アポロ13号:極限からの生還(DOLBY VISION/Netflix)|Apple TVで観た映画のレビュー

アポロ13号:極限からの生還(DOLBY VISION/Netflix)|Apple TVで観た映画のレビュー

No Image 原題 APOLLO 13:SURVIVAL
レーベル Netflix
制作年度 2024年
上映時間 98分
監督 ピーター・ミドルトン
出演 ジム・ラヴェル、マリリン・ラヴェル、スーザン・ラヴェル
画面 1.33:1&1.66:1&1.85:1&2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

1970年の4月、NASAは月面着陸を目指すアポロ計画の第13回目であるアポロ13号を出発させた。アポロ13号には船長としてベテランのジム・ラヴェルが着任していた。

ジム・ラヴェルはアポロ8号の時にも月面近くまで飛行し、今回の飛行で4回目の月面飛行になる予定だった。ただ、妻や家族には心配をかけていて、このアポロ13号のミッションを最後に月面飛行に挑むのは辞める決意をしていた。

アポロ13号は「13」という不吉なナンバリングを与えられ、また、離陸したのも13:13と不吉な時間だった。ジムはそのことを気にしていなかったが、宇宙に行き、月面を目指す段階になってトラブルに見舞われる。

離陸前の整備点検でロケットの酸素ボンベに傷があったのを見逃し、宇宙空間でのロケットの電気系統の故障により酸素ボンベが爆発し、船の制御を失い、酸素の量も無くなってしまったのである。

ジムやNASAの必死の努力により、ジムたち搭乗員3人は、月面着陸船に避難して、かろうじて生き延びることができた。そして、月に近い位置にいることから、月の重力と月面着陸船のエンジンを使って地球への帰還コースを取る作戦を実行する。それは成功をする。

地球への帰還コースを辿っていたアポロ13号の電力と酸素の使用量を減らすため、電力をギリギリまで落として、月面着陸船の中で3人は生き延びる。しかし、月面着陸船内の気温は3度まで下がり、また、二酸化炭素が増大して、搭乗員たちの生命は危険な領域まで追い込まれる。

それでも、NASAの必死のフォローもあって、アポロ13号は地球に近づいていた。あとは、地表に着水できるかどうかだった。

レビュー

ロン・ハワードが監督した1995年の映画でもお馴染みになった、アポロ13号の月面への飛行とその過程で起きる事故、搭乗員の地球への帰還をドキュメンタリーとして構築したのが、この「アポロ13号:極限からの生還」です。Netflixオリジナルドキュメンタリーですので、劇場公開はされず、Netflix独占配信となっています。そのため、Rotten Tomatoesでの批評は投票者の人数が足りずに評価は表示されていません。IMDbでは10点満点で7.3点と水準以上の評価を得ています。

実際に起きた事件をドキュメンタリーとして描いていますので、ドラマティックではないのですが、映画「アポロ13」をかつて輸入盤レーザーディスクや輸入盤DVDで見た者としては、輸入盤レーザーディスクやDVDの鑑賞では理解できていなかったアポロ13号の事故に関する詳細や、事故が起きた後のアポロ13号の乗組員とNASAとのやりとりとその対処法、乗組員とその家族の想いが明確に描写されていますので、とてもわかりやすい内容になっています。

また、映像も当時撮影されていたフィルムのストックを存分に活用し、スチル写真も加えることで、当時の臨場感を伝えることに成功しています。映像ではアスペクト比がヴァリアブルに入れ替わり、1.33:1から2.39:1まで存在しうるフィルムのアスペクト比が全て登場しますが、それが当時のストックフィルムの画質と相まって、圧巻の印象を残しています。

このドキュメンタリーを見て改めて認識したのは、船長のジム・ラヴェルが月へは4回も行っていて、最後のアポロ13号で月面に着地する予定が、自分の生死に関わる問題に直面し、それに懸命に対処していく、ということであり、月面着陸よりも、事故対処における活躍で知名度が上がってしまった、ということです。アポロ13号の月面着陸というミッションとしては完全な失敗なのですが、事故後の対応で無事搭乗員全員が地球に帰還できたというミッションは、失敗から学ぶところがある、という事柄を認識させてくれます。

アポロ13号に起こった事故というのは、結局、打ち上げ前の整備ミスにより酸素ボンベに傷がついていて、それが電気系統の不具合により爆発してしまった、ということであり、映画「アポロ13」を見ていて理解できなかった部分が、今回初めて理解できました。また、酸素ボンベやバッテリーが吹き飛んだために船内の酸素や電力が不足し、危機を乗り越えるために、酸素や電力の消費を抑える努力をしているところなどは、危機的状況だったと言えます。その辺が理解できることで、この事故とその対処方法の綱渡的成功が後世に残すべき教訓になっています。

一方で、ジムの奥さんであるマリリンや娘さんたちの証言により、彼女たちが事故に対してどういう気持ちでいたのかがよく理解でき、そもそもジムが月に行くことに対してあまりいい顔をしていなかったことも、改めて理解できました。確かに家族からすれば、危険な任務である月面着陸に挑む夫、父親に対する感情は複雑であったと思います。ドキュメンタリーの最後にマリリンさんが2023年にこの世を去っているという字幕が入り、このドキュメンタリーがマリリンさんに対する追悼の意味合いを持っているのではないか、と感じました。

映像は4K/DOLBY VISIONで配信されています。4K解像度での提供ではありますが、1970年のストックフィルムやスチル写真を多用しているため、それらを使用しているシーンでは、解像度はかなり甘いです。35mmフィルムではなく、16mmフィルムを使っているのではないかと思います。色彩も当時のフィルムの表現限界を表しているので生々しい臨場感はあるものの、リアルな映像表現にはなっていません。当時のストックフィルムもおそらくオリジナルのアスペクト比で使ったシーンと、変更したシーンがあるようで、アスペクト比が1.33:1、1.66:1、1.85:1、2.39:1と様々な形で収録されています。ドキュメンタリーですが、演出という点で結構アグレッシヴに挑んでいます。

音響はDOLBY ATMOSでの配信になっています。ドキュメンタリーなのにDOLBY ATMOSでミックスされていますので、音が視聴者の周囲を取り囲み、アポロ13号が発射する時とか、ロケットエンジンを噴射する時などは、かなりのイマーシヴサラウンドで効果を発揮しています。演出上、誇張している感は否めませんが。1970年の荒いストックフィルムにDOLBY ATMOSでのサラウンドフィールドはやり過ぎ感はあります。

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