AD ASTRA(4K UHD Blu-ray)/アド・アストラ/輸入盤DVDで観た映画のレビュー
ディスク仕様
邦題 | アド・アストラ | |
レーベル | 20th Century Fox Home Entertainment | |
制作年度 | 2019年 | |
上映時間 | 123分 | |
監督 | ジェームズ・グレイ | |
出演 | ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ | |
画面 | 2.39:1/HDR10 | |
音声 | DOLBY ATMOS 英語/dts 5.1ch 日本語 | |
字幕 | 日本語、英語 |
あらすじ
ロイ・マクブライドはいつも沈着冷静な宇宙飛行士で、周囲からの信奉も厚かった。しかし、ロイ自身は心の奥底でいつも葛藤を繰り返していた。結婚生活も破綻し、孤独な生活を送っていた。ロイは宇宙ステーションでの勤務中、ステーションの故障を修理しに宇宙に出た際に、謎のサージ現象がステーションを襲い、ステーションは破損し、ロイも宇宙から地球の地上に落下してしまう。冷静な判断で無事に地上に着陸したロイだったが、その後宇宙軍の機密情報に触れる機会があった。謎のサージ現象はステーションだけでなく、太陽系に広がっており、地球も被害が深刻だった。そのサージ現象は海王星から発しられており、ロイが子供の頃に地球外の知的生命体を探しに宇宙を旅することになり、宇宙で消息を絶った父のクリフォードが搭乗するリマ計画の宇宙船の反物質が海王星と反応して起きていることが分かった。そのため、宇宙軍は密かにロイに対して火星に行き、火星からおそらく生きていると思われるクリフォードに対してメッセージを送ってサージ現象を止めるよう指示する。作戦を秘密裏に行うため、ロイはまず月に行き、月から火星に向けて旅立つことになる。しかし、その旅はロイの心の葛藤を抉り出し、父との交流を取り戻したいと願うようになる。
レビュー
人気俳優であるブラッド・ピットが主役を務め、自分の心の内面の葛藤と対峙しながら、自分の子供時代に自分と母を見捨てて宇宙の果てに旅立ってしまった父を探しに深宇宙に旅立つというSFドラマが、この「アド・アストラ」です。2019年のアカデミー賞では音響賞にノミネートされていますが、興行収入では北米だけでは制作費を稼ぐことはできず、全世界での興行収入でようやく制作費を回収できるという思ったほどヒットはしていない作品です。批評も評論家と観客ではばらつきがあり、Rotten Tomatoesの批評家評価は83%と高いのですが、観客評価は40%と低迷しています。
SF映画ということである程度期待をしていたのですが、物語自体はブラッド・ピット演じる主人公ロイの心の葛藤を前面に打ち出し、彼がその葛藤とどう折り合いをつけ、解決に導いていくかがメインに描かれる内容になっています。なので、派手なアクションシーンは少なく、SF要素はあるものの、人生ドラマとしての側面がかなり強い作品になっています。それは、物語全編を通してロイのモノローグ、それも心の葛藤についてのモノローグが入っていることからも明らかです。
物語自体は太陽系を襲うサージ現象の発信源が、ロイの父親で知的生命体を探しに深宇宙に旅立って消息を絶ったクリフォードの乗る宇宙船に関係あるとの推測から、クリフォードが生きているという仮定の元に息子であるロイに対して、「クリフォードにサージ現象を止めるようメッセージを送れ」というミッションを課し、ロイはそれに応じて宇宙を旅してクリフォードを探す、という展開になっています。途中で物語はロイの身に色々トラブルが起きるのですが、ロイのモノローグが強すぎて、ロイ以外のキャラクターがただ存在しているだけの状態になっているので、まさにロイの一人舞台になっている映画だと言えます。ロイ以外のキャラが死んだりしても、対して感情移入しないのもそのせいです。
物語は、ロイが抱える心の葛藤に対して、父であるクリフォードを探す中でどう折り合いをつけ、葛藤を解消していくのかが克明に描かれています。父であるクリフォードも後半で登場しますが、クリフォードは息子であるロイも、妻でありロイの母である女性を見捨てても知的生命体を探すことに執着している人物であり、その姿や行動を見て、ロイが心の葛藤から解放されていくところが、物語の肝であり、サージ現象を止めるというミッションは物語上では副次的な展開になっています。
ただ、ロイの内面の葛藤がメインの話とはいえ、SF映画でもありますので、割と現実的な宇宙開発に則った描写があり、近未来的な人類の宇宙進出は多分こうなるだろうという描き方をしています。リアルな描写であり、その辺は現実的なのでロイの心の葛藤に対して観客が同意したくなるような設定が用意されています。
映像は4K/HDR10で収録されています。デジタルマスターが2Kですので、アップスケール4Kでの提供になっています。解像度はアップスケール4KなのでBlu-rayよりは多少解像度が高いかな程度ですが、HDR10による色彩管理が素晴らしく、宇宙の星々の輝きや、冷たい宇宙船内の様子などでリアリティある映像を提供しています。映像自体は撮影時にフィルムとデジタルカメラを混用しているようですので、ノイズが乗っているシーンもかなりあります。
音響はDOLBY ATMOSでミックスされています。アカデミー賞にノミネートされている音響ですが、リアルな描写が売りのせいか、思ったほどオブジェクトが自分の視聴環境を動く様子は聞こえませんでした。宇宙船の発射シーンも空気がないので音が聞こえないというリアル描写のため、オブジェクトが発生しない状態です。もちろん、音が出ているシーンでは、オブジェクトが活躍はするのですが、意外と少ない印象です。その代わりにBGMがフロントからトップにかけて広がる演出がなされており、BGMによるイマーシヴ感はよく出ていると思います。
なお、このディスクはアメリカからの輸入盤4K UHD Blu-rayではありますが、4K UHD Blu-ray Playerの言語設定を日本語にしておくと、最初のメニュー画面から日本語で表示され、日本語字幕もしくは日本語吹き替えで鑑賞することができます。ただ、このディスクをリリースしている20th Century Fox Home Entertainmentは、Disneyに買収されたために会社自体がなくなってレーベルだけ存続になっているので、ディスクはおそらくショップの在庫限りになっているものと思います。
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