ナイブス・アウト:グラス・オニオン(DOLBY VISION/Netflix)
No Image | 原題 | GLASS ONION:A KNIVES OUT MYSTERY |
レーベル | Netflix | |
制作年度 | 2022年 | |
上映時間 | 139分 | |
監督 | ライアン・ジョンソン | |
出演 | ダニエル・クレイグ、エドワード・ノートン、ジャネール・モネイ | |
画面 | 1.85:1/DOLBY VISION | |
音響 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
大企業であるアルファ社の経営者であるマイルズ・ブロンは、彼が出資している知人たちにパズルでできていたパーティーの招待状を送っていた。マイルズは水素燃料を使った新しいエネルギー装置を世に発表しようとしていて、それは「クリア」と呼ばれていた。そのパーティーの席に名探偵の名で世の中に知られるブノワ・ブランも呼ばれていた。マイルズはブノワには招待状を送ってはいなかったのだが、ブノワの手元には招待状があった。それで、マイルズはブノワもパーティーのメンバーに加え入れる。マイルズのパーティーは、殺人事件が起こるという展開で、その謎解きをするためのものだった。パーティーの参加者には、かつてのアルファ社の共同経営社で、水素燃料の開発をめぐって対立し、マイルズに敗訴したためにアルファ社を去ったアンディの姿もあった。マイルズの知人たちはアンディがパーティーに出席していることに驚く。マイルズや知人たちの思惑が交差する中、パーティーの席でマイルズが仕掛けた殺人事件の謎を事件が起きる前にブノワが解いてしまって、座を白けさせる。しかし、その後、知人の一人であるデュークが酒を飲んでいる時に突然死んでしまう。何者かが酒に毒を入れたと推測されたが、ブノワは沿岸警察に連絡するよう知人たちに指示する。そして、マイルズが仕掛けた殺人事件のゲームの関係で室内の照明が全て落ちる。その中、ブノワはアンディと落ち合い、会話を交わすのだが、その途中で何者かがアンディを銃で射殺する。そして、ブノワの謎解きが始まった。
レビュー
劇場用映画として2019年に大ヒットを記録した「ナイブス・アウト:名探偵と刃の館の秘密」で一躍有名になった名探偵ブノワ・ブランを主人公にしたシリーズ第2弾がこの「ナイブス・アウト:グラス・オニオン」です。第1作目は北米ではLIONSGATEが配給していましたが、この「ナイブス・アウト:グラス・オニオン」以降のシリーズはNetflixが配給権を獲得し、全世界同時配信を行なっています。北米では大手チェーン映画館が1週間限定で劇場公開をして、かなりのヒットを記録したことから高い評価を得ていて、Rotten Tomatoesの批評家評価は93%、観客評価も93%と極めて高い評価を得ています。
今回、ブノワ・ブランが挑む殺人事件の謎は、大企業であるアルファ社の経営者であるマイルズ・ブロンが知人たちと開催するパーティーの殺人事件ゲームに参加して、そこで起こる本当の殺人事件の謎の解決に挑む、というものです。しかし、話はそう単純ではなく、パーティーの殺人事件ゲームに参加する前からブノワはある人物から身内が死んだことの真相を調査依頼され、そのためにマイルズのパーティーの殺人事件ゲームに参加することになる、という複雑な展開を見せています。
その為、物語後半に至るまで、ブノワがなぜマイルズの主催するパーティーに参加しているのかが謎になっています。マイルズは知人たちにしか招待状を送っておらず、ブノワには招待状を送っていないからです。しかし、ブノワは招待状を持っていて、マイルズもその招待状を知っていることから、彼をメンバーに加えることにしますが、そのあたりからずっと物語後半に至るまで、何気ないシーンの一つ一つが後半の謎解きに向けての伏線になっていて、ふと見逃してしまいそうなシーンが、後で効いてくる仕掛けになっています。
そして、マイルズの仕掛けた殺人事件ゲームの謎をゲームが始まる前に解き明かしてしまい、マイルズを白けさせるシーンなどは、名探偵物のパロディっぽくて、笑えます。その後に本当の殺人事件が起こり、ブノワの謎解きが始まるのですが、そこからが物語の真の展開になっていて、前半の展開が後半の展開を描くための前座に過ぎないことが徐々に明らかにされます。ブノワがなぜマイルズのパーティーに参加できたのかを始め、ある人物からの調査依頼の内容とマイルズの関係、マイルズと知人たちとの関係、そして「クリア」と呼ばれる水素燃料の行方など、後半で怒涛の如く謎解きが行われる展開には、普段の名探偵ものとは一味違う雰囲気を持っていて、面白いです。
クライマックスで殺人事件の犯人の正体はわかるのですが、犯人は自分の容疑を認めようとしないどころか、その証拠隠滅ですら図ってしまいます。その後の予想外の展開とミステリーに相応しくない派手なオチの仕方には、呆気にとられると同時に、結構スカッとする展開になっていると思います。
物語前半と後半の密度が異なるため、ミステリー物としては意外な展開になっていますが、それがこの作品の面白さを醸し出していると思います。パーティーに参加しているアルファ社の元共同経営社であるアンディが何を考えているのか、前半では謎でしたが、後半で真相が明らかにされ、アンディのマイルズに対する復讐劇であると言えなくもないです。正確には少し違う部分はありますが、それを詳細に書いてしまうと、この作品の謎のネタバレになってしまうので書けませんが、それが物語のキーになっていることは確かです。そして、クライマックスではブノワは何も活躍していません。事件の真相はある人物によって暴かれることになります。その人物がブノワと関係あり、ブノワもその人物に任せた感はあります。
映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。マスターデータが4Kですので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。画質はネイティヴ4Kですので、高精細な映像を堪能できます。また、色彩管理がDOLBY VISIONですので、適切な明暗さがあり、暗いシーンでの登場人物の表情の描き分け等に効果を発揮しています。色管理で言えばカラフルな色彩ではなく、赤みがかったトーンで描写されていますが、フィルム的色調で好感が持てます。
音響はDOLBY ATMOSで収録されています。サラウンドは観客を取り囲むかのようなイマーシヴ・サラウンドであり、音の位置関係がはっきり描き分けられています。マイルズが借用しているモナ・リザの絵の防護装置が絶えず作動していて、そのシャッター音が鳴り響く様は、結構印象的です。この音が登場人物の位置のカメラによって、前後左右に移動する様がリアルです。また、クライマックスのシーンはかなり派手なサラウンドをしていて、音の方位感が迫力あります。
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