ビートルジュース(4K UHD/iTunes Movies)|Apple TVで観た映画のレビュー
配信仕様
No Image | 原題 | BEETLEJUICE |
レーベル | WARNER BROS. HOME ENTERTAINMENT | |
制作年度 | 1988年 | |
上映時間 | 92分 | |
監督 | ティム・バートン | |
出演 | マイケル・キートン、アレック・ボールドウィン、ジーナ・デイヴィス | |
画面 | 1.85:1/DOLBY VISION | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
若い夫婦であるアダムとバーバラは、田舎の広大な一軒家に二人で暮らしていた。不動産屋のジェーンは家を売るよう仕向けるが、二人にその気はなかった。ある日、町に買い物に行った二人はその帰り道、川を渡る橋で事故を起こして車ごと川に落ちてしまい死んでしまう。しかし、最初は自分たちが死んだことに気づかなかった。徐々に生者が自分たちを認識していないことに気づき、自分たちが死んだことを実感する。そして、その間に家は売却され、ニューヨークで働いていたチャールズとデリアの夫婦が一人娘のリディアと共にその家を購入して住み始めた。アダムとバーバラはチャールズ一家を追い出そうと色々画策するのだが、チャールズもデリアもアダムとバーバラを感知することができないため、作戦はことごとく失敗する。ただ、リディアだけはアダムとバーバラの存在を感知し、彼らに同情を寄せる。なんとかしてチャールズ一家を追い出したいアダムとバーバラは、ベテルギウスというトラブルメーカーを召喚してしまい、彼らを追い出そうとするが、さらに混乱を巻き起こす。
レビュー
大ヒットを連発する鬼才のフィルムメーカー、ティム・バートンが映画関係者や世間に認知されるきっかけとなったコメディ映画が、この「ビートルジュース」です。この映画の成功がきっかけとなり、ティム・バートンは1989年のスーパーヒーロー物である「バットマン」の監督に抜擢されることになります。興行収入は74.6百万ドルを稼ぎ出し、制作費である15百万ドルを大幅に上回る成功を収めています。映画の評価も高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は86%、観客評価でも82%と高水準の評価を得ています。そして、2024年には続編の公開も予定されています。
映画のタイトルが「ビートルジュース」なので、主役はビートルジュースことベテルギウスなのかと勘違いしそうですが、実際の主人公はアダムとバーバラの若い夫婦です。しかも、この二人が生きているのは冒頭だけで、あとは死者としての存在として物語をリードしていくのが面白い構成かと思います。もう一人主役なのはアダムとバーバラが住んでいた家に引っ越ししてきた一家の娘リディアであり、彼女自身が人生を悲観している様が物語のキーになり、死者であるアダムとバーバラと交流をするところに物語のポイントがあると思います。
タイトルロールであるビートルジュースことベテルギウスも登場シーンこそ少ないものの、ベテルギウスを演じたマイケル・キートンの演技力もあって、その存在感は強烈なものがあります。トラブルメーカーであるベテルギウスが事態を鎮静化するどころかさらに混乱を引き起こす様は、かなり面白いコメディとして成立していると思います。
物語としては、生者と死者という相入れない価値観の違いを明確に打ち出したものになっており、後のティム・バートン監督作でも繰り返し描かれるはみ出しものの悲哀というテーマがすでにこの作品から現れていると言えるかと思います。主人公のアダムとバーバラはすでに死者であるために自分たちの居場所を常に探す存在になっており、それは生者であるリディアも同じことが言えるかと思います。健常者社会に認められたい死者とはみ出し者の少女の絆を通じて、自分たちの居場所を見つける物語になっているのだと思います。
物語のキーになるリディアは、何処と無くティム・バートンが制作総指揮と監督を務めたNetflixの2022年のオリジナルドラマ「ウェンズデー」の主人公ウェンズデーを彷彿とさせるキャラであり、ゴシック調の服装や人生に対してシニカルな態度をとるところなど、共通点が見られるところがあると思います。これは、ティム・バートン自身を反映したキャラ造形をしているからだと考えることができます。
物語の脚本の関係もあるのか、他の映画に対して言及する場面がいくつかあり、「DUNE/デューン 砂の惑星」で出てきたサンドワームを彷彿とさせるクリーチャーが出てきたりするところは映画好きには笑える演出だと思います。
この映画で欠点はといえば、日本語字幕で死者のクリーチャーたちの名前をどうも勝手につけているらしい場面がいくつか見られるところに残念な気持ちがあります。セリフでは死者のクリーチャーの名前を言ってはいないと思うので、ワーナーの日本支社の人がギャグで入れたのだと思いますが、余計な作業をしていると感じます。おそらくVHSのビデオリリース時からこのような処置だったのだと思います。
映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。オリジナルフィルムは35mmですが、2020年に4KのDIを作成してそこからのビデオマスター制作になっているようですので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。フィルムのグレインノイズはあまり目立たず、映像自体の解像度が高く感じられます。シーンにもよりますが、ディテールが緻密に描かれています。また、DOLBY VISIONによるHDR効果は抜群で、昼間の外の描写はリアリティあふれる映像になっていますし、色彩もカラフル、暗い画面での階調描写も変につぶれていない描写で出来はいいと思います。
音響はDOLBY ATMOSでミックスされています。オリジナルはDOLBY STEREOですので3-1方式のサラウンドなのですが、DOLBY ATMOSミックスによる三次元サラウンドはかなり効果があり、室内に音が広がる感覚を覚えます。また、オブジェクトの配置もバッチリで、視聴者を取り囲むかのようなオブジェクトに驚かされたり、迫力を感じたりします。音質自体も1988年の映画にしては結構高音質ではないかと思います。
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