チェリー(4K UHD/Apple TV+)
No Image | 原題 | CHERRY |
レーベル | Apple Original Films | |
制作年度 | 2021年 | |
上演時間 | 140分 | |
監督 | アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ | |
出演 | トム・ホランド、シアラ・ブラヴォ、ジャック・レイナー | |
画面 | 2.39:1&1.50:1/DOLBY VISION | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
学生だったチェリーは、講義の時にエミリーという女性に恋をして、彼女をモノにしたいと思うようになる。チェリーにはマディソンという彼女がいたのだが、マディソンはチェリーを見下していて、チェリーはそれが不満だったのである。幸運なことにエミリーを自分の彼女にしたチェリーだったが、しばらく付き合ったある日、エミリーはカナダのモントリオールの大学に行くと言い出す。それを聞いたチェリーは絶望し、アメリカ陸軍に入隊してしまう。エミリーは結局モントリオールには行かなかったのだが、チェリーは2年間の軍隊生活を送る羽目になる。そして、チェリーはイラク戦争に衛生兵として従軍する。イラクでの軍隊生活は過酷で、目を背けたくなるような地獄が待っていた。2年の従軍を経て、チェリーは除隊するのだが、PTSDに苦しみ、薬物に手を出すことになってしまう。そのために金欠になり、またエミリーも薬物中毒になってしまったため、薬物を入手するために金が必要ということで銀行強盗を繰り返してしまい、強盗で得た金で薬物を買うというどん底の生活を送るようになる。
レビュー
「キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー」や「アベンジャーズ/エンドゲーム」等MCUの作品で高い評価を得ているアンソニー・ルッソとジョー・ルッソの兄弟監督が、同じくMCUの「スパイダーマン」シリーズで主役を張っていたトム・ホランドを主役に備え、退役軍人のニコ・ウォーカーが自身の体験をもとに執筆した小説「チェリー」を映像化した作品が、この「チェリー」です。Apple TV+のオリジナル映画として製作されましたが、Rotten Tomatoesの批評家評価は37%、観客評価は70%と低評価を与えられている作品であります。
物語は、チェリーという若者が軍隊に入り、退役したのちにPTSDに苦しみ、薬物に手をだし、薬物を買う金を得るために銀行強盗までしてしまうという転落の人生をじっくりと描いています。チェリー一人だけが苦しむのではなく、最初は恋人、途中から妻になるエミリーも薬物に手を出してしまい、二人して薬物依存してしまう様は、やりきれない思いがします。
チェリーが軍隊に入ったのは、エミリーがチェリーと別れてモントリオールの大学に行こうと考えたことをチェリーに話したからですが、その辺からチェリーの人生は転落の一途を辿っていたような気がします。軍隊で基礎訓練している最中から、チェリーは苦悩し、特にイラクに派遣され、衛生兵として負傷した仲間を救助する姿は、彼にとって精神を病むきっかけになっていたのだと思います。
そして、軍を除隊して故郷に戻ってからは、戦争の後遺症であるPTSDに苦しみ、その苦しみから逃れるために薬物に手を出してしまうところが、チェリーの悲惨さを描いていると思います。そして、薬物中毒になったのはチェリーだけでなく、妻であるエミリーも同じく薬物中毒になり、病院に運ばれるまで悪化していく様は、救いようのない展開かなと思います。
さらに薬物をディーラーから買うための金を工面するために、銀行強盗を繰り返して行い、それを資金にさらに薬物を買ってしまうところは、さらなる転落人生を描いていると言えます。とにかく、悲惨な展開が続くのですが、物語は意外と冷静な視点で描かれています。物語途中までチェリーのモノローグが物語を進めていくところにも、冷静な視点が強く出ている要因かと思います。
また、物語はプロローグとエピローグを含め7章構成で描かれており、プロローグで描かれた内容がクライマックスで結果を出す展開になっていて、冒頭の物語の謎をクライマックスで明かす展開に、納得の表現であると言えます。エピローグもチェリーのその後の人生が描かれており、彼の転落の人生がもう一回やり直せるのか、多少の希望の光を持って物語が終わるところは、いい余韻かなと思います。
映像は4K/DOLBY VISIONでの提供になります。軍隊での新兵の訓練シーンだけ、1.50:1のアスペクト比になりますが、その他のシーンは2.39:1のシネマスコープサイズでのアスペクト比になります。映像はマスターデータが4Kであることもあって、高精細な映像を提供しています。また、DOLBY VISIONのカラーコレクションがよく聞いていて、素晴らしい発色を映像は放っています。音響はDOLBY ATOMSでの提供で、これも効果的なサラウンドを提供しています。シーンとしては僅かですが、イラクでの戦闘シーンではDOLBY ATMOSの効果が最大限発揮されます。その他のシーンでも結構サラウンドを使った効果が大きく、物語を動かしている感触を得ます。
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