HAPPY TOGETHER(Blu-ray/CRITERION)
邦題 | ブエノスアイレス | |
レーベル | CRITERION COLLECTION | |
制作年度 | 1997年 | |
上演時間 | 96分 | |
監督 | ウォン・カーウァイ | |
出演 | レスリー・チャン、トニー・レオン、チャン・チェン | |
画面 | 1.85:1/SDR(COLOR/BLACK & WHITE) | |
音声 | dts-HD MA 5.1ch 広東語、北京語、スペイン語 | |
字幕 | 英語 |
あらすじ
香港で交際を開始したウィンとファイの二人は、アルゼンチンに二人で旅立った。アルゼンチンで中古車を借りて、イグアスの滝を見に行こうとするのだが、車の故障に続き、イグアスの滝への道がわからず、ウィンは怒ってファイの元を離れていってしまう。ファイはブエノスアイレスのホテルのドアマンになり、香港に帰るための資金を積み立てていた。仕事が板についてきた頃、ウィンが怪我をしてファイの元を訪れる。ウィンは別の男性と関係を持ち、その後のトラブルで怪我をしたようだった。ファイはウィンの面倒を見るのだが、ファイの言動に苛立ちを隠せなかった。ホテルのドアマンの仕事をクビになったファイは、中華料理店の厨房で働くことになり、視力の弱いチャンという男と知り合う。チャンは視力が弱いぶん、耳の反応には強かった。ファイはチャンと親しくなるのだが、ウィンのパスポートを密かに彼の服から抜き取って、返さなかった。そして、香港に帰る前に再度イグアスの滝見学にチャレンジする。本来は二人で訪れる予定だったイグアスの滝で、ファイは二人の関係について考えていた。そして、香港に帰る前に台湾に寄り、チャンの家族が働いている屋台を訪れる。
レビュー
1997年に公開され、当時としてはタブー視されていたゲイのカップルの愛の行方を、香港ではなくアルゼンチンのブエノスアイレスを舞台に描いた意欲作が、この「ブエノスアイレス」です。カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、パルム・ドールではノミネートを果たすという快挙を達成しています。Rotten Tomatoesの批評家評価では81%、観客評価では91%と、高評価を受けています。
これまでも男女の愛情関係について、様々な形で映画化を果たしてきたウォン・カーウァイですが、この「ブエノスアイレス」では、ゲイのカップルという2021年にはようやく世間が認めるべき関係について、20年早く描いているのが特徴です。それも香港を舞台にするのには描ききれなかったのか、アルゼンチンのブエノスアイレスを舞台にするというロードムービー風の展開にして、LGBTを認める演出をしているのが、優れたクリエイターであると認識させるところであります。
映像は、モノクロ映像とカラー映像が混ざり合い、ファイのモノローグがストーリーを語っていますが、アルゼンチンまで来たゲイのカップルが、イグアスの滝を見に行こうとして道に迷い、二人が喧嘩して別れてしまうところから、物語は始まっています。ファイはウィンに去られた後、香港に帰る資金を貯めるために、ホテルのドアマンとしてブエノスアイレスで働くようになります。そして、ファイを置いてどこかにいってしまったウィンは、別の男性と付き合っているのを目撃します。
そのウィンが怪我をしてファイの元を訪れたことから、二人の愛情が再び燃え上がるかに見えましたが、結局二人の関係は改善せず、いがみ合いの関係が続き、ファイがフィンのパスポートを隠してしまうところなども、二人の関係が終わっていくことを象徴していると言えます。主人公二人の関係が燃え上がるどころか、諍いを起こす要因になっているところは、ほろ苦い展開であると言えます。
事件を起こし、ホテルのドアマンをやめたファイは、中華料理屋で働くことになりますが、そこで出会ったチャンという若者と関係を深めていくところは、ファイの心の拠り所が移り変わっていく様子がじっくり描かれていると言えます。チャンは視力が弱く、耳だけが頼りの男ではありますが、チャンと親しくなったファイは、チャンから渡されたテープレコーダーに何か言葉を吹き込もうとして、できなくなります。
ラスト、ファイは再度イグアスの滝見学にチャレンジし、今度はイグアスの滝にたどり着きます。そして、チャンはアルゼンチン最南端の灯台に行き、ファイに渡したテープレコーダーの声を聞こうとします。ファイはウィンを捨てて台湾に渡り、チャンの家族と出逢います。そこで物語は終わり、一つの恋が終わり、別の恋が始まる予感をさせます。
今回試聴した「ブエノスアイレス」は、CRITERION COLLECTIONの「WORLD OF WONG KAR WAI」というBlu-ray BOXセットでリリースされています。4KマスターからBlu-rayの2Kマスターを作っていますので、解像度は十分にあります。物語冒頭からしばらくのシーンと、途中でモノクロ画面でストーリーが進行するので、その映像美はインパクトあると言えます。また、カラーシーンも、ビビッドな色彩をしていると言えます。音響はdts-HD MA 5.1chで収録されていて、ウォン・カーウァイお得意の雨と雷のシーンでサラウンドが活躍します。また、ブエノスアイレスの街の喧騒がよく再現されていると言えます。
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