佐野元春 & The Hobo King Band 佐野元春30周年アニバーサリー・ツアー・ファイナル 「All Flowers In Time」TOKYO 東京国際フォーラム ホールA
2011年6月18日
佐野元春のデビュー30周年アニバーサリーツアー・ファイナル ”All Flowers In Time” TOKYO、このライブの参戦には紆余曲折があった。最初はライブが見れない予定だった。と言うのも会社の事業統合のために長年住み慣れた神奈川を離れ、遠い九州は福岡に転勤することが決まっていたからで、ちょうどライブの開催時期と転勤の日取りが重なっていたからである。それもあって、ライブハウスツアーや、COUNTDOWN JAPAN 1011などに参加するという事で少しでも関東での佐野元春のライブを堪能しようとしていた。
状況が変わったのが2011年の1月。転勤の日取りがはっきりして来て、ライブの日程とずれることが判った。ライブの1週間後に転勤という段取りに変わったのである。そこで思い切って引っ越しの準備等で忙しい最中、ライブを見に行こうとチケットをプレイガイドで予約し入手する事に成功した。但し、ツアー最終日だときついので、12日の方を抑えることにした。転勤がなければ13日にしたいところだったが、止むを得なかった。
しかし、ここでまたトラブルが起こる。そう、3月11日の東北地方太平洋沖地震である。この日は午前中買い物に行って午後は自宅にいたのだが、最初事態が判らずにその被害のすさまじさが判らなかった。翌日ようやく復旧した電気でPCを立ち上げて佐野元春の公式ページを見てみると、地震の影響でライブの開催が困難との検討から、延期が決まってしまった。当時はがっかりしたものだが、その後のニュースを見るにつれ、あきらめと「これはライブが出来なくても仕方ないな」と言う気持ちが湧いてきた。
そうして福岡に転勤になったのだが、チケットはそのまま持って行って、プロモーターの振替公演日程を待っていたところ、4月の半ばに6月18,19日に決定したという連絡が入った。ここで僕は悩んだ。福岡からわざわざ東京まで戻るか否かである。しかし、折角の30周年記念ライブ、どうしても見たいという気持ちが先行していた。そこでインターネットで格安航空券のチケットを探してみると、31000円台で東京まで往復できることが分かった。そこで実家に顔を出したい気持ちもあったので、航空券を押さえ、ライブに参戦することにした。ここで初日の3月12日を押さえていたことも幸いした。これが13日だとすると、6月19日の日曜日に振り替えられてしまうので、月曜にしか福岡に戻れず、会社に行けないという事になってしまう。12日だと、18日への振替公演だから17日の夜、会社帰りに東京に戻り、日曜日の午後福岡に帰るという段取りができる。そうして航空券も押さえ、6月18日を待っていた。
17日は通常通りに会社で勤務をし、少し早めに会社を早退して福岡空港に向かい、一路実家に戻った。で一晩過ごし、18日の午後3時に家を出た。あいにくと梅雨の真っただ中、雨が降っていた。90年代の佐野元春のライブと言うと雨の日が多かった事を思い出す。何か佐野元春と雨は相性がいいらしい。
5時過ぎに会場である東京国際フォーラムに到着すると、すでにファンが入場待ちをしていた。開場が5時と言うことだったが、実際には10分ぐらい遅れたのだろうか。列に並んで少しするとすぐに入場できた。入り口でツアー・ファイナル特典である30周年の歩みを述べた小冊子を貰い、何となくうれしくなる。
入場してすぐにグッズ売り場に行くが既にこちらも行列。並んでいたが、結構ファンの方がいろいろグッズを買うので順番がなかなか来なかった。僕の前の女性などは、2万円ぐらい使っていた模様。煽られたわけでもないが、僕もツアーパンフと「THE SUN」のSELF LINER NOTESのDVDを買っていた。
グッズを買い終わって席に着くと、もう5時半。会場は広く、ファンもぼちぼちと入場してくる。舞台には幕が下りていて、ステージは見えない。これからライブが始まると思うとわくわくしていた。ビデオクルーは入っていないようだった。これは最終日の19日に入るのかなと思いながら、今日のライブを楽しむことにした。
開演時間を5分ほど過ぎた6時5分から開演に先立つ注意事項がアナウンスされる。いよいよ開演だ、と思ったら、なんとフランク永井の「有楽町で逢いましょう」がSEとして流れ、思わず笑ってしまう。確か「星の下 道の上」Tourの時にもこの演出だったなと思い返す。「有楽町で逢いましょう」が終わると、街のノイズが流れて来て、ラジオドラマ風の寸劇が流れた。内容的にはアルバム「SOMEDAY」の歌詞カードに入っていたブルーバードと主人公の話のその後という設定で、30周年という時を感じさせるに十分だった。しかし、ちょっと戸惑いを感じたのも事実である。その寸劇も終わり、1曲洋楽(曲名忘れた、聞いたことあるのだが)を途中まで流して、ようやくライブ本編が始まった。
