コカイン・ベア(4K UHD/iTunes Movies)|Apple TVで観た映画のレビュー
No Image | 原題 | COCAINE BEAR |
レーベル | UNIVERSAL PICTURES HOME ENTERTAINMENT | |
制作年度 | 2023年 | |
上映時間 | 95分 | |
監督 | エリザベス・バンクス | |
出演 | ケリー・ラッセル、オシェア・ジャクソン・Jr.、クリスチャン・コンヴェリー | |
画面 | 2.39:1/DOLBY VISION | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
1985年、麻薬密売組織の一人、ソーントンという男は、飛行機に積んであった大量のコカインを落下させていた。FBIの追求を逃れるためであった。しかしソーントンはコカインと一緒に飛行機から離脱しようとして失敗し、地面に墜落して死んでしまう。
ジョージアの国立公園を散策していたアベックは、クロクマを見かけて興奮する。しかし、そのクロクマは何かおかしかった。本来ならば人間を襲わないはずのクロクマはそのアベックに襲いかかり、女性の方は食いちぎられてしまう。
麻薬密売組織のボスであるシドは、ソーントンがコカインを廃棄したことで、手下のダヴィードと息子であるエディにそのコカインの回収を命じる。エディは妻であるジョーンを失ったばかりで、悲しみに明け暮れていて、息子をシドに預けっぱなしにしていた。そんな気力のないエディを連れ立って、ダヴィードはコカイン回収に動き出す。
FBIは、ソーントンの死亡を確認し、国立公園にばら撒かれたコカインの行方を探すことになる。シドより早くにコカインを回収し、シドの組織を潰すためである。
医者であるサリの娘、ディーディーは、サリが休みの日に行くと約束した国立公園の秘密の滝への写生を翻して、新しい恋人とのデートになったことに腹を立て、同級生のヘンリーと共に学校をサボって、国立公園の秘密の滝に写生をしに行こうとする。その途中、ディーディーとヘンリーは、コカインを食べて神経が狂っているクロクマと出会う。コカインを食べたクロクマは本来の習性を翻して、人間を襲うようになっていた。ディーディーとヘンリーもクロクマに襲われ、ディーディーは逃走し、ヘンリーは木の上に逃げ込む。
サリは娘が勝手に国立公園の秘密の滝に行ったことに気づき、ディーディーを探しに国立公園にやってきて、ヘンリーと出会う。そして、その場にもクロクマが襲ってくる。かろうじてクロクマの襲撃を逃れたサリだったが、コカインを食べたクロクマの襲撃により国立公園内で犠牲者が続出し、レンジャーや不良たち、FBIたちが犠牲になっていく。
ダヴィードたちにコカイン回収を任せて置けないシドは自ら国立公園に足を向けるが、コカインを食べてハイになっているクロクマに襲われる。しかし、シドは一人、コカイン回収を諦めていなかった。
レビュー
コカインを食べたクロクマが人間に襲いかかるというギャグのような話ではありますが、なんと実話をベースにした映画という、事実は小説より奇なりな作品が、この「コカイン・ベア」です。制作費に対して興行収入は1.5倍近く稼ぎ出していますが、稼ぎの大半は北米地域のみであり、グローバルでは大して稼げていない作品ではあります。映画の評価は水準並みであり、Rotten Tomatoesの批評家評価は66%、観客評価は71%となっています。
実話をベースにした作品ではありますが、どことなくブラックコメディ調に描かれています。クロクマという本来の習性ならば人間を襲わないクマが、コカインを食べてしまい、人間に襲いかかるという作り話のような事実が、この映画のトーンを決めています。人々が次々に犠牲になりますが、ホラー的恐怖というよりはどこか笑ってしまうところにこの映画の奇想天外ぶりが現れています。
登場人物が次々にクロクマに襲われて死ぬ際にはスプラッターな演出が多く、どぎつい描写万歳なのですが、それでもリアルというよりギャグにしか見えないところに設定の妙というか、信じられない事実が現実にあったという驚きがこの作品には存在しています。
そして、登場人物がコカインを食べてハイになっているクロクマに対して大して警戒心を持たず、自分の使命を全うしようとしてクロクマの犠牲になっていく様も、なんか警戒心がないな、という感触を覚え、リスクを考えないキャラクターが満載であります。それもこの映画がギャグっぽく見える一因です。
コカインを食べたクロクマはホラー映画でいう殺人鬼なのですが、クロクマに次に殺されるのは誰かという楽しさがこの映画にはあります。ホラー映画の定義に則っているとも言えますが、殺人鬼であるクロクマに恐怖感を感じさせないところがあるため、ある種の象徴として見ることができます。
映像は4K/DOLBY VISIONで配信されています。DIは4Kですので、ネイティヴ4Kでの配信になります。DIが4Kなので、国立公園を舞台にしたランドスケープの映像は高精細であり、そののどかさが物語にギャップを与えています。DOLBY VISIONによる色彩管理も、昼の国立公園の現実を見ているかのようなリアリティ表現ですとか、クライマックスの夜のシーンの黒の描き分けで優れた描写を発揮しており、魅力あふれる映像に仕上がっています。
音響はDOLBY ATMOSで収録されています。意図的なオブジェクトの定位感はあまり感じられないのですが、それでも視聴者の周囲を取り囲むサラウンド感は満載であり、クロクマの咆哮が部屋中に響き渡るシーンですとか、拳銃の銃声がリアルだったり、国立公園ののどかさを表現する野鳥の音の広がり感など、この映画に対する没入感を高めています。
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