FALLEN ANGELS(Blu-ray/CRITERION)
邦題 | 天使の涙 | |
レーベル | CRITERION COLLECTION | |
制作年度 | 1995年 | |
上演時間 | 99分 | |
監督 | ウォン・カーウァイ | |
出演 | レオン・ライ、ミシェール・リー、金城武 | |
画面 | 2.39:1/SDR | |
音声 | dts-HD MA 5.1ch 広東語 | |
字幕 | 英語 |
あらすじ
孤独な殺し屋ウォンは、ビジネス上のパートナーと殺しのターゲットのやりとりを交わしていたが、パートナーはウォンに恋をしていた。ウォンはビジネス上のパートナーから指示されたターゲットを殺していくが、パートナーとの関係が深まっていくのを恐れて、連絡を断ち切る。犯罪を犯し、刑務所から抜け出したホーは台湾出身で、母は亡くなり、父とともに香港に移住して、重慶マンションで管理を行い、二人暮らしをしていた。ホーは飲食店で、元恋人が結婚すると聞いて怒り心頭の女性と出会い、交流を深めてようとするが、女性にその気はなかった。ウォンは、ブロンディという女性と出会い、関係を持ってしまう。ビジネス上のパートナーはウォンとブロンディの関係を察知し、最後にウォンに仕事を依頼する。ウォンはターゲットの暗殺を企ているが、相手の反撃を受け、失敗してしまう。日本居酒屋の店主がビデオで日本にいる家族にメッセージを送るのを撮ったホーは、自分の父をビデオに収める。
レビュー
1995年に公開され、当初は「恋する惑星」の3つ目のエピソードとして考えられていたものの、「恋する惑星」から独立したエピソードとして制作されたのが、この「天使の涙」です。香港フィルムアワードでは、助演女優賞、撮影賞、楽曲賞を受賞しています。Rotten Tomatoesでの批評家評価では95%の高評価を得ており、また、観客評価でも87%と高評価を得ている作品でもあります。
物語は、殺し屋ウォンとそのビジネス上のパートナー、重慶マンションの管理人の息子ホー、失恋した女、ウォンと関係を持つブロンディの5人が、さまざまな想いを持って交錯する模様が描かれています。その話は結構ややこしく、お互いの関係が微妙なところで接触を持つという点で、ドラマティックなストーリーが展開されます。
冷酷な殺し屋ウォンは、物語上でミスなくビジネスパートナーからFAXで依頼されたターゲットを殺害していきますが、このシーンは結構アクション映画っぽい演出がなされています。派手な血糊の飛び方とか、暗殺シーンでのウォンの2挺拳銃での暗殺実行など、スタイリッシュな演出がなされています。その中で、ウォンは殺しの仕事を辞めようと考えますが、ウォンと仕事をしているビジネスパートナーは、いつの間にかウォンに恋をしているところも、この映画の特徴ではないかと思います。
一方で別の話として、刑務所から抜け出したホーという男は、台湾から実父とともに香港に移り住んでいて、子供の頃にパイナップルの缶詰を食べすぎたために口が聞けない設定になっています。「恋する惑星」でも警官223を演じた金城武が、同じ役名で(でも警官ではなく犯罪者)演じているので、「恋する惑星」との関連性を感じるところでもあります。そのホーが、飲食店で元恋人が結婚するというので電話で怒り狂っている女性と遭遇し、彼女に惚れてしまいますが、女性にはその気はないところに、ドラマティックであると感じます。
殺し屋ウォンは、ブロンディと関係を持ち、それを察知したビジネス上のパートナーは最後の仕事の依頼をし、ウォンはターゲットを抹殺しようとしますが、ターゲットの逆襲に遭い、自分が逆に抹殺されてしまうという事態に陥ります。この辺は、殺し屋の末路としてあり得る話かなと感じます。また、ホーは、親しくなった日本居酒屋の店主が、日本に住む家族に当ててビデオレターを撮っているのを見て、自分の父を撮影し始めます。だらしのない実父ですが、ホーにとっては大切な家族で、ホーの撮った実父のビデオは、その後の人生に光を与えうるものになっています。
映像はカラーとモノクロを交錯させ、インパクトのある映像表現をしています。また、時代背景もあるのでしょうが、登場人物がタバコを吸うシーンが多く、それが印象に残るようになっています。登場人物の性格を表すのに、タバコというのは欠かせない小道具ではないかと思います。「恋する惑星」に続いて、CDジュークボックスがここぞとばかりに印象的なシーンで登場するのも、この映画の特徴ではないかと思います。あとは雨のシーンは多いです。香港という土地が雨の多い場所だと思うのですが、雨が物語に彩りを与えています。
2010年にアメリカではKino LorberからBlu-rayがリリースされた「天使の涙」は、今回、CRITERION COLLECTIONの「WORLD OF WONG KAR WAI」というBlu-ray BOXセットでリリースされています。Blu-rayですので解像度は2Kですが、マスターは4Kで製作されているため、意外と解像度は優れています。ただ、グレインノイズやモノクロシーンでの画面のピクセル化は避けられない状態であるといえます。音響はdts-HD MA 5.1chで収録され、香港の雑踏の音の移動感が魅力的に溢れているサウンドフィールドを構築しています。「恋する惑星」もそうですが、このCRITERION COLLECTIONのBOXセットは、どうもデータ読み取りに一部プレイヤーで難があるらしく、途中でフリーズしたり、映像をスキップしたりする現象が起きています。この「天使の涙」も物語中盤でフリーズし、何分かスキップして再生されるという不具合を持っています。
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