SKY CAPTAIN and the WORLD of TOMORROW
邦題 | スカイ・キャプテン ワールド・オブ・トゥモロー | |
レーベル | PARAMOUNT HOME ENTERTAINMENT | |
制作年度 | 2004年 | |
上演時間 | 106分 | |
監督 | ケリー・コンラン | |
出演 | ジュード・ロウ、グゥイネス・パルトロウ、アンジェリーナ・ジョリー | |
画面 | 1.85:1/アナモルフィック | |
音声 | DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語 DOLBY DIGITAL 2.0ch フランス語 |
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字幕 | 英語、スペイン語 |
あらすじ
1930 年代のニューヨークに突如、謎の飛行型ロボットが来襲し街を破壊し始める。街の危機を受けてスカイ・キャプテンことジョーは自身の戦闘機を駆使してかろうじてニューヨークを守った。その少し前ジャーナリストのポリーは科学者の一人から自身の身の危険とトーケンホフなる人物の野望を食い止めるよう依頼を託された。ジョーとポリーはニューヨークでのロボットによる街の破壊のあとに合流をし、過去のお互いのいきさつによりいがみ合いつつも調査を開始する。しかし調査も始まったばかりのところでスカイ・キャプテンの秘密基地が急襲されててしまいほぼ全壊状態となり、かつ彼の相棒である技術者のデックスも誘拐されてしまう。唯一デックスが残した地図を元に彼らはトーケンホフの居場所を探し始める。果たして彼らは彼の野望を食い止めることが出来るか、そしてその野望とは。
レビュー
作品の題名からして何となく想像が付くかと思いますが、ヒーローが大活躍するアクション映画がこの「スカイ・キャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」です。
ただしこの作品単なるヒーロー映画ではないのが味噌です。「スカイ・キャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」が目指したものは物語の時代背景となっている 1930 年代に流行した冒険活劇映画の現代版リメイクというところにあります。
時代背景は前述の通り 1930 年代ですが、最初に飛行船ヒンデンブルグIII号が登場する時点で非現実感を感じるのではないでしょうか。(現実ではヒンデンブルグ号はニューヨークに到着することもなく爆発してしまいましたし、そもそも 3 号機など建造されていません。) そのヒンデンブルグIII号に搭乗していた科学者がジャーナリストのポリーと出会い、トーケンホフの「週末の日」の野望の一端を聞かされた辺りで突然ニューヨーク上空に両手を広げて翼にしたロボットの大群が現れ、地上に落下して街を破壊し始めます。するとすぐに誰かが何の前触れもなく「スカイ・キャプテンを呼べ。」と無線で救難信号を送り、それに呼ばれてあっという間にヒーローが戦闘機に乗って登場し大活躍を始めるのですから、物語構造としてはかなり簡素化されているのではないかと思います。つまりヒーローが最初から当たり前のようにいる展開を最初に持ってきてしまうのですから最近の作品にしては珍しいともいえます。
その後も何の状況説明もなく、ジャーナリストのポリーとスカイ・キャプテンことジョーが知り合いで行動をともにし始めたり(後で会話で過去のいきさつが少し語られたりしますけれど)、テンポが早いといえばいいですが、相当登場人物の背景を省略してしまっているともいえます。そのためにキャラクターに感情移入がしにくくなっていますが、冒険活劇物というジャンルの再現と考えたらそれは意図したものではないかと思います。
ただそのためにヒーローの危機にはらはらどきどきする感覚がないのが少し難点だともいえます。もうヒーローであるジョーとヒロインのポリーが死ぬことはないという前提の上に作品が成り立っていますからその辺は少し物足りないところではあります。
その分監督自らが考え出した様々なロボットやトーケンホフの生み出した遺伝子操作されたクリーチャーたちの活躍は楽しいところでもあります。まるで 1930 年代に制作された連続活劇漫画映画「スーパーマン」に登場するロボットを彷彿させるものがあります。前述の両腕を翼にしたロボットですとか、鳥のように翼をばたつかせている戦闘機などはそういうところから影響を受けているのだろうと思います。(もしかすると漫画映画「スーパーマン」に影響を受けた宮崎駿監督の初期の作品に登場するロボットの影響が強いのかもしれませんが。オマージュのオマージュといったところでしょうか。)
またジョーの登場する戦闘機が実は潜水艦になったりするところも意外であっという驚きを与えてくれます。
少々残念なのが戦闘機に乗ってニューヨークの街中やスカイ・キャプテンの秘密基地での攻防戦、アンジェリーナ・ジョリーが扮するフランキーの率いる飛行空母とその戦闘機の戦闘戦がかなり面白いのに対して、ジョーとポリーがトーケンホフの野望を止めるべく彼の秘密の島に入ったあとのストーリーが今ひとつ面白くないのです。これは後半ジョーが秘密兵器を余り使わないところにあるように思います。やはりヒーローにはかっこいいガジェットがないとダメなのではないかと思います。
どちらにしても、最新のテクノロジーを使ってあえてレトロなストーリーやイメージを生み出しているところはこの「スカイ・キャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」という作品を良くも悪くも位置づけているように思います。後、映画の中で「オズの魔法使い」を上映しているところとエンディングで同映画で使われ有名になった「虹の彼方に」が使われているのもその象徴だとも言えるかと思います。
映像の質自体は大変高いのですが、何度も書いているように冒険活劇のリメイクということもあってか、色調は意図的にセピア風にしたり、非現実的なコントラストの高い色使いをしているところが印象的です。また CG を使っているのにもかかわらずあえてミニチュアを使ったりしているかのような映像や合成がしっかりばれているような映像を使用しているところもあります。ここまで徹底していると気持ちいいぐらいです。音響に関しても多少誇張したサラウンドを生成しているように感じます。0.1ch の効果が大きいというのも印象的です。
尚、映像特典の中には 1998 年に監督自らがこの作品の原点となった 6 分間の短編が収録されています。こちらはまさに連続冒険活劇その物の作りで、第一話だけしか収録していないのがもったいないぐらいです。もっとも第二話以降が制作されたのかは不明ですが。
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