Wild(Blu-ray)|わたしに会うまでの1600キロ|輸入盤DVDで観た映画のレビュー
邦題 | わたしに会うまでの1600キロ | |
レーベル | 20th Century Fox Home Entertainment | |
制作年度 | 2014年 | |
上映時間 | 115分 | |
監督 | ジャン=マルク・ヴァレ | |
出演 | リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン、トーマス・サドスキー | |
画面 | 2.40:1/SDR | |
音声 | dts-HD MA 5.1ch 英語/DOLBY DIGITAL 5.1ch スペイン語、フランス語 | |
字幕 | 英語、スペイン語 |
あらすじ
シェリルは、女性としては珍しくアメリカ西海岸をメキシコからカナダまで続くパシフィック・クレスト・トレイルをメキシコ側から歩き始めた。最初は歩き慣れていないために足を痛め、あまりに重い荷物を持っていたために歩く速度は遅く、1日に進む距離を稼ぐことはできなかった。
シェリルがパシフィック・クレスト・トレイルを歩いていることは、他のハイカーたちの間でも話題になっていた。ハイカーがトレイルを歩く時には記録を入り口に残していくためである。シェリルもそれに倣って記録を残していたために、他のハイカーがシェリルのことを知っていたのである。
シェリルがパシフィック・クレスト・トレイルを歩くことになったのは、彼女の過去に決別するためであった。シェリルは子供の頃には父がアルコール中毒で母であるボビーやシェリルたちに暴力を振るうため、ボビーがシェリルたちと父から逃げ出していた。
また、母のボビーは乗馬が好きだったが、飼育していた馬が病気を患い、シェリルの兄弟が馬を射殺するのをボビーと共に目撃していた。馬を失ったボビーは悲しみに暮れていた。
シェリルはポールという男性と結婚したものの、離婚していた。ボビーとシェリルは同じ学校で勉学に勤しんでいたが、シェリルはボビーを学校内では無視していた。
そして、ボビーは病気を患い、長い闘病生活の末、この世を去って行った。ボビーを失ったシェリルは自暴自棄になり、見知らぬ男性達とセックスを繰り返し、ドラッグに手を出して心の傷を隠そうとしていた。
そんなシェリルだったが、パシフィック・クレスト・トレイルを踏破することで、傷ついた心を癒そうと思い立ったのである。パシフィック・クレスト・トレイルは広大な大自然そのものであり、シェリルはその広大さに苦闘するが、それでも歩く行為はやめず、自分の足でパシフィック・クレスト・トレイルを踏破していった。そして、広大な自然と対峙していくうちに、シェリルは次第に心の傷を癒していった。
レビュー
アカデミー賞受賞女優のリース・ウィザースプーンが実在のハイカーであったシェリルを演じて、アメリカ西海岸をメキシコからカナダまで整備されているパシフィック・クレスト・トレイルを踏破した女性を演じた人間ドラマが、この「わたしに会うまでの1600キロ」です。制作費がかなり低いため、興行収入は制作費を余裕で上回っています。評価も高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は88%、観客評価は75%と高評価を得ています。
この映画は、実在の女性シェリルが成し遂げた実話をベースにした本をもとに映画化されたということですので、派手な展開のストーリーにはなっておらず、淡々と大自然と主人公シェリルの心境を交互に描くことで、シェリルがなぜパシフィック・クレスト・トレイル踏破に挑戦したのかということと、シェリルがパシフィック・クレスト・トレイル踏破の中でどうやって自らの傷ついた心を癒していくのかを描いた、極めてプライベートなドラマに仕上がっています。
ほぼ男性しか踏破しないパシフィック・クレスト・トレイルに、女性であるシェリルが挑戦する、という設定だけでもフェミニズム要素が強い作品になっているようにも思えますが、実は一人の大人が傷ついた心をどう自分自身で癒して回復していくか、という人間の自己修復を描いたドラマとして見応えがあります。主要登場人物はシェリルと死んだ母であるボビーの二人だけですので、他のキャラクターは添え物的要素でしかなく、個人的感情について触れられたテーマ的には重い作品であります。
ただ、ドラマはパシフィック・クレスト・トレイルを踏破していくシェリルの様子を描き続け、彼女がパシフィック・クレスト・トレイルの踏破途中で出会う他のハイカーたちとの交流を通じて、彼女が一人ではないというメッセージを印象付け、また、その合間合間に死んだ母であるボビーとの交流をフラッシュバックで描くことで、徐々にシェリルが抱える悩みが明らかになっていく、という構成になっています。最初はなぜ、シェリルは無茶なパシフィック・クレスト・トレイルに挑戦していくのかが見えませんでしたが、物語が進むにつれて、次第にシェリルの背負った重荷がはっきりしてきて、シェリルがそれから解き放たれようとする姿に共感を覚えていきます。母との関係が重荷になっていたシェリルがそれらから解放されていく様は、新たな人生のスタートを描く希望の物語です。
映像はHD/SDRです。DIが2Kの解像度ですので、Blu-rayの解像度でも十分ですが、パシフィック・クレスト・トレイルの大自然の描写は少し物足りないところを感じさせます。もっと圧倒的高精細な描写が欲しいと感じるところはあります。それでも、シネマスコープサイズで表現されるパシフィック・クレスト・トレイルの大自然は圧倒的で、シェリルの抱える問題がちっぽけなものに見えてしまうところは、その効果を出していると言えるでしょう。色彩は色合いが豊かで、SDRに制限されているとしても効果としては十分です。
音響はdts-HD MA 5.1chサラウンドで収録されています。大自然が舞台のドラマですので、派手なサラウンドにはなっていませんが、それでもパシフィック・クレスト・トレイルの大自然を視聴者に印象付ける環境音の広がりは十分にあります。dts Neural:Xモードで試聴すると、時には頭上方向から虫の声が鳴り響いたりしますので、映像との同期はリアルです。没入感という意味では効果があるサラウンドになっています。
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