佐野元春「THE SUN TOUR」NHK ホール
2005年2月20日
今回でこの「THE SUN TOUR」も三回目である。佐野元春のファンをもう 20 年続けてきているが、一つのツアーで三回も観に行くというのは今回の「THE SUN TOUR」が始めてである。それだけ、2004 年度、自分にとってしんどい年であり、佐野元春が 5 年ぶりにリリースしたアルバムの「THE SUN」、そして「THE SUN TOUR」が心の励みになっていたのではないかと思う。
今日のライブはツアーファイナルということで何か特別なものを感じる。普段佐野元春のライブを観に行ってもなかなかツアーファイナルを観に行くというチャンスがないので期待が膨らんでくる。
会場となる NHK ホールは僕にとっては初めての会場である。どうしても NHK ホールというと年末の TV 番組「紅白歌合戦」の会場というイメージが付きまとってしまう。佐野元春で言えば、NHK ホールでのライブは今回の「THE SUN TOUR」が二度目のようである。前回はもう十数年前の「ピーシズ・ツアー」ではなかったかと思う。あの頃の佐野元春はまさに若者のカリスマといった感じで、チケットを取ることが出来ず、悔しい思いをした記憶が残っている。
天気はあいにくの曇り空、そして時折霧雨が降ってくるという残念な気候だったが、久しぶりの渋谷のざわめきを聞きながら NHK ホールへと向かった。
NHK ホールに着いたのは 17 時 20 分ぐらいではなかったかと思う。どうもリハーサルが押していて、まだホール内への入場は出来ないみたいだった。ツアーファイナルということでリハーサルも入念にやっていたのだろう。しかし、ロビーに入るとすぐにホール内への入場が解禁された。
僕の今回の席は 2 階席の中央左側でもっとも壁寄りの席だった。今回の「THE SUN TOUR」、すべてステージから見て左側に席が割り振られている。三回も行っているのだからもう少しステージ中央に席を割り振ってほしいな、と思っていた。ただ、今回 2 階席ということで前に背の高い人が来てもステージ全体が見渡せそうなのは幸いである。
場内の客の入りも割と早かった。日曜日ということもあって時間的にゆとりがあるからなのだろう。小さい子供を連れたお父さん、お母さんも客の多かったように思う。世代を超えたファンがいるというのはなかなかすばらしいことだと思う。
18 時を少し過ぎて開演のブザーが鳴ると、会場が一斉に盛り上がり、拍手で佐野元春が登場するのを求めた。今日の会場の盛り上がりはすごい、と直感で感じた。
第一部
- バック・トゥ・ザ・ストリート
- ソー・ヤング
- ハッピーマン
- ヤァ! ソウルボーイ
- 僕は大人になった
- また明日…
- 風の手のひらの上
- 99 ブルース
- インディビジュアリスト
第一部は過去 2 回と同じ選曲、構成だった。選曲と構成には新鮮味はないが、今回はじっくり曲を楽しんで聴いていた。今回特にいいなと思ったのは「僕は大人になった」だろうか。途中「♪LOVE, LOVE, LOVE, …」という歌うところで会場が盛り上がる。過去のライブのときより「LOVE」を歌う回数が多いからで、この部分は聴いていて心地よくなる。また、佐野元春の動きもいつもよりアグレッシブだったようだ。過去 2 回と比較しても動きが違う、と思っていた。
ただ残念だったのは、「また明日…」だったか「風邪の手のひらの上」だったかで若干ハウリングがしたことだろう。今日のライブはライブ DVD のための収録も行っていたので、ハウリングのようなノイズはないほうが当然いいに決まっている。ライブ DVD といえば、一階席の最前列のカメラがアグレッシブに動いていたので 1 階席の人はカメラが邪魔だったのではないかな、と思った。
これまでのツアーと同じく、約 15 分の休憩を挟んで第二部が始まった。
第二部
- 月夜を往け
- 最後のワンピース
- 恵みの雨
- 希望
- 地図のない旅
- 観覧車の夜
- 君の魂 大事な魂
- 明日を生きよう
- DIG
- 国のための準備
- 太陽
