GRAN TORINO
邦題 | グラン・トリノ | |
レーベル | WARNER HOME VIDEO | |
制作年度 | 2008年 | |
上演時間 | 116分 | |
監督 | クリント・イーストウッド | |
出演 | クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー | |
画面 | 2.35:1/アナモルフィック | |
音声 | DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語、フランス語、スペイン語 | |
字幕 | 英語、フランス語、スペイン語 |
あらすじ
妻を亡くしたウォルト・コワルスキーは頑固な老人だった。子供や孫の態度に腹を立て、神父にも冷たい態度を取っていた。そして隣人が次々と家を離れ、アジア系住民が増えていくことにも腹を立てていた。そんなある日、隣に越して来たモン族のタオが、同じモン族の不良グループにそそのかされ、ウォルトが大事にしている1972年製のグラン・トリノを盗もうとしているところを取り押さえたことから、ウォルトとタオ、タオの姉弟であるスーとの交流が始まっていく。最初はモン族の流儀に頑に心を閉ざしていたウォルトだったが、スーとタオの働きにより、心変わりしていく。しかし、モン族の不良は執拗にタオを仲間に率いれようとして、ウォルトがそれに関与したことから、不良グループの嫌がらせがエスカレートしていく。そしてスーが暴行を受けたことを受けて、ウォルトは事態を解決する手段に出ていく。
レビュー
劇場公開時には「クリント・イーストウッド、俳優としての最後の作品」と宣伝された作品がこの「グラン・トリノ」です。実際にはその後も俳優として活躍しているイーストウッドですので、その話題はなかったことにされていますが、名監督であり、そして名優でもあるイーストウッドの集大成といえる様な作品に仕上がっています。
今回イーストウッドが演じるのは頑固な親父であるウォルト・コワルスキーという人物。妻を亡くしたが、その葬儀で自分勝手な行動をとる息子や孫に腹を立てている老人であり、また朝鮮戦争で勲章を受けて、自動車工場で1972年製のグラン・トリノという車を作ったことを誇りにしているキャラクターです。古き良きアメリカを知っているだけに、現在の住環境が白人が消えてアジア系が増えていくことにも腹を立てているという、かなり堅物の人物であります。
その堅物のウォルトが、偶然にも自分が大切にしているグラン・トリノをアジア系移民の中の不良グループにそそのかされ、盗もうとしているタオを知ることにより、タオが不良グループに仲間に引き入れられようとしていることを阻止したことから、モン族であるタオと、ウォルトとの交流が始まっていきます。
タオとウォルトとの交流は、二人の人生のバックグラウンドの違いを少しずつ埋めることであり、異文化を認めるということでもあります。その交流を促すのがタオの姉であるスーだと思います。彼女の社交的な性格は、ウォルトの頑固な性格を少しずつですが溶かしていっていると思います。そして自信のない立場にいたタオも、ウォルトと交流することにより、少しずつ自信という物をつけていくことになります。
ウォルトは、病気を患っており、物語で次第にその症状が悪化していっているのが分かります。それもウォルトのタオやスーに対する感情の変化の一つになっていっていると思います。自身の健康が脅かされている中、実の子供や孫よりも、全く赤の他人であるタオやスーに心を開いていっているのが、物語としての展開の一つだと思います。
物語は後半、モン族の不良グループがタオやスーに対し危害を加えるようになり、それを受けてウォルトがどう行動をとるか、というのが話のポイントだと思います。最初は暴力で彼らを排除しようとしたウォルトでしたが、かえってそれが事態を悪化させることに気づき、非暴力を持って、事態の解決を図ることになります。
ウォルトが大切にしていたグラン・トリノの行方がどうなるかは物語のキーポイントだと思いますが、これは演出的に納得の落ち着き方だと思います。ウォルトが誰を信頼したのか、信頼された者はどう行動をとるのか、それがラストのいい余韻を残していると思います。
映像はモノトーンの感触のする映像になっています。カラーではありますが、銀残しの様な演出を持って、作品の世界観を表していると思います。DVDのためにラストのエンドクレジットはデータ転送量が足りなくて、ブロックノイズが散見されますが、それ以外は比較的良好な映像を映し出しています。音響はDOLBY DIGITAL 5.1chですが、派手な音響効果はなしで、自然なサラウンドをしていると思います。途中銃撃シーン等でサラウンドスピーカーが派手に鳴り響きますが、基本セリフ劇なので、落ち着いたサウンドデザインを作っています。
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