THE WAY OF THE DRAGON(4K UHD Blu-ray UK)|最後のブルース・リー/ドラゴンへの道|輸入盤DVDで観た映画のレビュー
ディスク仕様
邦題 | 最後のブルース・リー/ドラゴンへの道 | |
レーベル | Arrow Video UK | |
制作年度 | 1972年 | |
上映時間 | 99分 | |
監督 | ブルース・リー | |
出演 | ブルース・リー、ノラ・ミャオ、チャック・ノリス | |
画面 | 2.35:1/DOLBY VISION | |
音声 | dts-HD MA 1.0ch 標準中国語、英語、広東語 | |
字幕 | 英語 |
あらすじ
香港郊外の新界からローマにタン・ロンという若者がやってきた。ローマではミス・チェンという若い女性が父の遺産である中国料理店を受け継ぎ、経営をしていたのであるが、イタリアン・ギャングが店を奪い取ろうとして嫌がらせを続けていて、ミス・チェンが香港にいる叔父に助けを求めたところ、叔父は友達であるタン・ロンをローマに送ることになったのである。タン・ロンの田舎者っぶりにミス・チェンは呆れ返り、中国料理店の店員たちも彼を嘲笑っていたが、イタリアン・ギャングが嫌がらせに来た時にタン・ロンが得意のカンフーであっという間にギャングを撃退したことから、ミス・チェンも中国料理店の店員もタン・ロンを見直し、彼を頼るようになる。タン・ロンに撃退されたギャングのボスはタン・ロンを排除して中国料理店を我が物にしようと様々な策を講じるのだが、タン・ロンの強さは本物で彼を排除することができず、タン・ロンから「手を引くように」と何回も忠告を受ける。しかし、ボスの手下であるホーの策略により、凄腕の格闘家たちをローマに呼び寄せ、タン・ロンを排除し、中国料理店を手に入れようと企む。タン・ロンは最強の敵と遭遇し、己の技を駆使して戦いに身を投じる。
レビュー
香港でアクションスターとしての地位を確立したブルース・リーが自身で映画制作会社、コンコルド・プロダクションを立ち上げ、制作、監督、脚本、武術指導、主演と何役をも務めた完全なるワンマン映画が、この「最後のブルース・リー/ドラゴンへの道」です。香港では当然大ヒットし、ブルース・リーの人気が世界的に広まった後に日本では最後に劇場上映されたことから、邦題では「最後のブルース・リー」と名付けられています。映画評価は高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は86%、観客評価も86%と高評価を得ています。
アクション映画ではありますが、ブルース・リーのワンマン映画ということもあってか、コメディ要素もかなり多く、明るく楽しい展開のストーリーになっています。物語冒頭からブルース・リー扮する主人公タン・ロンがローマの空港レストランでメニューが読めず価格の安いスープばかり注文してしまい、スープを飲み続けた結果、後々トイレに何回も駆け込むというギャグを楽しそうに演出しているところは、笑えます。また、タン・ロンが香港郊外の新界出身の田舎者という設定もあってか、タン・ロンを呼び寄せることになった原因をもつ中国料理屋のオーナーであるミス・チェンや中国料理店の店員たちから序盤では呆れられてしまうというところも、タン・ロンというキャラに親しみを感じるところであります。
しかし、タン・ロンは田舎者ではありますが、格闘家としては一流の腕を持っていて、中国料理屋に嫌がらせを繰り返すイタリアン・ギャングに対してはあっという間に己のカンフーを持って撃退してしまいます。面白いのがそのシーンを見たミス・チェンも中国料理屋の店員たちも手のひらを返したかのようにタン・ロンに親しみを感じると同時に彼を頼るようになるというところで、この辺も楽しい展開の一つです。
一方でイタリアン・ギャングたちの嫌がらせはタン・ロンが現れてギャングたちを対峙することでエスカレートし、最終的には世界でも有数な能力を持った格闘家を呼び寄せることになり、タン・ロンは彼らと対峙せざるを得なくなる、という展開も物語を大きく動かす要素です。チャック・ノリス扮するコルトを始めとして、日本人格闘家などと戦いを繰り広げるタン・ロンのバトルには手に汗握るものがあります。
コルトとの戦いは物語のクライマックスに当てられていますが、この戦いは真剣勝負であり、戦いの序盤はコルトの技に押されてダメージを喰らうタン・ロンの苦戦が描かれています。それがタン・ロンが自分の戦いのリズムを作り始めるところから形勢が逆転し、徐々にコルトを押し込んでいくところにアクション映画としての醍醐味があります。戦いも結構地味に技を繰り広げていて、タン・ロンがコルトの足を執拗に攻め続け、コルトがついに立てない状態になるところは、非常にリアルな格闘戦になっています。戦いの途中で子猫のカットを入れることで、逆に戦いの真剣さがより強調されています。
登場するキャラが他のブルース・リーの映画でも共演した脇役俳優さんばかりなので、「この俳優さんは裏切るな」とか「この俳優さんは嫌味なセリフを言い続けるな」とか定番のキャラを演じているのも面白いところです。俳優さんの個性を生かした演出であり、ブルース・リーの主演映画を見続けていくと、その役割が固定されていて、安定感があります。
ブルース・リー主演の映画は大体がラストで主役が悪役を倒した報いを受けて終わる、という展開が多いのですが、この映画はタン・ロン自身には報いは受けません。しかし、タン・ロンを頼りにした中国料理店の店員たちはほとんどが死亡し、イタリアン・ギャングや彼らが招集した格闘家たちも死亡するため、ラストはしんみりした余韻が残ります。タン・ロン自身もローマから新界に帰っていきますので、ハッピーエンドとは言い難い展開になっています。
映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。ジャケットには「Arrow Filmsがオリジナルフィルムの要素から新たにレストアした」と記載がありますので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。4Kの映像ではありますが、オリジナルフィルムの状態があまり良くはないので、シーンによって結構画質にばらつきがあります。全般的にローマでのロケシーンはフィルムグレインが目立ち、解像度は甘くてピンボケが多く、映像のブレも多く、色彩はドキュメンタリー的な彩度のない映像になっている傾向があります。おそらくロケシーンは自然光での撮影をしているためだと思われます。逆にスタジオでのセットシーンはフィルムグレインも少なく、安定した画面であり、色彩も不満が少なくなっています。解像度もスタジオ撮影シーンでは割と精細感があり、DOLBY VISIONの色彩表現もそこそこの効果を出しています。映像はビデオ化されたフィルムとしては初だろうと思われるマスターを使用していて、映画の冒頭のクレジットでコンコルド・プロダクションのロゴと今まで見たことのないゴールデン・ハーヴェストのロゴを見ることができます。
音響はdts-HD MA 1.0chの標準中国語で視聴しました。モノラル音声ではありますが、意外とワイドレンジでの収録になっていて、臨場感という意味では結構ある、と言えます。標準中国語音声トラックなのですが、イタリアン・ギャングたちは英語を喋るので、標準中国語と英語がごちゃごちゃになりがちで、少々聞き取りづらい面は否めません。
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