグの妻を演じたシャロン・ストーンはこの映画での演技を評価され、ポール・ヴァーホーヴェン監督の次回作、「氷の微笑」で主役に抜擢されるわけですが、この「トータル・リコール」でもダグの可憐な妻のふりをしながら、実はダグの隠された真実を監視するための諜報員であり、アクションシーンをかっこよくこなしているところは魅力的です。シュワルツェネッガー扮するダグをコテンパンに叩きのめすばかりか、ダグの夢の中に出てきて、実際存在しているメリーナとのキャットファイトを繰り広げる様は、見ていて爽快です。

火星でコーヘーゲンの圧制に反対するミュータントたちの造形も秀逸で、CG技術がまだ使われていなかった頃の映画としては、特殊効果による造形が異彩を放っており、彼らに感情移入できるようにしているところは、映画の面白さの一つに挙げられるところだと思います。

映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。マスターは35mmフィルムですが、2020年に4KのDIを作成していますので、ネイティヴ4Kでの収録になります。映像はフィルムがベースなため、結構フィルムグレインが多く、そちらが高解像度で記録されています。その分、描写されるドラマ部分の映像にそんなに精彩感があるわけではないです。DOLBY VISIONによる色彩管理も高輝度の描写があるわけでもなく、黒の締まりがあるわけでもない、いかにも1990年の映画、という感じの色彩に落ち着いています。ただ、レーザーディスク時代に厳しい描写だった火星の赤い大気の描写が4K UHD Blu-rayでは綺麗に描写されているのは、再生機器の進化を感じさせるものがあります。

音響はDOLBY ATMOSにリミックスされています。オリジナルがDOLBY STEREO SRですので、よくここまでイマーシヴな三次元サラウンドにミックスできたな、と感心するほどの空間サラウンドになっています。音質自体は1990年の音という感じでワイドレンジではないのですが、オブジェクトが視聴者の周囲に綺麗に配置されているので、映像に没入できるサラウンドになっていて、見ていて楽しいものになっています。

なお、このディスクはアメリカ版ではLIONSGATEがリリースしていますが、ビデオマスター自体はフランスのSTUDIO CANALが制作したためか、ディスクメニューの選択画面でトップに来るのがフランス語になっています。もちろんアメリカ版なので、英語音声と英語字幕は選択できますが、映画の版権をどこが持っているかということを最初に実感させられる次第であります。