STAR TREK GENERATIONS
邦題 | スタートレック ジェネレーションズ | |
レーベル | PARAMOUNT HOME ENTERTAINMENT | |
制作年度 | 1994年 | |
上演時間 | 117分 | |
監督 | デヴィド・カーソン | |
出演 | パトリック・スチュワート、マルコム・マクダウェル ウィリアム・シャトナー |
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画面 | 2.35:1/アナモルフィック | |
音声 | DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語 / DTS 5.1ch 英語 DOLBY DIGITAL 2ch 英語、フランス語 |
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字幕 | 英語 |
あらすじ
時は 23 世紀、惑星連邦はリタイアした伝説の艦長ジェームズ・T.カークを招待して新造艦エンタープライズ B のテスト航海を行った。その途中、エル・オーリアン人を乗せた旅客艦の救難信号を受け、躊躇の末に救難に向かう。現場では謎のエネルギーリボンが旅客艦を捕らえていて、2 隻のうち 1 隻は撃沈、もう 1 隻も数十名を救難出来ただけあった。更にエンタープライズ B 自体がエネルギーリボンに捕らわれて危機一髪の状況になる。カークの必死の活躍により、エンタープライズBは窮地を脱するが、その代償としてカークの生死が不明になってしまう。
78 年後の 24 世紀。ジャン・リュック・ピカード艦長指揮下のエンタープライズ D はアマゴサ星系の観測基地が襲撃を受けたという報告を受け、調査に乗り出す。基地にはソランと名乗る科学者がいて、ピカード艦長に基地にて研究を続けたいと申し出る。そしてソランの不可解な行動から 78 年前のエネルギーリボンとベリディアン星系の命運に関係していることを突き止め、事態の解決を図るべくベリディアン星系に急行する。しかしエンタープライズ D の前にはかつての因縁があったクリンゴン人のルーサとべトールが立ちはだかっていた…。
レビュー
映画版「スタートレック」の第 7 作目ですが、絶大な人気を誇った TV ドラマ「新スタートレック:ザ・ネクスト・ジェネレーション」の映画版という位置づけですから実質は第 1 作目といえると思います。
初めにこの作品の最大の欠点を書いておきたいと思います。この作品の最大の欠点は TV シリーズを見ていないと、設定がほとんど分からないことと登場人物の感情に移入しづらいことにあります。特に登場人物については 7 年間という長期間に渡って作り上げられてきた背景がありますので、それを知っていないと表層的に見えてしまいます。つまりこの作品は TV シリーズの延長線上にある映画だという予備知識は必要だろうということです。
そうした欠点を抱えながらもちゃんと物語としてはテーマを持っているところがあり、個人的には「新スタートレック」の映画シリーズの中では一番好きな作品なのですが、そのテーマは何かといったら、「喪失」ということなのではないかと思います。
まず物語冒頭では「スタートレック:ザ・オリジナル・シリーズ」〜映画版「スタートレック」で活躍した宇宙艦エンタープライズが新造艦に変わり、艦長も変ってしまいます。伝説の艦長だったカークは既にリタイアしていますが、自分の指揮しないエンタープライズに複雑な心境を抱いています。これがまず一つ目の喪失です。
続いてエネルギーリボンでの対応では一時的に現場復帰するカークですが、その結果が生死不明の状態になってしまいます。これが第二の喪失です。
ピカード艦長の時代になるとピカード艦長の兄と甥が不慮の事故でこの世を去るという喪失を味わいます。これが第三の喪失です。
アマゴサ星系の観測基地にいたソランは実は 78 年前のエネルギーリボンでの事故で生き残ったエル・オーリアン人です。彼はボーグによって自分の愛する家族を失っています。これが第 4 の喪失です。
べディリアン星系でのクリンゴン人との対立でエンタープライズ D は大破をしてしまい、結局回収不能の状態になります。これが第 5 の喪失です。
そして最後、ソランの企みを防ぐべく戦ったカークには本当の死が待っていました。これも喪失であるといえます。正確には冒頭の生死不明の部分は真の喪失ではなく、このラストがカークという伝説の艦長の真の喪失になるのだといえるでしょう。
その他にも細かいショットで喪失に関係する映像が出てきますが、そういったシーンがかなり積み重なっているのがこの作品なのではないかと思います。
今回一応敵役になっているソランですが、彼のやろうとしていたことはネクサスと呼ばれるエネルギーリボンの中に捕らわれると自分の思った通りの虚構の世界の中で生きていられるために愛する家族とずっと一緒にいられるというとても個人的な想いによって行動しています。しかしそのために彼はベリディアン星系に住む 2 億人以上の異星人を抹殺してまでも実現しようとしてしまうのです。個人の想いのために数多くの人の犠牲を出してはいけないということからソランの心情は分かるもののピカードはソランと対決をせざるを得なくなります。そしてそのソランの行動を阻止できずに一度はベリディアン星系は壊滅し、ピカードはネクサスに捕らわれてしまいます。そして彼自身が自分の現実世界では手にいれることの出来なかった家族というものを手に入れ、その幸せを感じるのです。しかし、ピカードはこれは現実ではないのだということを認識し、同じくネクサスに捕らわれ偽りの幸せを手に入れていたカークを説得し、再度現実に立ち向かうことになるのです。
この作品の救いといえば、「喪失」をテーマにしながら最後はそれを受け入れてもう一度未来に想いを馳せているというところでしょうか。「喪失」にこだわるということは過去にこだわることです。過去は 2 度と戻っては来ません。そういった現実をピカードが受け入れるところでラストは余韻の残るものになっています。
その他にも人気キャラクターのアンドロイド、データ少佐の感情にまつわるエピソードも興味深いものではありますが、今回は省略いたします。
そもそもこの作品は TV シリーズ終了後すぐに制作が開始されたということですので、TV シリーズの雰囲気を一番持った作品なのではないかな、と思います。ただそれを映画館で上映する作品にしてしまった段階でどうしても映画的な見せ場を作らないといけなくなり、それが物語をスポイルしている面もあります。宇宙艦同士の戦闘シーンやソランとのアクションシーンなどはそういう風にも感じます。
映像は特徴的な色使いではなく、自然な色調だと思いますが、DVD の鮮明な映像を見ていると、ビデオマスターの制作に使ったフィルムに少し劣化が見られるシーンもあります。気になるほどではないですが、気付く人は気付くかなと思います。音響はすばらしいサウンドフィールドを形成していますが、近年の作品で多い大音量かというと意外と落ち着いた雰囲気が感じられます。宇宙艦同士の戦闘シーンですら少しおとなしめかな、という感触を持ってしまいます。また「新スタートレック」の映画版のうち、この作品のみサウンドトラックを担当しているのが TV シリーズでの常連、デニス・マッカーシーというのもその印象を強くしているのかもしれません。
尚、この作品、クレジットには出てきませんが、ウーピー・ゴールドバーグ扮するエル・オーリアン人のガイナンが重要な役割で出演しています。ピカード艦長の助言者という立場で、TV シリーズに度々出演していましたので、その辺を知っているといないとでは作品の見方が変わってくるものと思います。
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