フィンチ(4K UHD/Apple TV+)/Apple TVで観た映画のレビュー

フィンチ(4K UHD/Apple TV+)

No Image 原題 FINCH
レーベル Apple Original Films
制作年度 2021年
上演時間 115分
監督 ミゲル・サポチニク
出演 トム・ハンクス、ケイレヴ・ランドリー・ジョーンズ、シーマス
画面 2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

2028年、太陽フレアの影響により、地球のオゾン層が破壊され、強烈な紫外線が地上に降り注ぐことになった。そのため、人類の大半は死滅し、生き残った人々も日中の活動は注意深く防護服を着て活動していた。セントルイスのTAEテクノロジーの技術者だったフィンチも生き残りの一人で、自分が作ったデューイというロボットと、愛犬のグッドイヤーと共にセントルイスのスーパー等に潜入し、食料等を調達していた。しかし、度々襲い掛かる砂嵐や紫外線の暴力から逃れるために、フィンチはセントルイスを脱出する決意をする。フィンチは新たにジェフというロボットを製造し、ジェフに人間の代わりをさせようとする。フィンチが向かった先はサンフランシスコだった。唯一希望が持てる土地がサンフランシスコであったことと、フィンチが生まれる前に家を出て帰らなかった父が、フィンチに送った絵葉書の写真がサンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジだったからである。フィンチとジェフ、デューイ、グッドイヤーはサンフランシスコに向けて旅立つが、それには様々な試練が襲ってきた。

レビュー

人気俳優トム・ハンクスが、「グレイハウンド」の次にApple Original Filmで制作したSF映画が、この「フィンチ」です。制作にはスティーヴン・スピルバーグが所有するアンブリン・エンターテインメントが関わり、露骨ではないマイルドなSF映画として仕上がっています。配信オンリー映画ではありますが、Rotten Tomatoesの批評家評価は73%、観客評価は68%と、水準並みの評価を得ています。

物語は2028年という近未来の世界を描いています。その頃の地球は太陽のフレアの影響でオゾン層が破壊され、強烈な紫外線が地上に降り注ぎ、人類の大半が死滅してしまった世界です。TAEテクノロジーの技術者フィンチは、その世界を生き延びており、自分が作ったロボットデューイと、愛犬グッドイヤーと共に、自分が住んでいるセントルイスのスーパーを探索し、食料があればそれを調達してなんとか生き延びている状況にあります。

しかし、セントルイスのスーパー探索も底を尽き始めており、フィンチはセントルイス脱出を決意します。向かう先はサンフランシスコになったのですが、それは北も南も危険であるということ、東が人でいっぱいであるということから、西であるサンフランシスコに決めるわけですが、もう一つ、フィンチが会ったこともない父から送られてきた絵葉書がサンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジだったことも影響しています。ここは失われた親子の愛が描かれていると言えます。

サンフランシスコに向かう気になったフィンチは、人間型ロボットジェフを作り上げ、彼を人間らしくしようとコンピューターを教育していきますが、ある意味でフィンチが父親で、ジェフがその子供であるという位置づけも感じ取れます。父を知らずに育ったフィンチが、父親役になるというのが物語の基本をなしていると思います。ジェフが次第に人間らしくなっていくというところにも、物語の成長性を感じ取ることができます。

物語は一種のロードムービーでもありますが、登場人物がフィンチ、ジェフ、デューイ、グッドイヤーの4人(と言っていいのかわかりませんが)だけなので、他人との交流もなく、絶えず砂嵐の襲撃への恐怖心や、他の生き残っている人の襲撃に怯えるところなど、あまり楽しい旅になっているとは思えません。それでも、サンフランシスコへの夢をかけて、4人は旅を続けていきます。4人しか登場人物として登場しないので、映画の孤独感が滲み溢れているとも言えます。

フィンチは実は病気を患っていて、物語が進むにつれ、それが悪化していきます。それでもジェフに人間らしさを教え、生き残っている人からの襲撃を避け、食糧を調達し、サンフランシスコに辿り着く夢を抱えています。フィンチの病気がフィンチにどう影響するかは、物語のクライマックスに直結する重要な点ではありますが、そのクライマックスとラストシーンは、爽やかなものに仕上がっていると思います。

映像は4K/DOLBY VISIONでの提供になります。映像はおそらくネイティヴ4Kだろうと思います。映像の精彩感は2Kでは味わえない描写の細かさを描写していると思います。HDRの効果も、映像がリアルに描写を描いていて、ハイコントラストや暗闇のシーンの明暗さが効果を発揮していると言えます。ロケーションのうまさもあるのですが、紫外線にやられた地上の荒廃感がよく描写されていると思います。音響はDOLBY ATMOSで収録されており、冒頭の砂嵐のシーンから、音が暴風を包み込むかのようなサラウンドを形成していて、没入感を感じさせます。また、それ以外のグッドイヤーの吠え声の移動感や、ジェフの動作の音の位置感など、かなりリアルにオブジェクトが配置されていると感じます。

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