ノマドランド(4K UHD/Disney+)/Apple TVで観た映画のレビュー

ノマドランド(4K UHD/Disney+)

No Image 原題 NOMADLAND
レーベル SEARCHLIGHT PICTURES
制作年度 2020年
上演時間 107分
監督 クロエ・ジャオ
出演 フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、リンダ・メイ
画面 2.39:1/HDR10
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語
字幕 日本語

あらすじ

 アメリカの石の採掘工場が閉鎖になり、その城下町であったエンパイアという街も消滅、郵便番号すら無くなってしまった。エンパイアで暮らしていたファーンは、一人ヴァンでノマド生活を始めた。当初はAmazonで働いていたファーンだったが、短期契約だったため、職を一時失い、一緒に働いていたリンダと共に、ノマド生活を送る人々のもとにやってくる。そこにはさまざまな人々がさまざまな理由で、ノマド生活を送っていた。ファーンはヴァンによるノマド生活にすぐに馴染み、放浪の旅を続けながら、いろいろなバイトを経て生計を立てていた。ファーンはエンパイアで病気により夫を失っており、ヴァンが夫とのかけがえのない生活の一部だったため、ヴァンが故障した時も新車に変えずに修理にこだわっていた。ヴァンの修理代を稼ぐべく、妹を頼るファーンだったが、また、Amazonのバイトの仕事を得て、生計を立てていく。

レビュー

 2020年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞の三部門を受賞したドラマが、この「ノマドランド」です。ジェシカ・ブルーダーの原作小説「ノマド:漂流する高齢労働者たち」を映画化したものであり、映画には実在のノマドが多数出演しています。製作費が低いため、全世界での興行収入は製作費を大きく上回り、Rotten Tomatoesの批評家評価は93%、観客評価は82%と高い評価を得ています。

 物語は、ノマド、つまり放浪の民の人々の生活を描いたものになっており、その設定を生かすために、主人公の老人であるファーンが、採掘工場の閉鎖による城下町の消滅によって、ノマドになっていく様を描いたものになっています。ファーンがノマドになっていく様をリアルに描くためか、他の映画ではほとんど描かれることのない、ファーンがトイレを済ませるシーンが2箇所もあり、その描写にノマドの生活感を感じさせるものになっています。

 また、ノマドが自由の身であることを象徴するかのように、アメリカ各地でバイトをしながら、ヴァンやキャンピングカーなどで生活を続けていく様を描いており、地面に建てられた家に定住しないことを誇りに思っている感があります。彼らはお互いに助け合いながら、ノマドの生活を営んでおり、それが映画のストーリーから明確に伝わってきます。

 映像的には、広大なアメリカの大地の中に一人佇むファーンや、ヴァンといった構図が多く、ある種独立した人生を送っているノマドを象徴している映像になっています。これらのシーンは、個々人の自立を示す映像として、印象深いものになっています。ファーン自身は夫であるボーをエンパイアで暮らしている時に失っており、それゆえに余計に独立した身であることを象徴しているかと思います。

 また、映像の特徴として、夕暮れや日の出の空を描写するシーンが多く、微妙な明るさの中、ファーンや他のノマドたちがさまざまな理由で苦悩したり、悩んだり、助け合ったり、前向きになったり、といった状態を魅力的な映像の中で描いているところが多いように思います。それもこの映画の特徴であり、ノマドの生活感をリアルに描写するための仕立てであるかと思います。

 映像は4K/HDR10で収録されています。マスターフォーマットは2Kですので、アップスケール4Kになりますが、解像度としての不満はありません。HDR10によるハイ・ダイナミック・レンジは映像的に効果があり、前述の夕暮れや日の出のシーンや、夜のシーン、昼のシーン等で微妙な色彩を余すことなく表現しています。音響はDOLBY DIGITAL 5.1chサラウンドですが、音楽があまり鳴らないため、環境音がサラウンドを盛り上げる仕掛けになっています。人々の歓声や風の音などでサラウンドが効果的に使われ、音に包み込まれる感覚を味わえます。

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