ディヴォーション:マイ・ベスト・ウイングマン(DOLBY VISION/Netflix)/Apple TVで観た映画のレビュー
配信仕様
No Image | 原題 | DEVOTION |
レーベル | Netflix | |
制作年度 | 2022年 | |
上映時間 | 139分 | |
監督 | JD・ディラード | |
出演 | ジョナサン・メジャーズ、グレン・パウエル、クリスティーナ・ジャクソン | |
画面 | 2.20:1/DOLBY VISION | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語 | |
字幕 | 日本語 |
あらすじ
1950年、南北朝鮮の緊張が高まる中、アメリカ海軍の基地に新たに配属されたトムは、パイロット仲間になる黒人のジェシーと出会う。ジェシーとトムはコンビを組むことになり、次第に二人の仲は深まっていくが、ジェシーは黒人であったがために過去から言われなき差別を受けてきていて、そのことを忘れないようにしていた。ジェシーには妻と娘がいて幸せな家族がいたが、トムは独り身だった。そんな二人が南北朝鮮の緊張悪化を受けて、空母レイテに乗り込み、新しい戦闘機に搭乗して訓練を繰り返す。しかし、ジェシーは新しい戦闘機に馴染めず、訓練の結果も最低点を取る始末だった。それでも、レイテの搭乗員として絆を深めていったジェシーとトムは、休養で寄ったカンヌでエリザベス・テイラーとも出会い、楽しいひと時を過ごす。そして、南北朝鮮の緊張は最高潮に達し、北朝鮮が南朝鮮を侵攻し始めたため、トムとジェシーたちは北朝鮮を支援する中国の部隊の進軍を阻止する目的で、境界線の橋を破壊する任務を受ける。トムの命令を無視して橋の爆破を図るジェシーは、その任務を成功に導くが、トムの報告書に命令無視と書かれたことで、ジェシーの名誉は穢され、トムもその話を聞き、落ち込む。南朝鮮で中国軍の攻撃を防戦していたアメリカ軍を支援するために、トムたちは中国軍に空から攻撃を仕掛けるが、その際にジェシーの搭乗する機体が損傷し、地上に不時着せざるを得なくなる。
レビュー
1950年の朝鮮戦争を舞台に、アメリカ海軍初の黒人パイロットであるジェシーと、彼のパートナーになったトムとの友情と信頼、朝鮮戦争での二人の活躍と悲劇を描いた実話を元にした映画が、この「ディヴォーション:マイ・ベスト・ウイングマン」です。アメリカでは、Sony Picturesが劇場公開をしていたのですが、ホームビデオリリースではParamount Picturesが配給権を持っているという謎の関係を持っていて、さらに海外市場ではNetflixオリジナル映画として配信され、日本では劇場未公開とややこしい権利関係が存在しています。興行収入は製作費を大幅に下回り、失敗作なのですが、映画評では比較的高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は80%、観客評価は92%と意外と高い評価を得ています。
実話をベースにした内容の映画ということもあり、原作本が存在しているのですが、その本で書かれた内容を映像化しています。戦争映画は数多くありますが、ハリウッド映画で朝鮮戦争を舞台にした映画は少し珍しいのではないかなと思います。その時代背景自体が珍しいのと、当時としては珍しい黒人パイロットがアメリカ海軍で活躍するという展開に、最初は違和感を感じたものですが、物語が進むにつれ、黒人パイロットであるジェシーが黒人であるがために受けた差別の数々のことが明らかになってきて、やはり時代背景に即した展開なんだな、と実感しました。
その割にはジェシーと交友関係を結び、戦闘機のパートナーになるトムとの友情が意外と偏見も差別もなしにあっさり繋がれるのには、想定外だった感じはします。トムという白人パイロットが人種差別に対して寛容だったのか、同じ海軍の仲間なので差別も偏見もなしに受け入れたのかはよくわからないところもありますが、物語冒頭からトムとジェシーは友好関係を結んでいるところはあります。ただ、トムもジェシーに対して良かれと思ってした行為がジェシーを傷つけていたところもあり、その辺はやはり人種差別に対して無知であったかのような演出はあるかと思います。
それでも、この物語は白人であるトムと黒人であるジェシーが強い絆で結ばれ、朝鮮戦争勃発の中、困難な任務に他のパイロットも含めて立ち向かっていく、という絆をテーマにした物語であると言ってよく、その辺はパイロットメンバーの熱い友情が全面に出ていたように思えます。
パイロットメンバーが新しい戦闘機に搭乗し、訓練を続ける中で、ジェシーが戦闘機に慣れずに空母に着艦するのを失敗しかけるシーンとか、パイロットの一人が空母着艦に失敗し、海に墜落するシーンなどは、結構リアリティあるかなと思います。特にジェシーが新しい戦闘機に対する不安を口にするシーンは、彼の恐怖心を表しているものと言え、印象に残ります。
その一方で、ジェシーは愛する妻と幼い娘がいて幸せな家族を持ち、反対にトムは親はいるものの家業は継がずにパイロットになり独り身である、という対照的な人生を歩んでいて、それがこの二人のキャラを立たせる要因になっているかと思います。そして、ジェシーが空母が寄港したカンヌで人気女優であったエリザベス・テイラーと知り合いになり、フランス語を駆使して彼女のカジノに参加するシーンなどは、ユーモラスであると思います。
物語後半は朝鮮戦争が勃発し、北朝鮮を中国が支援するのを阻止するために空母レイテから戦争に参加するのですが、その戦闘シーンはかなり迫力満点です。ラストは意外な展開でちょっとしんみりするのですが、そこに至るまでのトムとジェシーの絆が強いだけに、その戦闘シーンの展開は結構グッとくるものがあります。
映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。デジタルカメラで撮影され、4Kマスターを作っていますので、ネイティヴ4Kでの配信になっています。デジタルカメラで撮影はされていますが、フイルムの粒子のようなものは画面全体に載っていて、一見するとフィルム撮影かと思わせるところはあります。解像度はかなり高精細ですが、色調がフィルムっぽい彩度を落とした色調なのと、少し赤みがかった色調になっていますので、格別カラフルというわけではありません。戦闘シーンは銀残し的色調をしているところから、実録映画の様相を呈しています。
音響はDOLBY ATMOSでデリバリーしています。戦争映画ということもあり、戦闘機の飛翔シーンや攻撃シーンなどで縦横無尽に戦闘機が動き回るのが印象的ですが、個人的にオブジェクトを感じたのはエリザベス・テイラーのカジノのシーンでルーレットの玉が回るシーンの玉の音が一番でした。戦闘シーンはイマーシヴサラウンド全開で、ATMOSの効果がよく出ていると思います。
この映画で不思議なのは、Netflixのメニュー画面だと上映時間は100分と表示されているのですが、実際に視聴すると実は139分もあるという事実があります。Netflixの表示ミスなわけですが、100分という上映時間の短さから視聴を決めた身としては、予想外に長いなと思ってしまったぐらいです。なので、視聴される方は、上映時間は139分が正しいということを知っていたほうがいいです。
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