THE BOURNE IDENTITY/ボーン・アイデンティティ/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

THE BOURNE IDENTITY

THE BOURNE IDENTITY DVDジャケット 邦題 ボーン・アイデンティティ
レーベル UNIVERSAL STUDIOS HOME VIDEO
制作年度 2002年
上演時間 119分
監督 ダグ・リーマン
出演 マット・デイモン、フランカ・ポテンテ
画面 2.35:1/アナモルフィック
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語、フランス語 / DTS 5.1ch 英語
字幕 英語、スペイン語

あらすじ

地中海に漂流していた謎の男。彼は 2 発の銃弾を受けていたが奇跡的に一命を取り留めた。だがそのときのショックで彼は自分が何者なのか記憶を喪失していた。わずかな手がかりを元にスイス、フランス、と移動する彼の前に、「作戦は失敗だ」という判断をしたアメリカ C.I.A.が彼を抹殺するために立ちふさがる。一体彼は誰なのか? 彼と C.I.A.の関係は? そして彼はいったい何の任務を遂行しようとしていたのか? ふとした偶然から事件に巻き込んでしまったマリーとともに彼は自分の正体を探し始める。

レビュー

 マット・デイモン主演のアクション物、ということであまり期待していなかったのですが、全米で公開されるや「スパイダーマン」ゃ「スターウォーズ:エピソードII」を相手にしてかなりのヒットをあげた作品がこの「ボーン・アイデンティティ」です。原作は、ロバート・ラドラムの「暗殺者」という小説で、原作者自身も製作総指揮、という立場で作品に関与しています。

 実際個人的にもマット・デイモンというと「グッド・ウィル・ハンティング」の役の印象が強く、まさかこの手の記憶喪失だが凄腕の暗殺者という役を演じられるとは思ってもいませんでした。観ているとまるでシュワルツェネッガーが無表情で標的を付けねらう「ターミネーター」を思い出してしまうくらい、凄腕の暗殺者ぶりが似合っていたと思います。

 この作品はとても面白かったといわゆるハリウッドアクション物とは少し違う雰囲気を漂わせていると思うのですが、その理由のひとつとしてあまり有名どころの役者が出演していないことも挙げられるのではないでしょうか。そのために役者の色があまり見えない、ドラマの中の人物としての色が強く出てきている印象を受けます。特にヒロイン・マリー役のフランカ・ポテンテという女優さんはドイツ出身ということで舞台となっているヨーロッパのイメージとあっていたのではないかな、と思います。これがアメリカ人の女優さんだとこうはいかないでしょう。ちなみに僕は未見ですがこの女優さん「ラン・ローラ・ラン」に出演しているそうです。

  この作品が面白かったもうひとつの理由として、「ボーン・アイデンティティ」の特長のひとつに、ダグ・リーマン監督のスピーディーな演出振りも挙げられるのではないかと思います。確かダグ・リーマンという監督さん、前作の「Go」という作品でその演出振りが評価されていたと記憶しているのですが(残念ながらこの作品も未見)、今回の「ボーン・アイデンティティ」でもだれたところがなく、緊迫感の漂う、それでいてクールな演出だったのではないかと思います。

 このレビューは最初の部分に追加して記入している部分があります。ブラウザによって表示方法は違うのでしょうが、多分下線が惹かれた部分が追加項目です。続編の「ボーン・スプレマシー」を鑑賞する前に「ボーン・アイデンティティ」を再鑑賞したことで追加したいことが出てきたために最初のレビューでおかしな部分は抹消線を使いつつ、少しだけ深く作品の印象を書いてみようかと思います。

 再鑑賞をしたことで気付いたことは、主人公のジェイソン・ボーンという人物は元々体制に属する人間だったのにアメリカの国益にとって害になる黒人を暗殺することに失敗してしまったために、反体制側になってしまったというところにあります。それも暗殺自体が黒人のそばにその子供たちがいたためにまっとうできなかったという殺人マシーンとして訓練されたはずの者が人間らしさを少し出してしまったために起因しています。そしてボーンは、途中 C.I.A.の追っ手を何人か倒していきますが、最終的にはその中から人間らしさを取り戻し、戦いの世界から身を引いて、静かな生活を望んでいきます。

 その人間らしさを取り戻す手伝いをしたのがふとしたことから事件に待ちこまれたマリーという女性の存在です。ちょっとその辺のリレーションシップの描き方が弱いように思いますが、ジプシーであるマリーが、自分が誰で何をしようとしていたのかも分からない、まさにアイデンティティのないボーンにアイデンティティを与える結果になっていったと思います。ラストシーンで二人が再開し、自分の名前が何であろうとかまわない、というような台詞をボーンに言わせている辺りにそういう意図を感じます。実際のところジェイソン・ボーンという名前ですら彼の本名かどうか分からないのですから。C.I.A.のボスはボーンと呼んでいますけれど。

 制作年度は 2002 年ですし、原作物ではありますが再見してみると、アメリカという国の身勝手さや自国が世界の中心にい続けようとする不気味さを感じます。自国に不利な人物を暗殺しようとして、それに失敗すれば自分の部下を殺そうとする、そして失敗した暗殺を再度行ってしまうという展開からそんなところが見え隠れするように感じます。ボーンの抹殺のためにヨーロッパ中にいる二重生活を送っている C.I.A.のメンバーを総動員してしまうところなどは少々怖いものがあります。だから自分探しをしつつも C.I.A.と対峙し、最終的には組織から離れるボーンに強さを感じてしまうのです。そして今回の事件を引き起こしたボスを倒すのが本来ボーンを抹殺するはずだったのに彼の人間らしさに心を打たれた別の C.I.A.メンバーだったというのも興味深いところです。その男も人間らしさを取り戻しだした、ということでしょうか。マリーと昔関係があったこともあるのでしょうけれど。

 画質はヨーロッパの冬が舞台なのですが思ったほどひんやりした感じが漂ってこない普通の色調で舞台によってはひんやりした雰囲気が漂ってきます。です。通常こういう場合ですと画面がどちらかというと青側によっている場合が多いのですがあえてそれを排している気がします。そうは言っても冬のヨーロッパということもあって空がどんよりしているシーンが多いですから、陰鬱感も漂ってきます。音響は今回も DTS で視聴。アクションシーンはさすがに迫力があります。ただし DTS の弱点でもありますが劇場と同じダイナミックレンジで収録されているため、台詞が小さく聞こえがちになってしまうのが残念です。といって台詞を聞きやすいようにボリュームを上げればアクションシーンは近所迷惑になってしまうし、難しいところです。

※追記部分執筆:2006年3月22日

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