ゴスペルコンサート

ゴスペルコンサート

2004年6月6日

話は、韓国旅行の時に遡る。帰りの飛行機で隣の山野さんと話をしているときに山野さんがゴスペルの合唱団に入っていることを知った。ゴスペルは嫌いじゃないので「今度コンサートを開催するときは連絡下さいよ。観にいくから。」と話していたら、5 月の半ば辺りに山野さんからメールが届いた。山野さんの所属する”NEW COMMITMENT FAMILY”というクワイアー(教会の聖歌隊)が設立 2 周年を記念したコンサートを開催するという。山野さんがどんな風に歌っているか興味もあったし、入場無料でコンサートを観れるというのにも引かれた。それに最近コンサートにも行っていない。せいぜい年 1 回の佐野元春のライブぐらいだから、生演奏に飢えている、といっても過言ではなかった。

当日は運悪く朝から雨だった。天気予報では「この日が入梅と思われる」と宣言していた。会場は西新宿の、東放ミュージックカレッジという専門学校のホールで行われる、とのことだった。山野さんからの案内には、都営大江戸線の西新宿駅で下車するとすぐだということだった。大江戸線など乗ったことないからちょっとだけわくわくしてしまう。

大江戸線の西新宿駅を下車すると、出口のすぐ隣が会場だった。玄関で 2 人の女性が立ち話をしているのが見えた。なんか 1 人の後姿が山野さんに似ている。そっと彼女の前に回ってみたら、やっぱり山野さんだった。

山野さんは挨拶もそこそこに僕に「今日のコンサートの録音をお願い」と言って IC レコーダーを手渡してきた。僕もこういうライブ録音をするのは好きだったので(最近はしていない。違法行為だし。)、快く引き受ける。彼女はデジカメも持ってきていたようだが、あいにく不調の様で「こちらは頼めないですね」とちょっと残念そうだった。だが僕はなぜか普通のカメラとフィルムを持ってきていた。たまにはこのサイトに写真をつけたほうがいいかなと思ったのと(川崎大師と、佐野元春のビデオクリップ撮影時にカメラをもって行かなかったのはちょっと失敗かな、と思っている)、韓国旅行のときの写真の中に山野さんがはっきり写っている写真があったので、それを渡したら結構喜んでくれたので、「今回も撮ってあげたら喜ぶかな」と思ったからである。ということで写真撮影も引き受けることになってしまった。なんか観客じゃなくてスタッフになった気分である。

ホールはビルの地下 2 階に位置していた。雰囲気はやはりライブハウスの入口、という感じである。入口横にホール内を見ることができるモニターが設置されているのが印象的だった。

ホール入口

ホール内は、もう既に閉鎖されてしまった赤坂ブリッツを縮小したかのような印象を与えるホールだった。まだあまりお客が入っていないので、これ幸いと最前列の手摺に位置を確保する。

ホール内部

さて、最前列に陣取ったものの IC レコーダーの録音をどうしようか、とふと考えてしまった。ずっと手に持っているのも疲れるし音像もぶれてしまう。そのときここに来る時に聴いていた MP3 プレーヤーのことを思い出した。これのネックストラップを紐代わりにして手摺に巻きつけ IC レコーダーを固定したらいいのではないか? 早速やってみるとなかなかいい具合に固定された。ついでに自分の MP3 プレーヤー自体にも簡易録音機能がついていることを思い出したのでこれも一緒に固定し録音を試してみることにした。どんな感じになるのだろう。久しぶりに高校のときの録音マニアの感覚がよみがえってきたようである。

Rio SU30 MP3 Player

17:00 を 10 分ほど回った頃、バックバンド(キーボーディスト、ドラマー、ベーシスト)の 3 人がステージに入ってきた。それから少ししてクワイアーがぞろぞろステージに上がってきた。およそ 50 名ほどだろうか。圧倒的に女性が多い。ほぼ中央に男性が 10 名ほど配置され、その両側に均等に女性が配置されている。そして、この回の主催者であり、創設者であるギルバートさんが入ってきた。僕は山野さんから依頼されていた IC レコーダーと自分の MP3 プレーヤーを同時に録音状態にした。そして、カメラの準備をした。