本編
- CHANGES
- 君をさがしている
- ハッピーマン
- ガラスのジェネレーション
- トゥナイト
- カム・シャイニング
- コンプリケイション・シェイクダウン
- 99ブルース
- 欲望
- ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
- ジュジュ
- 月と専制君主
- レインガール
- SPIDER CODE
- ヤングブラッズ
- 観覧車の夜
- 君を連れてゆく
- ロックンロール・ナイト
- 約束の橋
- ヤングフォーエバー
- ニュー・エイジ
- 新しい航海
- サムデイ
- 悲しきレイディオ
オープニングはしっかりThe Hobo King Bandのテーマ曲となってしまった「CHANGES」。山本拓夫のサックスが印象に残る曲である。曲のラストで佐野元春が登場。会場が湧く。続いて演奏されたのが「君をさがしている」。フォーク・ロック調のアレンジで、最初聞いた時、佐野元春の声がしっかり届くのにびっくりしていた。もう10年近く佐野元春の声が不調だという事でファンの間で心配する向きがあったが、今回のライブではその心配が払しょくされたような感じがしていた。続けて「ハッピーマン」、「ガラスのジェネレーション」と初期の曲が続く。特に「ガラスのジェネレーション」ではオリジナルのアレンジに近い形で演奏され、キーも高いはずなのに佐野元春がちゃんと歌い切っているのにご機嫌な気分になった。
次に演奏されたのは「トゥナイト」。まさかこの曲が聴けるとは思わなかった。記憶に間違いなければ、2002年の「Plug&Play」ツアーでのアレンジバージョンしか僕は聴いたことがない。オリジナルに近い形で演奏されたのは初めてではないだろうか。改めて聴くといい曲だなと思う。MCで「ヴィジターズからの曲を何曲かやります」と言って演奏されたのが「カム・シャイニング」と「コンプリケイション・シェイクダウン」。「カム・シャイニング」はラップ調の曲なので、ちょっと演奏と詩のリーディングに合わない所があったような気もするが、僕のお気に入りの曲なので、ニコニコして聴いていた。「コンプリケイション・シェイクダウン」は、アシッド・ジャズ風で、1992年の「See Far Miles Tour」の時とアレンジが似ていたが、その時よりもスローテンポで演奏されていたように思う。間奏でギター・長田進と、キーボード・Dr.Kyonのソロが入るのでかなり長い演奏になっていた。
続く「99ブルース」も間奏の長い曲で、The Hobo King Bandの力量が見られる曲だったと思う。「99ブルース」終了後、歪んだ音が聞こえ、荘厳なギターの音色の中、たぶんライブの前半のハイライトでもあろうと思われる「欲望」が演奏された。かなり佐野元春も力が入っているようで、エコーを聴かせる中力強く歌っていた。この曲も好きな曲だし、COUNTDOUN JAPAN 1011でも演奏された時は驚いたぐらいなので、今回のライブで演奏された時もじっくり聴き入っていた。
オリジナルに近い「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」を演奏した後、MCで「月と専制君主というアルバムを出しました。今日はその中から何曲か聴いてもらいます」と話し、アルバム「月と専制君主」からの選曲がプレイされた。最初は「ジュジュ」。モータウン風にアレンジされていて、アルバムを聴きこんでいる身には、親しみを感じる曲である。「ジュジュ」が終わるとまたMCで「Cafe Bohemiaのころはロンドンに行っていました」とCafe Bohemiaとナポレオンフィッシュと泳ぐ日の辺りの話をした後、「月と専制君主」と「レインガール」を演奏した。「レインガール」は少しアレンジが変わっていたように思う。この時観客の大半がじっくり聴こうと席に座ったのは印象に残っている。
佐野元春が「今日はゲストを呼んでいる」と言ってまさかのサプライズゲストとして呼ばれたのが今回のプロジェクトでは外れていたギター・佐橋佳幸。その1曲目として演奏されたのが「SPIDER CODE」という曲。当然佐野元春の曲ではない。詳しくは知らないが、佐橋佳幸関連の曲なのだろうと思う。ゲストだから1-2曲で帰ってしまうのかと思った佐橋佳幸は、実はそのままライブの最後までプレイし続ける。
又佐野元春の曲に戻り「ヤングブラッズ」。今回のライブでは「月と専制君主」バージョンでの演奏だった。トランペットの佐々木史郎のアウトロが曲を印象付ける。もともとアウトロの長い曲だったが、今回はそれがご機嫌な演奏に代わっていた。「観覧車の夜」もオリジナルに近い演奏。「THE SUN Tour」の時には佐橋佳幸のギターリフが印象に残る曲だったが、今回はそれはなし。00年代からは唯一の曲であった。
