佐野元春 & THE COYOTE BAND 2012-2013 WINTER TOUR 福岡市民会館

佐野元春 & THE COYOTE BAND 2012-2013 WINTER TOUR 福岡市民会館

2013年1月18日

 今回のツアーは、チケット発売時に佐野元春久々のニューアルバムリリースの噂があり、ニューアルバムからの選曲が期待できた。実際は今年開けて先日3月13日にニューアルバム「ZOOEY」を発売するとアナウンスがあり、ニューアルバムのプロモーションライブというよりは、とりあえず定例のツアーをするという感じになっていた。今回僕が心がけていたことがある。それはツアーの情報をネットから仕入れないというものである。それをやるのにはGoogleで検索しない、というのと、2ちゃんねるの佐野元春スレを見ないというものであった。ネタバレするとライブの関心がちょっと下がるという過去の経験を踏まえてのことだった。これが結構つらいものがあったが、何とか当日まで情報のほとんどをシャットアウトできた。

 会場である福岡市民会館は、繁華街である天神から歩いて10-15分程度というところにある。コンサート会場としてはよく聞くが、当然行くのは初めてである。客席が1700席程度とそんなに大きなホールではない。しかし、会場に入場して見てみると、後方の座席は天幕がかけられ座れないようになっていたし、ずっと観客動員を見ていたが、後方は空席が目立った。多分会館の動員人数の6割程度しか入っていなかったと思う。佐野元春人気も落ちているなというのが実感でき、寂しい感じがした。

 僕の席は前から4列目で、左からの席だった。周りは結構年配の方が多く、ファン層の高齢化を実感できた。NHKで「佐野元春のザ・ソングライターズ」を放映していたが、若年層へのアピールは成功しているとは思えない。ちょっと残念だが、音楽への関心が全体的に薄れている中、やむを得ないのかなと思う。

 いつもの場内アナウンスが流れて、しばらくたった19時1分辺りでCOYOTEバンドのメンバーがぞろぞろ出てきた。そして佐野元春抜きでライブは始まった。

本編

  1. COYOTE Theme 2013
  2. アンジェリーナ
  3. スターダスト・キッズ
  4. ダウンタウンボーイ
  5. 星の下 路の上
  6. 夜空の果てまで
  7. 国のための準備
  8. 虹をつかむ人
  9. La Vita e Bella
  10. ポーラスタア
  11. 彼女
  12. ワイルド・ハーツ
  13. ハートビート
  14. コンプリケイション・シェイクダウン
  15. 99 ブルース
  16. ヤング・フォーエバー
  17. 約束の橋
  18. ロックンロール・ナイト
  19. サムデイ
  20. ヤングブラッズ

 1曲目はインストゥルメンタル曲。ご機嫌な曲で、会場を盛り上げる。曲の途中から佐野元春が登場し、ファンの歓声が上がる。2-4曲目は80年代の代表曲で、いい感じにグルーブしていた。2曲目で「アンジェリーナ」が来たことで、アンコールではこの曲はなくなったなというのを感じ取った。3曲目の「スターダスト・キッズ」は久しぶりの演奏ではないだろうか。4曲目の「ダウンタウンボーイ」とともに、比較的オリジナルに忠実なアレンジだったと思う。

 バンドがアルバム「COYETE」の制作メンバーということで、新加入のメンバーもいたが、アルバム「COYOTE」からは2曲演奏。「君が気高い孤独なら」が演奏されず「夜空の果てまで」が演奏されたのはちょっと面白い構成だなと思った。

 MCで佐野元春は「この前の選挙行った?今回の結果に僕はちょっと」というような前書きをしたうえで演奏されたのがまさにタイムリーな「国のための準備」。ギターが深沼元昭と藤田顕というツインだったのがこの曲の演奏を可能にしていると思った。

 「今回は新曲持ってきている」というMCとともに3曲新曲が演奏された。「虹をつかむ人」(旧題「虹をつかむまで」)と「「La Vita e Bella」は前回の「Early Summer Tour」でも演奏されているし、「La Vita e Bella」はiTunes Storeで配信もされているから、ちょっと安心して聴くことができる。「虹をつかむ人」はミディアム・スローの演奏で名曲の予感があった。それよりも僕が気に入ったのが完全に新曲の「ポーラスタア」。佐野元春お得意の言葉の詰め込みすぎな歌詞が、聞き取りづらさと相まって、魅力的に覚えた。曲調も結構ハードな感じでアルバムが楽しみになってきた。