今回第二部はじっくり聴いてみようと思って、あまり手拍子も打たないようにしてみた。オリジナルの CD だと、「月夜を往け」から始まる数曲はそれなりにポップな曲だなという印象を受けているのだが、改めてライブで聴いてみると少しアコースティック気味なアレンジになっているようである。だからじっくり聴くというのもありかなと思った。
「観覧車の夜」になると、僕の中で何かスイッチが入ったような気がして来る。特に後半のパートがスイッチを入れる要因のようである。思わず一緒に口ずさんでしまう。続いて「君の魂 大事な魂」をはさんで「明日を生きよう」でオンになったスイッチに電気が流れ出す感じを受ける。この「明日を生きよう」は CD ではあまり印象に残らなかったのだが、ライブでは映える曲だな、という気がしている。
「DIG」では、後半観客と「Be My Brother, Be My Sister」というフレーズのコール & レスポンスのコーナーが入り、いつもより更に盛り上がる。そしてとどめに「国のための準備」である。場内は爆発したような歓声であった。
一転して本編ラストの「太陽」では観客がじっくりとこの曲に聴き入っていた。曲後半のセットの壁が割れて太陽を模したライトが登ってくるという演出は今回もよかった。ここは一番の肝だから前のレビューのときにも書きづらかったのだが、これで「THE SUN TOUR」も終わりだからネタバレしてもいいだろう。
「太陽」の演奏が終わると、佐野元春をはじめバンドのメンバーがステージに横並びになって長々とお辞儀をする。これも今までのライブでは見られなかった演出である。多少ライブビデオのことを意識しているのかな、という気もしたが、それでも感動した。いいライブだったな、という思いがしていた。
アンコール 1
- バイ・バイ・ハンディ・ラブ
- アンジェリーナ
アンコールでは佐野元春が「もう少し高いところに行こう」といってこの 2 曲を演奏する。この頃になるともう純粋に曲を楽しんでいた。
アンコール 2
- 悲しき RADIO
- HKB メドレー
2 回目のアンコールのとき、佐野元春は「更にもう少し高いところに行こう」と言ってこの 2 曲を演奏した。「悲しき RADIO」でのお約束の観客が歌う「♪ムード盛り上がれば」というパートでは、少し観客がはずし気味だったような気がしたが、何とか佐野元春は OK を出したようである。最初の渋谷公会堂のときは、観客の盛り上がりが今ひとつで佐野元春、なんとすねてステージ袖に引っ込んでいってしまい、ギターの佐橋佳幸がなだめすかしながらステージに呼び戻すという演出もあったぐらいなので、今回のはぎりぎりセーフだったみたいである。
「HKB メドレー」が終わると、メンバー紹介のほかにツアーファイナルということで、ツアーにかかわったスタッフの方々の紹介もあった。他のミュージシャンがツアースタッフの紹介をするのかどうかは知らないが、少なくとも佐野元春に関していえば、いつもツアーファイナルではスタッフの紹介をしているようである。これは割といい配慮だなと思っている。
会場の盛り上がり方は異常ともいえるくらいで、スタッフ紹介が終わっても拍手が鳴り止まない。バンドのメンバーはステージ上でなにやら相談を始めた。もう一曲アンコールがありそうだ。そして佐野元春が MC を始めた。「この曲を作ったときは、10 代、20 代のいつかきっと、という希望について考えていた。そして、この曲をステージで何百回と歌い、自分が年齢を重ねていくうちに、30 代には 30 代のいつかきっと、40 代には 40 代のいつかきっと、そして 50 代には 50 代のいつかきっと、という希望があるのじゃないかと思っている。この時代にこんなこと思っているのは甘いかな。」というような内容のことをしゃべった後、ラストの曲を演奏した。
アンコール 3
- SOMEDAY
「SOMEDAY」をライブで聴くのは何年ぶりだろう。一時期はこの曲を必ずアンコールで演奏していたので少し飽きが来ていた時期もあった。でも今回は素直にこの曲を聴けた。いや、最初からずっと一緒に口ずさんでいた。「いつかきっと」という希望、これは大切なことだと思う。
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