ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶(HD/Amazon Prime Video)|Apple TVで観た映画のレビュー

ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶(HD/Amazon Prime Video)|Apple TVで観た映画のレビュー

No Image 原題 ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶
レーベル 青空映画舎
制作年度 2019年
上映時間 105分
監督 太田隆文
語り手 宝田明、斎藤とも子
画面 1.78:1&1.33:1/SDR
音声 DOLBY DIGITAL 2.0ch 日本語
字幕 日本語

あらすじ

太平洋戦争で唯一地上戦が繰り広げられた沖縄。そこはアメリカとの本土決戦を計画していた日本軍が時間稼ぎをするために捨て石にすべく戦った土地である。その沖縄戦の経緯や、戦いの中、凄惨な体験をした沖縄の人々の姿を、沖縄戦を生き延びた生存者や専門家へのインタビューと、アメリカ軍が撮影した戦争の様子を記録したスチル写真、モノクロ、カラーフィルムで構成したノンフィクションの作品である。

レビュー

2024年に公開されていますがマスメディアから黙殺されたドキュメンタリー映画「沖縄狂想曲」を制作した太田隆文監督の、2019年に制作した太平洋戦争末期の沖縄戦の実態に迫ったドキュメンタリー映画が、この「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」です。この作品と「沖縄狂想曲」と2作続けて、沖縄の真相に迫った作品を作っていることになります。

映画の構成としては、アメリカ軍が撮影したスチル写真やモノクロ、カラーの16mmフィルムでの戦争の記録と、沖縄戦を生き延びた人々や専門家へのインタビューで構成されています。基本的にはインタビューの割合が多く、記録映像はそんなに多く出てきているわけではありません。沖縄戦の事実を時系列に追いかけながら、インタビューを通じて視聴者に沖縄戦の実態を追体験してもらう意図があります。

沖縄戦に関しては、僕自身書籍や実際に嘉数高台公園ひめゆりの塔旧海軍司令部壕の見学を通じて認識しているつもりでいましたが、この映画での生存者の方々のインタビューを見るにつれ、自分の認識不足を痛感させられました。生存者の方々の体験した内容は凄惨で生々しく、衝撃を持って受け入れることになりました。それでもこの映画を見ることで沖縄戦の真実を俯瞰できるというのは様々な想いがクリアになった感があります。

映画の中で沖縄の人々が日本軍の横暴に苦しみ、強制自決を強いられたり、兵士としての参戦を強要されたり、自分の家族を自分の手で殺めざるを得なかったりと、まさに地獄としか言いようのない状況が次々に生存者の口から語られていきます。これが歴史の中の一コマではなく、現在の日本の社会にも通じる一見自由社会のようで社会主義的思想、全体主義的思想であるということを想起させるものであり、決して他人事として見過ごすことはできません。

そして、現在の沖縄で起きている軍備増強についても、この映画を見ることで歴史が繰り返されている、という事実を確認することができます。戦後80年近く経過していますが、現在の中国脅威論や北朝鮮脅威論による沖縄でのアメリカ軍のみならず自衛隊による軍備増強を見るにつれ、今の話として映画が訴えかけているものが見えてきます。沖縄における軍備増強は決して他人事ではなく、いずれは日本全土を覆う闇となって日本を戦争の泥沼に引き摺り込むきっかけになっていると認識しています。中国が怖い、北朝鮮が怖い、と思考停止している日本国民と、それをいいことに憲法9条を骨抜きにして軍備増強をしている日本政府のあり方は、太平洋戦争前の日本の在り方と同一の道を辿っているものであり、見過ごすことはできません。

現在、日本に必要なのは武力増強ではなく、脅威を増している中国、北朝鮮に対してどう対話をもって事態打開に向けて動くかということだと思っていますが、そういう行動を取れる政治家はおらず、軍備増強が唯一の手段と言わんばかりの行動を取る政治家ばかりです。そういう政治家は不要であると考えています。

映画の中で、沖縄の人々の「集団自決」という言葉はおかしい、という問題提起も挙げられています。映画の中で実態は日本軍からの「強制自決」であった、という証言も出てきますし、戦前の日本の教育が沖縄の人々を画一化させてしまい、アメリカ軍の捕虜になって命を生き延びさせるという発想が生まれないようにさせていたという事実は、教育の恐ろしさを浮かび上がらせています。

映画の中では特に有名なひめゆり学徒隊の話等は出てきませんが、それでもガマに逃げ込んだ沖縄の人たちが自ら死んでいった話を生存者の口から直接聞かされると、生存者ならではのリアルな話を伺うことができて、想像でその凄惨さが直接伝わるようになっています。「ひめゆりの塔」では以前は生存者の方々が直接話をする場があったと思うのですが、生存者の方々の高齢化とコロナ禍の影響でその場が消えてしまい、ビデオ上映で話を聞くだけになってしまったのは、そのインパクト度からして残念に思います。

映像はHD/SDRで配信されています。この作品の予告編では、アメリカ軍の記録映像が前面に出ていたので、記録映像メインのドキュメンタリーなのかなと思っていましたが、実際は生存者や専門家の方々へのインタビューがメインでしたので、クリアで鮮明な映像がテレビ画面いっぱいに広がるようになっています。もちろん、アメリカ軍が撮影したスチル写真や16mmフィルムも随所で流れ、こちらは当然ながら画質は悪いのですがその分臨場感があり、沖縄戦の悲劇を視聴者に訴えかけるのに成功していると思います。アメリカ軍が撮影したスチル写真や16mmフィルムでは戦死者の姿が直に映し出されていますので、そのリアリズムは尋常ではありません。

音声はDOLBY DIGITAL 2.0ch STEREO音声です。サラウンド配置ではありません。ドキュメンタリーなので5.1chにして音の作り込みで伝えたいことを音に託す必要はないと感じています。2.0chですが、生存者や専門家の方々の肉声は明瞭に聞こえ、それに尚且つ字幕でインタビューの話が画面に出ますので、理解しやすくなっています。

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