スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(DOLBY VISION/Netflix)|Apple TVで観た映画のレビュー

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(DOLBY VISION/Netflix)|Apple TVで観た映画のレビュー

配信仕様

No Image 原題 SPIDER-MAN:NO WAY HOME
レーベル SONY PICTURES HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2021年
上映時間 148分
監督 ジョン・ワッツ
出演 トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ
画面 2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

ピーター・パーカーが高校の修学旅行でヨーロッパに行った時に戦ったミステリオ。ミステリオを倒したのはいいが、彼は死の寸前でスパイダーマン=ピーターという正体を世界にバラしてしまう。ミステリオが正義のヒーローだと信じる世間はスパイダーマンが邪悪のヒーローだと誤認し、スパイダーマンの正体であるピーターを非難し、その被害は友人であるMJやネッドにも及んでいた。高校生活最後の年にピーターはMJやネッドと共にMITに進学しようと考えるが、正体がバレた騒ぎのせいでMITからの推薦も受けられないでいた。悩むピーターはサノスとの戦いで知り合った魔術師ドクター・ストレンジの元を訪れ、彼の魔術でスパイダーマン=ピーターという世間の記憶を無くしてしまうようお願いする。ドクター・ストレンジはそれを受け入れるが魔術をかけるのに失敗し、マルチバースの時間軸が開かれてしまった。そのため、ピーターの目の前にドック・オクやグリーン・ゴブリンなどといった自分の時間軸にはいないヴィランたちが集結してしまった。ドクター・ストレンジはヴィランたちを閉じ込めて元の世界に戻そうとするのだが、ピーターは死期の迫ったヴィランたちの正気を元に戻し、正常な生活が送れるようにしたいと考え、ドクター・ストレンジと対立する。そのためにヴィランたちは再び解放されてしまい、世界に危機が迫る。ピンチに陥ったピーターだったが、マルチバースの別の時間軸にいるピーター・パーカーたちもこの世界に現れたため、三人のピーター・パーカーが協力してヴィランたちを正気に戻し、元の時間軸に返そうとする。

レビュー

低迷を続けるマーベル・シネマティック・ユニバース・フェイズ4の中で1番のヒットを記録し、批評家や観客から高い評価を得たマーベル・スタジオ版「スパイダーマン」シリーズの3作目が、この「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」です。興行収入も近年のマーベル・シネマティック・ユニバース作品としては桁外れのヒットを記録し、全世界で19億ドル以上の興行収入を稼ぎ出し、歴代興行収入の第7位に付けています。Rotten Tomatoesの批評家評価は93%、観客評価は98%と極めて高い評価を得ている作品です。

物語は前作「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」のラストから続いています。前作で正義のヒーローのフリをしたヴィラン、ミステリオの正体を見破り、ミステリオを倒したピーターですが、ミステリオが死の寸前でスパイダーマン=ピーターという正体バラシを全世界に向けて発信してしまい、ミステリオを正義のヒーローと信じている世間からピーターが非難される結果になるところから物語は始まります。ピーターばかりではなく、彼の友人であるMJやネッドにも迷惑がかかり、ピーターは心底困惑する羽目になっているところが、物語の冒頭としてインパクトがあります。

物語はピーターがスパイダーマン=ピーターという正体を世間から消し去りたいという思いでサノスとの戦いで知り合った魔術師ドクター・ストレンジを頼り、彼の魔術で世間の記憶を消そうとするものの失敗し、マルチバースが解放されてしまう、という展開です。マーベル・シネマティック・ユニバース・フェイズ4以降ではマルチバースがメインテーマになっていますが、設定的にわかりづらく、後のヴィランになるキャラも不明確な部分が多い中、この作品だけは非常に理解しやすい設定になっています。

この作品でマルチバースがわかりやすいというのが、SONYが昔に制作した「スパイダーマン」、「アメイジング・スパイダーマン」というマーベル・スタジオとは関係ない2つのシリーズの登場キャラをこの作品に合流させ、それぞれの主役を演じたトビー・マグワイヤやアンドリュー・ガーフィールドを起用して、ヴィランも当時の俳優たちをそのまま再起用して登場させるという夢のような設定を生み出しているところにあります。つまり、過去の「スパイダーマン」シリーズを見ている人には、まさか過去の映画のキャラがそのままの設定でこの作品に再登場するとは、という意外性を持った展開に驚くことになり、またその設定がうまくこの作品に融合していることから、作品の出来がかなり高くなっているのが、成功している理由です。

一方でこのマーベル・スタジオ版の「スパイダーマン」シリーズでお馴染みのMJやネッドとピーターの友情も過不足なく描かれており、ピーターが友人を思うが故の行動には納得感があります。スパイダーマンの正体がバレた時には、ピーターは自分のこともそうですが友人のことも心配し、彼らの将来を案じているところに、ピーターに対する親密感を感じさせるところがあります。それ故にラストの展開にはピーターの友人の喪失感がよく現れており、ピーターの行末を案じられます。

この作品で重要な位置を占めるのは魔術師のドクター・ストレンジです。ピーターの助けを求める声に押されて、人々がスパイダーマンの正体を知っている記憶を消す魔術を唱えますが、魔術に失敗してしまったためにマルチバースが開かれることになってしまい、事態が悪化する要因を作った張本人でもあります。アベンジャーズの一員であり、スーパーヒーローであるドクター・ストレンジですが、この作品ではどことなくヴィラン的立ち位置にいるキャラでもあります。特に中盤のスパイダーマンのヴィランたちに対する対応ではピーターと対立する場面があり、そのシーンではヴィラン的動きを見せています。そして、エンドクレジット後のおまけシーンでは「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」の予告編的映像を見せていることから、彼の作品に占める立ち位置はかなり大きいです。ラストも「ドクター・ストレンジは帰ってくる」というテロップですし。

映像は4K/DOLBY VISIONで配信されています。DIは2Kで保管されていますので、アップスケール4Kなのですが、見ている限り解像度は悪くないです。DOLBY VISIONによるHDR効果は抜群で、光の加減が素晴らしく映えています。Netflixの場合、Netflixオリジナル映画やドラマは4K/DOLBY VISION/DOLBY ATMOSで配信されますが、他の映画会社から提供される映画、ドラマはHD/5.1chで配信されることが多いので、この作品の仕様には目を惹きます。最近ではNetflixの他社買い入れ作品も4K UHDだったり、DOLBY ATMOSだったりすることが増えてきていますので、時期的に4Kが主流になってきているのかもしれません。特にSONYの場合は独自のプラットフォームを持たず、他社に作品を提供するだけなので、マーベル・スタジオ絡みの作品なのにも関わらずDisney+ではなく、Netflixで配信しているのには、面白いところではあります。

音響はDOLBY ATMOSで提供されています。オブジェクトの使い方が素晴らしく、ヴィランの声が後方上部から聞こえたり、サラウンドチャンネルに意図的に配置したり、といったシーンが多く、DOLBY ATMOSの効果が絶大です。静かなシーンと音の派手なシーンの落差が大きいので、派手なアクションシーンにおけるイマーシヴなサラウンド効果は映画に没入する錯覚を与えるものになっています。

Netflix配信用マスターはどうもSONYが日本用に独自に作ったようで、エンドクレジットの映画のタイトルがカタカナ日本語で表示されているのには気になりました。でも、日本吹替版のようなオリジナルエンドテーマとかに差し代わっている訳ではなさそうです。

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