ENTER THE DRAGON(4K UHD Blu-ray)|燃えよドラゴン|輸入盤DVDで観た映画のレビュー
ディスク仕様
邦題 | 燃えよドラゴン | |
レーベル | Warner Bros.Home Entertainment | |
制作年度 | 1973年 | |
上映時間 | 99分(劇場公開版)/102分(Special Edition版) | |
監督 | ロバート・クローズ | |
出演 | ブルース・リー、ジョン・サクソン、アーナ・カプリ | |
画面 | 2.39:1/HDR10 | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語/dts-HD MA 2.0ch 英語/DOLBY DIGITAL 2.0ch 日本語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
少林寺の門下生であるリーは技を極め、心も極めつつあった。リーに対して師父である高僧は敵と対峙する際の心構えを諭す。高僧は少林寺の掟を破った門下生のハンを粛清するようリーに指示する。リーはイギリス諜報局からもハンの行っている犯罪を暴くよう依頼される。ハンは麻薬密造と販売を行っているようなのだが、その証拠がつかめなかったため、数年に一度開催されるハンの武術トーナメントに出場して証拠をつかんでほしがった。さらにリーの妹がハンの手下であるオハラの暴行に遭い、自害していたことも知ったため、リーはハンの武術トーナメントに出場し、ハンの犯罪をつかむ任務に就くことになる。ハンの武術トーナメントには借金を抱えたローパーや、黒人であるが故に差別にあうウイリアムズといったメンツも参加していた。リーは武術トーナメントに参加しつつも、先にハンの要塞島に潜入していた諜報員と連絡をとり、ハンの犯罪の証拠を押さえようとする。そして、リーは妹の仇であるオハラとの戦いにも直面する。
レビュー
伝説のカンフースター、ブルース・リーの代表作にして彼の名を一躍世界に轟かせるきっかけになった作品が、この「燃えよドラゴン」です。今回制作50周年およびブルース・リーの没後50周忌を記念した4KデジタルリマスターのSpecial Edition版で鑑賞しています。
「燃えよドラゴン」は世界配給がワーナー・ブラザースなので、ワーナー・ブラザースが4Kデジタルリマスターを制作して、4K UHD Blu-rayの販売および劇場限定公開しています。別にレビューしている「BRUCE LEE at GOLDEN HARVEST」の4K UHD Blu-ray Box SetではHD画質で制作40周年記念版の「燃えよドラゴン」が収録されていますが、4K画質で見られるのはこのワーナー版だけです。
この映画の評価は高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は88%、観客評価は91%とかなり高い評価を得ています。この映画が世界に与えた影響は大きく、それまでの通例であった白人至上主義に対して、初めてハリウッド映画でアジア、正確には中国人をフィーチャーした作品としてエポックメイキングな作品として認知されています。アジアが欧米を侵食するようになったきっかけの作品です。
物語は、ブルース・リーが生前研究していた自身のカンフーの技や哲学をミックスしたジー・クン・ドーを映画として体現したものになっていて、かなり興味深いです。今回、Special Edition版で鑑賞しましたが、ブルース・リーの奥様であるリンダさんのイントロダクションにもあるように、劇場公開版からはカットされた哲学的会話のシーンが復活しているため、作品の印象が奥深くなっています。
それらは冒頭の少林寺の師父である高僧との会話やリーが弟子に対する心構えの説法、クライマックスのハンとの戦いで迷いが生じた時の迷いを振り切る方法などで明確に提示されています。単なるカンフー映画ではなく、まさに哲学的映画でもあるので、作品が時を経ても輝き続ける仕掛けになっています。
ブルース・リー主演映画ではありますが、ワーナーも制作当時、中国人一人の主役では興行面で不安があったのか、白人のジョン・サクソンが演じるローパーをもう一人の主役として配置し、ローパーもそれなりに活躍する展開になっています。
ローパーのほかにもジム・ケリー扮する黒人のウイリアムズを脇に配置したことで、人種差別的要素を排除した作風になっていて、バラエティ豊かな作品になっています。ローパーもウイリアムズも目立つキャラであり、彼らの存在が物語の多様性を表しています。
ただ、ブルース・リーのアクションシーンはあまりに素晴らしく、彼が格闘するたびにその存在感が高まっていく面はあります。素手による格闘シーンも恐ろしいぐらいに圧倒的ですが、物語後半で出てくる棒術やヌンチャクでのアクションシーンは圧巻です。
また、この映画がワーナー・ブラザースで世界配給になったためというのもありますが、セリフが英語でブルース・リーの肉声が唯一聴ける映画になっているのも特徴です。格闘時の怪鳥音を含め、本人の声が聞けるのはこの作品だけなので、貴重な作品でもあります。
ブルース・リーの作品ではお馴染みの脇役キャラがこの作品でも登場しているのは、ご愛嬌と言ったところです。リーの妹を自害に追い込んだオハラ役を演じたボブ・ウォールは、前作の「最後のブルース・リー/ドラゴンへの道」でもリーの前に立ちはだかって倒されてしまいますし、ブルース・リーの死後制作された「死亡遊戯」でも律儀に出演しています。
映像は4K/HDR10で収録されています。オリジナルは35mmフィルムですが、制作50周年およびブルース・リー没後50周忌を記念して4KのDIを制作していますので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。オリジナルフイルムの状態も関係もありますが、映画前半の画質はバラバラです。シャープで精彩感のあるシーンがあったかと思うと、ピントのボケた鈍ったシーンがあったりと4Kとは思えないシーンもあります。ただ、後半に行くにつれ、4Kマスターならではの精彩感のある映像が続き、魅力的です。フィルムグレインも少なめで見やすいです。HDR10による色彩表現は素晴らしく、過去のBlu-rayやDVDで見続けてきた者としては、驚愕の色彩表現です。
音響はリミックスされたDOLBY ATMOSで鑑賞しました。劇場公開版のモノラル音声がDVD時代に5.1chにリミックスされ、今回DOLBY ATMOSで再ミックスされているのですが、1973年の音源をよくぞここまでイマーシヴ・サラウンドにミックスし直したな、と驚くばかりです。ラロ・シフリンのサウンドトラックを空間オーディオ化するのがメインですが、物音の配置もささやかに三次元配置していて、効果的です。個人的にはハンがトーナメント参加者に女性をあてがう部分でリンゴを放り投げると当の女性が矢を放つシーンの音が天井方向のあちらこちらで聞こえて新鮮でした。
このディスクは劇場公開版とSpecial Edition版の両方を収録していて、シームレスブランチング機能でどちらでも鑑賞可能になっています。ただ、特典映像がリンダさんのイントロダクションとオーディオ・コメンタリーだけなのは寂しい限りです。また、このディスクは世界共通版ですので、プレイヤーの言語設定が日本語になっていれば、メニュー画面から日本語仕様になり、日本語字幕や日本語吹き替え音声を選択することができます。
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