セキュリティ・チェック(DOLBY VISION/Netflix)|Apple TVで観た映画のレビュー

あらすじ

ロサンゼルス国際空港で保安検査要員として働くイーサン・コーペックは、同じくロサンゼルス国際空港で働くノラと愛を育んでいた。ノラはイーサンの子供を宿していた。イーサンは、かつて警官になろうと試験を受けたのだが、ある事情で試験に落ち、警官になる夢は諦めていた。しかし、ノラはイーサンに再度警官になる試験を受けるようアドバイスをしていた。

ロサンゼルス国際空港はクリスマス休暇で大混雑していた。ノラと生まれてくる子供のために昇進をしようと決めたイーサンは、保安検査のチーフに職場を変えてもらうよう進言し、一時的に手荷物検査をする職種に就く。

しかし、ある乗客からイアホンを渡されたイーサンは、そのイアホンを耳に入れると、謎の男から指示が飛び出す。謎の男はイーサンに「ある人物の持っている手荷物の検査を見て見ぬふりをして通せ」と脅しをかけてきたのである。元々は別の保安職員が手荷物検査をすることでその職員を脅迫する予定だったのが、イーサンに急遽変わったため、謎の男とその仲間はイーサンの身辺を瞬時に探索し、ノラに対して身の危険を負わせる脅しをかけたのである。

イーサンはそれに対して周囲に警告を発しようとするが、謎の男の方が何枚も上手で、警告を受け取る前に警備員が死去したり、ノラに対して危害を加えようとするので、イーサンはやむなく謎の人物の持つ手荷物をそのままスルーさせてしまう。

それでも、イーサンは許される限り謎の男の調査を行い、イーサンがスルーした手荷物はノヴィチョクという神経ガスであることを知る。それを止めようとするイーサンだったが、謎の男がリモートでノヴィチョクを空港内にばら撒こうとするので、謎の男の言うがままにせざるを得なかった。

一方、警察の方はマフィアの謎の死に対して捜査を行い、イーサンが実行しようとして謎の男に止められた緊急通報から、ロサンゼルス国際空港で非常事態が起きていることを察知し、事態の収拾を図り始める。

謎の男の目的は、あるVIPの殺害であり、そのためには手段を選ばなかった。それを知ったイーサンは決死の覚悟で謎の男の野望を止めようと奔走する。

レビュー

Netflixで2024年12月に配信開始されると、妙に人気を得たアクション映画が、この「セキュリティ・チェック」です。Netflixオリジナル映画の中でも異常に人気の高い作品で、Rotten Tomatoesの批評家評価は88%と高い評価を得ています。ただ、観客評価は53%と低迷しているですが。Netflixオリジナル映画ではありますが、制作会社はDreamWorksですので、凖ハリウッド映画っぽいところはあります。監督もリーアム・ニーソン主演のアクション映画をよく監督しているジャウマ・コレット=セラですし。

物語はクリスマス休暇中で大混雑するロサンゼルス空港で起きる一種のテロを扱ったものであり、どことなく「ダイ・ハード2」あたりを彷彿とさせますが、主人公であるイーサンがラストに至るまで謎の男に反撃できず、ただ謎の男のいうまま動かざるを得ない状況になっていますので、強いヒーロー像が描けず、ハラハラドキドキ感が強くなっています。

元々強いヒーローではないことに加えて、イーサンというキャラの人となりが物語が進むにつれてわかってきますので、イーサンに感情移入しやすくなっています。イーサンは憧れの父のために警官の道を進もうとしていましたが、試験に失敗したために警官になる夢を諦めて、ロサンゼルス空港で保安担当の職員に甘んじている、という設定は物語にリアリティを持たせるのに成功しています。また、イーサンにはノラという恋人がいて、彼女のお腹には二人の子供が宿っているという展開も、イーサンの行動動機が明確になる条件です。

謎の男が飛行機内に持ち込んでVIPを殺そうとするために使うノヴィチョクという神経ガスはかなり危険なものであり、ロシアが開発に関与していたことが物語で明かされます。そのため、VIPをノヴィチョクで抹殺すれば、VIPが提唱していた軍備費増大に対して世論が動き、謎の男が狙っていた通りの事態への進行に至るため、謎の男はノヴィチョクをなんとしても飛行機内に持ち込むべく、二重、三重のフェイルセーフをかまして、任務を遂行しようとします。その辺の設定のうまさは物語の面白さに繋がっています。

事件の真相が明確になるのはクライマックスになってからですが、クライマックスでイーサンがノヴィチョクの拡散を防ぐためにとった行動は、物語途中でイーサンがとった行動が起点となって直結していますので、伏線回収が上手いな、と思わせるところです。そして、クライマックスがイーサンが唯一活躍できる場であり、たまっていた視聴者の不満が解放されるシーンとして、溜飲を下げる展開になっているところは爽快感を感じます。

映像は4K/DOLBY VISIONで配信されています。物語冒頭のDreamWorksのロゴがズームインして空の映像になり、空港の映像へと進んでいく様から、圧倒的な高解像度と、DOLBY VISIONによるカラフルな色彩表現が終始展開されています。クリスマスのロサンゼルス国際空港が舞台ということもあり、リアリティ豊かな映像が提供されています。

音響はDOLBY ATMOSで提供されています。ロサンゼルス国際空港の人混みの雰囲気を音響効果が見事に再現していて、館内アナウンスが頭上で広がる感覚や、人の話し声が周囲に充満する描写、飛行機の頭上を飛び越える音など、まさに三次元サラウンドの効果が抜群の作品です。