久し振りに演奏されたのが「君を連れてゆく」。じっくりと聴くのに良い曲である。この曲でも座る観客多数。この曲の後は元春クラシックスオンパレード。「ロックンロール・ナイト」でも最初座っている客が多くて、じっくり聴くとやはりいい曲だなと思う。アレンジもオリジナルに近く、アウトロもしっかり演奏されていた。個人的にはあまり好きではない「約束の橋」も今回は素直に聴くことができた。なぜ好きではないかと言うと、テレビのドラマでヒットしてしまい、正当な評価を受けている曲ではないと思うから。ベスト盤に入る時もオリジナル版じゃ無くてテレビドラマ版の再レコーディング版ばかりなのが、気に入らない一つである。
続けてイントロでは何の曲かわからなかったが「ヤングフォーエバー」。まさかこの曲をやるかと思った。「ソウルボーイへの伝言」でもアコースティックバージョンで演奏されていて珍しいと思ったものだが、今回の選曲も意外な気がしていた。アルバム「THE BARN」の中ではちょっと浮いている感じのする曲だが(本当は前作「Fruits」辺りに入るとぴったりしそう)、ライブ映えする曲だなと思っていた。「ニューエイジ」が演奏されると、「ああもうラストかな」と思いながら聞き入っていたが、まだ終わりじゃなかった。何とこれまた久し振りの「新しい航海」が演奏されたのである。それもTHE HEARTLANDバージョン。この曲を聴いて、特にMC等では触れていなかったが、震災後の佐野元春の見解みたいなものが現れているのではと思った。セットリスト自体は、たぶん他の大都市ライブとそう違いは無いと思うのだが、それでも震災とは関係ない曲たちが、震災後何らかの影響を受けてメッセージを発しているような気がしていた。
名曲「サムデイ」の前のMCでは、「サムデイ」の成立経緯がしゃべられていた。最初はアルバム「ハートビート」に入れる予定だったが、どうしても決めの一部が出てこない、半年寝かしてようやく決めが決まったので、アルバムに入れられずにシングルとしてだした、それから何回も何回も歌っている、時に飽きた時もあったけれど、今もまた歌うようにしている。そんな内容のMCだったと思う。僕も聞き飽きたところはあるが、いい曲だという認識には間違いない。
本編ラスト前にMCで「東北のファンからメールをもらった。もっと踊りたい」といったような(内容うろ覚え)事を言った後、「悲しきレイディオ」を演奏した。途中のコール&レスポンスで「ムード盛り上がれば」の部分は1回目失敗。佐野元春が拗ねてステージを降りてしまうという演出もなされ、会場が盛り上がったのは言うまでもない。その分2回目は大歓声。成功した。「悲しきレイディオ」は、曲が終わった後そのまま続けてメドレーに入った。感じとしては「THE GOLDEN RING」に収録されているバージョンに近いかもしれない。こちらもコール&レスポンス。「I Love You,You Love Me」と場内が一つになる。これで本編は終了。バンドメンバーの紹介に入る。ドラム・古田たかし、ベース・井上富雄、キーボード・Dr.Kyon、ギター・長田進、ギター・佐橋佳幸、サキソフォン・山本拓夫、トランペット・佐々木史郎、パーカッション・大井’スパム’洋輔。このメンバー紹介で「スパムは25kgも痩せたんだ」と佐野元春が言い、笑いを取る。その後メンバーはステージを降り、アンコールを待った。
アンコール
- アンジェリーナ
再び登場したメンバーが演奏したのはデビュー曲「アンジェリーナ」。まさにこの曲しかないというアンコール曲である。アンコールは珍しくこの曲だけ。歌い終わった後、佐野元春が手紙を読んだ。なぜ手紙かと言うと、ステージ上でしゃべるとわけわからない事を言ってしまうからだそうで、ファンは納得。手紙の内容は「音楽なんかなくても生きていけるけれど、音楽がある事で違う視点を持つことができた。これからもずっと続けて行きたい」といった内容だったと思う。まさに30周年記念のファイナルにふさわしいライブだったと思う。そして、普段最終公演でしか行わないスタッフ紹介も行った。これは珍しいなと思った。震災影響を受けて、もともと佐野元春の誕生日とその前日というセレブレーション的な予定だったはずのライブが震災後の一変してしまった生活の中でのライブとなったが、こういう時だからこそ、ロックンロールの普遍性みたいなものを感じ取ったライブだったと思う。演奏時間3時間。終了したのは9時10分。大枚はたいて東京まで戻って来てまで見に行った甲斐のあったライブだと思う。
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