ブロンド(DOLBY VISION/Netflix)
No Image | 原題 | BLONDE |
レーベル | Netflix | |
制作年度 | 2022年 | |
上映時間 | 167分 | |
監督 | アンドリュー・ドミニク | |
出演 | アナ・デ・アルマス、エイドリアン・ブロディ、ボビー・カナヴェイル | |
画面 | 1.00:1&1.37:1&1.85:1&2.39:1/DOLBY VISION | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
1933年のロサンゼルス。少女だったノーマ・ジーンは母と二人暮らしだった。父は母と恋に落ちていたが、母がノーマを身籠ると、母を捨ててしまった男で、著名な人物だったらしい。母はノーマを可愛がると同時に虐待を行い、精神的に病気に陥り、ノーマは児童保護施設に預けられることになる。1952年になると、ノーマはグラビアモデルになるようになり、時にヌード写真にも挑んでいた。ある時、ハリウッドのキャスティング・ディレクターが彼女にSEXを強要することで、映画の主演を務めることになった。その映画がヒットし、ノーマは芸名マリリン・モンローとして一躍ハリウッドのセックスシンボルとして上り詰める。ノーマは、同期の俳優であるチャップリンの息子であるキャスやエディと親しくなり、3Pを繰り広げ、キャスの子供を身籠ることになるが、赤ん坊は中絶させられることになる。その後もハリウッドスターとして人気を博していき、元プロ野球選手であったジョー・ディマジオと結婚をすることになるが、グラビアモデルの写真を見せられたジョーは怒り狂い、ノーマに離婚を言い渡す。ハリウッドで有名になったノーマの元に実の父から手紙が届くようになり、その手紙には「会いたいが、事情がありなかなか会うことができない。でもいつか会いたい」という内容が記されていた。1955年にはニューヨークで戯曲に挑むノーマは、戯曲家のアーサー・ミラーと出会い、2人は結婚する。ジョーの時もアーサーの時もノーマは相手を「お父さん」と呼んでいた。ノーマはアーサーの子を身籠るが、海岸で転んでしまい、また赤ん坊を流産してしまう。そのためにアーサーとの関係がギクシャクし、2人は離婚する。それでもハリウッドスターの地位を維持していたノーマだったが、1962年になるとケネディ大統領と関係を持つようになり、ケネディ大統領の子供を孕ってしまい、また中絶されられる。3度にわたる子供の中絶、流産がノーマの心を蝕み、彼女は次第に落ちていく。
レビュー
ジョイス・キャロル・オーツの原作小説を映画化し、実在のハリウッドスターだったマリリン・モンローの知られざる内面をフィクションとして映像化したNetflixオリジナル映画が、この「ブロンド」です。167分という大作映画になっていますが、映画評論家および観客からの評価はかなり低く、Rotten Tomatoesの批評家評価は43%、観客評価も32%と低迷しています。また、主役であるマリリン・モンローのセックスシーン等がふんだんに描かれているために、アメリカではNC-17という17歳未満は映画視聴不可というレーティングを食らっている作品でもあります。
マリリン・モンローといえば1950年代のハリウッドでセックスシンボルとして活躍した女優でありますが、その真の姿であるノーマ・ジーンについては、さまざまな憶測が囁かれていました。この映画の原作である小説は、そのノーマ・ジーンの知られざる裏の側面を想像で膨らませたものであり、ある種の解釈を定義したものであると言えるでしょう。映画で起こる事件等は基本的に事実ではあるものの、その事件に遭遇するノーマの思想は、完全に作者の考えるオリジナルな定義であり、この映画を見たことでマリリン・モンローの全てがわかる、というものではないと考えています。
この映画によれば、ノーマを終始悩まさせていたものは、父から得られなかった親子愛であり、ノーマは人生をかけて父からの愛情を求めて生きていく、ということになっていると言えると思います。ノーマがマリリン・モンローとしてハリウッドスターにのし上がると、父と名乗る人物から手紙が届き、父が「会いたい」という内容の手紙を何回も送ってくるところは、その象徴であると思いますし、ノーマが結婚したジョー・ディマジオやアーサー・ミラーのことを「お父さん」と呼び続ける姿も、父の愛情を欲している証拠ではないかと思います。また、母からは愛情と共に児童虐待を受けていたことも、ノーマの精神に深い傷を残しており、家族愛に人一倍憧れる女性として描かれているのではないかと思います。
その一方で、ハリウッドのセックスシンボルとして、マリリン・モンローとして人気を博していく姿もノーマの一側面にすぎないことがわかるようになっています。ノーマ自身は真の自分と人気を博すマリリン・モンローとしての自分のギャップに悩み続けていました。マリリン・モンローとしては、無名時代にヌード写真を撮っていたこともあり、ノーマのセックスシンボルとしてのマリリン・モンローの位置付けがノーマを苦しめていたことになります。主役のノーマを演じたアナ・デ・アルマスはこの映画で大胆にもヌードを多くのシーンで晒していますが、それこそが観客の期待するマリリン・モンローであり、ノーマ・ジーンではないというところにギャップの大きさを表していると思います。また、無名だったノーマがハリウッドスターになるきっかけになった映画のキャスティングには、キャスティング・ディレクターによるSEX強要があり、今でいうセクハラであると言ってもいいかと思います。これは1950年代のことだけではなく、今のハリウッドでも形を変え、継続している問題であり、女優たちが声を上げた事件は記憶に新しいところであります。
フィクション映画ではありますが、マリリン・モンローの主演作の制作や、結婚等の事実については大胆に変更することなく描かれています。僕自身はマリリン・モンローの映画は見たことはないのですが、マリリン・モンローを象徴する地下鉄の排気口からくる風をスカートに浴びて、スカートが捲り上がるシーンも再現されていて、断片的にしかマリリン・モンローを知らない人でも十分に楽しめるようにはなっています。ただ、話自体は結構長いです。マリリン・モンローの活躍した10年程度の期間をじっくりフィクションとノンフィクションを交えながら描き切っていますので、上映時間が長くなるのも致し方ないところでしょうか。
映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。マスターデータは4Kですので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。映像のアスペクト比のメインが1.37:1で、ときおり1.85:1や2.39:1、一部だけ1.00:1という可変アスペクト比で収録されていますが、映像は窮屈な感じを受けます。おそらく映画がワイドスクリーン化する前の時代がメインだったので、意識的にスタンダードサイズである1.37:1をメインで描いていたのだと思いますが、主軸が窮屈に感じる分、ワイドスクリーン化した時には開放感を感じます。また、映像自体もモノクロが主体なのでDOLBY VISIONによるHDR効果も輝度がメインになってしまいます。カラーも1950年代の映画を意識したのか、現代風の色彩ではなく、1950年代のフィルム調の色彩をしています。この辺はインパクトあると思います。解像度自体は不満のない高精細の映像だと思います。
音響はDOLBY ATMOSです。ドラマということもあり、DOLBY ATMOSの効果がどれだけ出ているのか視聴前は疑問を持っていましたが、映画を見ると、登場人物のセリフ自体がオブジェクト化して視聴者の周囲を動き回りますし、物語冒頭のロサンゼルスの山火事のシーンでは炎の動きが頭上を駆け巡り、1950年代のハリウッドのスタジオでは航空機のジェットエンジンの音が頭上を通り過ぎ、観客の声援や環境音は視聴者の周囲を取り囲むと言った具合に三次元サラウンドがこれでもか、と言った具合に展開されていて、視聴の手助けをする役割を見事に果たしています。
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