Highest Praise
一曲目はなかなかポップなナンバーだった。やはりコンサートはこうでなくては。曲名の “Highest Praise” とは、「最高の賞賛」という意味である。ゴスペルがロックやソウルミュージックの形式をまとった賛美歌であることを考えれば、当然これらの曲は神に対する賛美ということになるだろう。高校のときに短波放送で、 KTWR などのキリスト教系放送局をよく聴いていたせいもあって、キリスト教に抵抗感がない僕としては、すっと心に入り込んでいける曲だった。
'Highest Praise'を歌うクワイアー
I Love You,Lord
「主よ、あなたを愛しています」というこの曲はバラード風のスローな曲である。女性コーラスの美しさが耳に残るナンバーだ。スローな曲ではあるが、後半に行くに従って曲のパワフルさが際立ってくる。
Wha’cha Looking’ 4?
この曲の前にギルバートさんが観客に曲の途中で一緒に踊るようにといろいろ身振り手振りでジェスチャーをレクチャーした。なかなか覚えられず苦労したが、よりこのコンサートが親密なものになってきた。「いったい何を探しているの?」というこの曲はソウルミュージックである。先ほど苦労して覚えたジェスチャーと曲のノリ、そしてソロで歌われた二人の男女のパワフルな歌声に心地よさが体を駆け巡った。気がつくと汗をかいていたくらいである。
Calling My Name
 この曲ではまるで佐野元春の歌に出てくる “Big Fat Mama” そのもののような黒人の女性が登場してきた。リードさんというこの女性は、その容姿からの予想通り、パワフルなソウルを熱唱してくれた。「私の名前を呼んでいる」というこのスローナンバーはまさに彼女の独壇場であった。
Reid さん熱唱!
Help Me Lift Him Up
再びこの曲では観客もゼスチャーを行うことに。「彼を持ち上げるのを助けて」というこのポップなナンバーではリードさんのパワフルな声、会場とステージが一体化したジェスチャーにより、心が High になっていくのを感じた。
Center of My Joy
「(主は)喜びの中核」というこのバラード曲で、主催者であるギルバートさんがメインボーカルを取った。彼もリードさんに負けず劣らずパワフルな歌い方をする人なので、神への愛情を感じてしまった。
I Came to Magnify the Lord
「私は神を広めるためにやってきた」という曲は再びポップな曲だった。なんか聴いているうちに映画「ブルース・ブラザーズ」の 1 シーンを思い出してしまった。ブルース・ブラザースが神に自分たちの進むべき道をたずねようと教会に行き、ジェームス・ブラウン扮する牧師さんがソウルで説教する、というシーンだ。ジェームス・ブラウンが牧師、という設定はかなり笑わせるものがあるが(実際何回か逮捕されている人だし)、このシーンと今回のコンサートが妙にダブって見えるのも事実だ。
Shake the Foundation
この「創設者を揺らせ」という曲でコンサート本編は終了である。ソウルフルな曲で、クワイアーたちの声がなかなか映える曲だった。
I Need to Pray
ここからがアンコール。観客の方からギルバートさんにお菓子のプレゼントがあったり、クワイアーの一人が誕生日ということで全員で「ハッピーバースディ・トウ・ユー」を歌ったりして会場が和やかになった。曲の「祈る必要がある」はアップテンポな曲で “Wha’cha Looking’ 4?” でもソロパートを歌ったチエさんが再び音域の広い声を聞かせてくれた。
プレゼントをもらい嬉しそうなギルバートさんとリードさん
Hallelujah,Salvation,and Glory
そしてこの曲がラストナンバー。ギルバートさんがサンディエゴの大学でよく歌っていた曲だそうである。ラストにふさわしく、穏やかな曲である。

コンサートも終わると既に 19:00 近かった。心地よい疲れが体に残っていた。ホールから玄関に戻り、山野さんを待った。山野さんが出てくると今日のコンサートが楽しかったことを伝え、IC レコーダーを返し、そして別れた。雨に煙る新宿副都心を見ていると、なぜか佐野元春の “VISITORS” が頭の中で鳴り響いていた。

後で話を聞いたところによると、IC レコーダーの録音はばっちりだったようで、ちょっとホッとした。僕の MP3 プレーヤーのほうは、歪もかなりあるが聞ける程度には録音できていた。ただし、ラストナンバーだけ収録し切れなかったのだが…。

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