 キーボードに座った佐野元春が次に歌ったのがまさかの「彼女」。今回の佐野元春の声はちょっときついところもあった。高音がかすれて、良くも悪くも枯れた感じの声になっていたのであるが、この「彼女」では、高音が厳しいと感じた。しかし、めったに演奏されない曲なので、じっくりと聞きほれてしまった。続けてキーボードに座って演奏されたのが「ワイルド・ハーツ」。これはアレンジが加えられていて、ボサノバ風の曲に変わっていて、面白いと感じていた。

 次も久しぶりの「ハートビート」。ここ10年ぐらい結構アレンジが加えられて、レゲエ調になったりしていたが、今回は比較的オリジナルに忠実。オリジナルのテンポで演奏されて心に染み入った。アウトローではサックスの代わりに佐野元春がハーモニカを吹いて、曲を盛り上げる。

 「コンプリケイション・シェイクダウン」もCOYOTE BANDでも演奏できるんだ、と意外な感じがした。かつてのヒップホップの代表曲もこうして聴くと、意外と他の曲と違和感がない。「99 ブルース」は間奏でキーボードやギターソロが炸裂する。実はこの辺の構成には「何もTHE HOBO KING BANDと同じにしなくても」という感想を持った。THE HOBO KING BANDは腕が達者な人が多いから楽器のソロパートも悪くないが、COYOTE BANDはそうじゃない。もっとロックンロール寄りでもいいのではと思った。

 最近やけに演奏されるようになった「ヤング・フォーエバー」は、結構地味に好きな曲なので、ニコニコしながら聞く。そして定番曲でライブの締めくくりを行った。「約束の橋」あたりで佐野元春はMCで「古い世代と新しい世代を結び付ける曲です」というような発言をしていた。これは「ヤングブラッズ」でも同じ。「約束の橋」は結構アレンジ変わっていたと思う。「ロックンロール・ナイト」は、佐野元春のシャウトが印象に残った。そして「サムデイ」。いい曲だなと思う。「ヤングブラッズ」は個人的に思い入れの深い曲なので、この曲が演奏されたことはうれしかった。

 演奏が終わるとバンドメンバー紹介。ギターは前述の深沼元昭と藤田顕、ドラムに小松シゲル、ベースが高桑圭、キーボードは渡辺シュンスケ、そして最近佐野元春の片腕となったパーカッション他がスパムという布陣だった。

アンコール

  1. ストレンジデイズ
  2. 悲しきレイディオ

 アンコール1曲目は、どうも会場ごとに曲目が違うらしい。ここ福岡ではなんと「ストレンジデイズ」が演奏された。シングルとしては売れた曲だが、意外とライブでの演奏は少ない。MCで「リハーサル中になんか歌いたくなって、必死になって演奏した」、「この曲は博多以外では演奏しないと思う」と話し、歌われていた。ブラスがないのでキーボードがリードをとっていて、ちょっと面白いアレンジになっている。最後の曲は「悲しきレイディオ」で当然メドレーになだれ込む。途中の「ムード盛り上がれば」のコーラスパートは1発でOK。これ、やっていると病みつきになる。マンネリ感もあるけれど。メドレーはコール&レスポンスで、最初佐野元春が事前説明をしないで始めてしまい、途中でちょっと仕切り直しになるというトラブルもあって面白かった。

 ライブが終了すると、観客は「もっとやってほしい」という歓声がすごい上がるが、実際はこれで終了。MCで佐野元春はライブ中に思ったこととして「世代は受け継がれる」と発言し、会場を沸かせていた。公演時間は2時間20分。ここ最近の80年代選曲中心のライブには、ちょっとマンネリ感も漂うが、それでも楽しいライブだったことには変わりはない。これでアルバム発売後、アルバム中心のライブが行われるのならば、期待してもいいかもと思った。佐野元春は会場に空席が目立つにもかかわらず、終始ニコニコしながら歌っていたのも印象的だった。

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